2022年2月 「晴海客船ターミナル」

開港50周年を記念して開業した、東京港のシンボル

東京の海の玄関口「晴海客船ターミナル」が、2月20日をもって閉館した。解体後は再び客船受け入れ施設になるという。

東京港開港50周年を記念し、1991年開業。ウォーターフロント開発の目玉として誕生した。晴海ふ頭の突端にあり、三角屋根のターミナルは東京港のシンボルとしてひときわ目をひき、多い時には国内外の客船が年間100隻以上寄港した。

撮影やPVにも多く使用され、かつてはレストラン「ラ・メール」もカップルたちに人気のスポットだった。しかし1993年レインボーブリッジ完成後は、その内側にあるため大型船の発着が難しくなり、またアクセスの不便さ、老朽化もあいまって、ゆりかもめでアクセスできる「東京国際クルーズターミナル」にその機能を移すことになった。

ターミナル内で、施設の歴史をふりかえる展示も予定されていたが、コロナの影響で1月から閉鎖状態のまま、ひっそりとその歴史を終えることになってしまったのはさみしい限りである。

2022年3月 お台場「ヴィーナスフォート」

お台場の人気スポットは、異国に迷い込んだような空間だった

お台場パレットタウン再開発に伴い、2021年暮れの「メガウェブ」、2022年初めの「Zepp Tokyo」に続いて、ショッピングモール「ヴィーナスフォート」が、3月27日に完全閉館した。

1999年、「女性のための美のテーマパーク」として、パレットタウン内にオープンした劇場型ショッピングモール。当初は10年間の期間限定の予定だったが、23年間お台場の名所として、延べ2億人の人を集めた人気のスポットだった。

噴水広場。
噴水広場。

5つの広場を中心に全長400メートルのプロムナードに、アパレル、コスメ、雑貨、飲食店が百数十軒。迷路のような作りで、他に例を見ないショッピングモールとして注目を浴びた。内装は、ラスベガスの「フォーラムショップス」にそっくりで、ローマの古い町並みや、天空の色が変わる演出(青空、夕焼け、夜景など)で、異国に迷い込んだような空間だった。噴水広場はトレビの泉をモチーフに、待ち合わせ場所としても利用された。雪が舞い落ちる「SNOW WISH」も目玉の一つだった。

教会広場では、実際の結婚式も行なわれた。新たなショッピングセンターがどこも同じような作りの中、ユニークなコンセプトモールが無くなってしまうのは大変残念だ。パレットタウン跡地には多目的アリーナが建設される予定である。

2022年5月 「三省堂書店神保町本店」

「いったん、しおりを挟みます」

神保町の「三省堂書店本店」が、ビルの建て替えのため、5月8日で一時閉店となった。1881年に神保町で創業した三省堂書店、現在の本社ビルは、創業100周年で、1981年に建てられ、神保町のランドマークとなった。

一時閉店を前に、本にはさむ「しおり」の形をした懸垂幕が壁面に設置され、「いったん、しおりを挟みます」というコピーが話題を呼んだ。しばらくは近くで仮店舗で営業し、2025年に建て替え後の営業再開を計画しているという。昔のままの建物が多い神保町だが、少しずつ変わりつつあるようだ。

2022年7月 神保町「岩波ホール」

ミニシアターの草分け

ミニシアターの草分けとして、半世紀以上、内外の名作映画を紹介し、日本の映画文化を支えてきた神保町の「岩波ホール」が7月29日に閉館し、54年の歴史を閉じた。新型コロナの影響による経営環境の変化を受け、これ以上の運営の継続は困難である、というのが閉館の理由である。1月の閉館発表以来、往年のファンも大勢訪れていた。

1968年開館、1974年には世界の埋もれた名作を上映する「エキプ・ド・シネマ」を始め、1980年代にはミニシアターブームの牽引となった。大手が配給しないアジア、アフリカ、中南米などの作品も多く上映し、その数は270作品(65の国と地域)を超えている。

私も、20代の頃の『ルードウィヒ』、『家族の肖像』・『惑星ソラリス』から『八月の鯨』・『山の郵便配達』・『ブータン山の教室』など幾度となく足を運んだ。50年も通ったホールだが、映画を観た記憶より、寝ていた記憶の方が多い。最後の作品は『歩いて見た世界、ブルース・チャトウィンの足跡』、芸術性の高い作品だが、半分熟睡してしまった。7月13日から18日はヘルツォーク監督の特集上映も行なわれた。いずれにしてもよく通った劇場が無くなってしまうのはやはり寂しいし、日本の映画界にとっては大きな損失である。

2022年8月 「渋谷マルイ」

また一つ、昭和の渋谷の面影が無くなってゆく

「渋谷マルイ」が、ビルの老朽化により、8月28日で営業を終了し、建物を解体した上で、新たな商業施設に生まれ変わる。

1958年「丸井渋谷店」がオープン、1971年に現在の「渋谷マルイ」のビルになった。以来50年にわたり、公園通りの入り口の「顔」として親しまれ、マルイのフラッグシップ的存在として営業を続けてきた。

かつては、ファッションのイメージのマルイだが、近年はアニメイベントなどのコンテンツや、ソフマップのゲームゾーンなどを展開し、時代に合わせたニーズに対応してサブカルチャーの発信基地としても認知されていた。

新たな商業施設は、日本初の本格木造の商業施設となり、渋谷の景色が大きく変わりそうだ。渋谷駅近辺の大型施設は、これでほとんど変わってしまい、昭和の渋谷の面影はどんどん無くなってゆく。

2022年8月 品川「アンナミラーズ高輪店」

その灯を守ってきた「最後の一店」

1970年代から多くの人に愛されてきた、アメリカンファミレスというべき「アンナミラーズ」の国内最後の一店、品川駅前の高輪店が8月31日に閉店した。1973年6月、南青山で1号店がオープン、以来ホームメイドパイとミニスカートの店員さんで人気を博し、一時は国内25店舗を数えたが、この高輪店が「最後の一店」としてその灯を守ってきた。

かつては「ストロベリーファーム」や「イタリアントマト」と共にアメリカンな空気を感じさせるお店として親しまれ、「バナナチョコレートパイ」をはじめとしたホームメイドパイやパンケーキは絶品だった。白いブラウスに、オレンジやピンクのミニスカートの店員さんは、アメリカのダイナーを思わせ、男性客にも人気だった。

コーヒーのおかわりサービスも「アンミラ」が最初に始めたサービスだった。

閉店が決まってからは別れを惜しむ客でいっぱい。あまりの人気に順番待ちシステムを導入し、私も行ってみたが、整理券を見ると60人以上待ち、入れるまで3時間以上かかると言われた。最終日は未明から列ができ、午前9時の開店前に整理券の配布が終了したらしい。品川駅周辺の再開発のための閉店ということなので、ぜひ再出店に期待したい。

2022年8月 お台場「パレットタウン大観覧車」

最後の瞬間、多くのお客さんから拍手が起こった

お台場を代表する観光地「パレットタウン大観覧車」が8月31日に営業を終了した。1999年3月にオープン、葛西臨海公園の「ダイヤと花の観覧車」、よこはまコスモワールドの「コスモクロック21」と共に、新名所として家族連れやカップルの人気を集めた。

23年間で利用客の数は100万人を超え、お台場のデートコースとして、カップルには夕暮れ時や夜景が特に人気だった。高さ115メートル、開業当時はギネスにも認定された。16分間の空中散歩は周りに高い建物が無いので、東京都心から東京港まで見通すことができ、シースルーゴンドラも人気だった。

31日までは、FINALとして特別イルミネーションを実施。最終日は2時間待ちとなり、午後9時に営業が終了した。ライトアップが消えた瞬間、多くのお客さんから拍手が起こった。

2021年末から、「メガウェブ」、「Zepp Tokyo」、「ヴィーナスフォート」が閉館し、いよいよパレットタウン再開発の最後の仕上げである。隣接するデジタルアートミュージアム「チームラボボーダレス」も同日閉館した。

いずれ多目的アリーナが建設されるが、しばらくの間、家族連れやカップルにはさみしい場所になってしまいそうだ。