ランチや小腹が空いたときにぴったりの自家製キッシュが人気
小さな階段を上がって扉を開けると、店内は思ったよりも広く、大きな窓から入る陽射しが明るい。ドリンクやスイーツだけでなく、カレーやハンバーグ、ナポリタンなどランチのメニューも豊富なことにも驚いた。その中でも人気なのが月替りの2種のキッシュとサラダ、ソーセージが一皿に盛られたキッシュプレートだ。毎朝店内で焼き上げるという。この日のキッシュはエビバジルとラタトゥイユ。彩りも美しく食欲をそそる。
ドレッシングやソースなども自家製だ。できる限り手作りのものを、そして食材もできるだけ地元である高円寺で購入すると店主の松永さんは話す。キッシュの種類は松永さんと長く勤める2人のスタッフで相談して決めているとのこと。
マッシュポテトの上に炒めたエビとタマネギ、そしてジェノベーゼソースをかけて焼くエビバジルのキッシュ。キッシュの生地に包まれてしっとりとしたマッシュポテトと、プリプリしたエビの食感との違いが楽しい。タマネギの甘さやジェノベーゼソースのバジルの香りがいいアクセントになっている。もう一つのラタトゥユのキッシュはトマト味。大きめに切ったズッキーニやナス、プチトマトがごろりとしていて上にかかったチーズとの相性抜群だ。全体的に野菜の分量が多く、食べごたえがあるのもうれしい。
コーヒー好きの店主が淹れるこだわりのコーヒー
6年ほどカフェでホールを担当した後、2012年にこの店をオープンした。濃いめのコーヒーが好きな松永さんが、エスプレッソに選んだのは京都の老舗である小川珈琲の豆だ。
今回いただいたアメリカーノはダブルショットのエスプレッソをお湯で割ったもの。香ばしく甘い香りがあり、ほのかな酸味で苦みが強いが後味がすっきりとして飲みやすい。初めて訪れるならカフェラテやカプチーノなどエスプレッソベースのものがおすすめだが、ビターとマイルドがセレクトできるオリジナルブレンドや、その時々に松永さんが探してくるスペシャリティコーヒーも見逃せない。抽出方法もハンドドリップかエアロプレスの2種類から選べるので、スタッフに好みを伝えてセレクトしてもらうのもいい。
素焼きの陶器に絵付けをしながらお茶できる「ポタリーカフェ」
カフェで絵付けとはなんとも不思議な取り合わせに思えるが、「アメリカにはポタリーバーというのがあって、お酒を飲みながら絵付けを楽しむ場所なんです。それならカフェでもいいかなって」と松永さん。
水性の絵の具で絵を描き、釉薬をかけて焼き付ける。出来上がりは3週間後だ。絵の具の発色が思ったよりも鮮やかでとてもきれい。何時間もかけて(何日もかける人もいるとか!)没頭する人もいれば、ささっと描いて終わらせる人もいる。「絵心や上手い下手は関係なく、好きなように楽しんでほしい」と松永さんは話す。
ギャラリーとポタリー。作家との付き合いが広がっていく
この店の前身は、かつて荻窪にあった「陶絵王国」という陶器に絵付けができるスペースだ。貿易関係という仕事柄、陶器の入手が容易だった松永さんの夫が営んでいた。そこにカフェをやりたいという松永さんの希望がプラスして、この地にポタリーカフェをオープンさせた。陶絵王国時代から作家との付き合いも多く、店内の壁はさまざまな作品で埋まる。
作品展示が2週間以上になると、店とのコラボメニューが提供される。これも作家へのあたたかな後押しだ。その時々で出会える作品や、作品に囲まれた空間も楽しみたいカフェだ。
取材・⽂=ミヤウチマサコ 撮影=ミヤウチマサコ、ぽたかふぇ。