偶然見かけたTwitterがきっかけで美術館のカフェを手がけることに
恵比寿ガーデンプレイスの中でも、かなり静かな通りに面していて、天井の高さも気持ちよく広々としている。店内に入る光が時間とともに変わっていくのを感じられる場所だ。
「自分たちではこんな広いお店を準備しようと思ったら大変ですよね」と『フロムトップ』を運営する吉田恭子さんは話す。『フロムトップ』は吉祥寺の人気店『コマグラカフェ』の系列店で、吉田さんは2つの店を行ったり来たりしているのだそう。
「『東京都写真美術館』 のカフェの出店者が募集されていると知ったのはTwitterです。それを見て店のオーナーが応募しようと」
Twitterで公募の情報が発信されたのは2021年5月のこと。偶然見つけたツイートがきっかけとなって2021年8月にオープンした。
店内はもともと美術館が所有している什器類に、吉田さんが好きな“ごちゃ混ぜ”感が出るように椅子やテーブルなどを追加。あまり手を加えず、余白を残すことを心がけたという。
自分でも美術館に行くのも好きだという吉田さんは「展覧会や映画を見た後でいらっしゃる方が多いので、あれこれ考えたりするのに邪魔にならないようにと考えました」と話す。
『フロムトップ』では、展覧会を見たあとでやってきた年配の男性の2人連れが熱心に話し込んでいたり、本格的なカメラを持った人が自然光を利用して店内で手元の撮影をしたりと、吉祥寺の『コマグラカフェ』とは異なる『東京都写真美術館』のカフェらしい光景が見られることもある。美術館で展覧会や映画を鑑賞したあとは、必ずカフェで一休みすることにしている人もいるようだ。
写真を撮らずにはいられない!鮮やかな食べられる被写体
デザートで人気があるのはむっちりとした食感のプリン いちごのせだ。脚がついた銀色のカップに盛り付けられていて、カラメルソースもたーっぷりという特別感。小粒のいちごをぐるりとのせ、中央のクリームにはエディブルフラワー、そして洗双糖というキラキラした砂糖粒でデコレーション。まばゆいほどのキュートさに写真を撮る人が続出。カップに隠れている部分は、実は食べ応えもしっかりある。
プリンは『コマグラカフェ』にはないメニューだ。ボリュームがあるパフェよりも、展覧会後の休憩にちょうどいい大きさなのかもしれないと吉田さんは考えてメニューに入れた。
食事は2種類のカレーのほか、ルーロー飯などが用意されている。ビーツの豆乳ポタージュとサラダのセットはもちきび入りビスケット付きで1600円。シックな花を思わせる器に入ったスープは、ビーツ独特の鮮やかな色合いで、そのコントラストにも惹きつけられる。野菜の種類が豊富なサラダには茹でたハトムギ入り。味はもちろん、食感もリズムがあって楽しい。
もちきび入りビスケットも表面がサクッとしていて、ザクザク感も感じる舌触り。ほんのりした甘さも好感度が高い。飽きないようにいろんな食感や味を楽しんでほしいと配慮されていて、量も味も、もちろん写真におさめても満足感がある。
企画展やイベントとのコラボメニューを考案することもある。2022年2月に開催された「恵比寿映像祭」ではカラフルで水面が揺れているようなポスターのデザインとイベント名にちなんだYEBIZOカレーを提供。カレー1種類とポタージュスープ2種類をマーブル模様にできるなど楽しい工夫を施したところ、大好評だった。
2022年、恵比寿ガーデンプレイスは大きな変化を迎えている真っ只中。『フロムトップ』もガーデンプレイスを訪れる方の憩いの場として、一緒に盛り上げていきたいという。美術館帰りに限らず、立ち寄りたい場所になっていきそうだ。
取材・撮影・文=野崎さおり