誰もがふらっと訪れる、日常に寄り添うコーヒースタンド
三鷹駅北口から徒歩10分ほどの位置に、西久保地区最大の商店街、三谷通り商店街が見える。昔ながらの風情を残しつつ、約80店舗の店が連なるこの通りは、最近新しい店が増えて活気づいているという。そんななか、『Rowans coffee』が2021年4月にオープンした。
時には一人客、時には犬を連れた客の姿も。軒先では自転車でふらっと訪れたおじいちゃんが店主と朝の挨拶を交わして去っていく。この地で店を構えて1年ほどだというのに、すでに人々の憩いの場として愛されている様子がうかがえる。
「いつかは自分でお店を開きたいと思っていました。そのためにいろんな飲食店で仕事をして来ました」そう話すのは店主のYukoさん。若くして一人で店を切り盛りする、明るく爽やかな女性。様々な飲食店経験の中でもカフェでの経験が印象的で、徐々にその心は「カフェで開業しよう」と決まっていったそうだ。
共に切磋琢磨する友人と、2人で店を開くつもりだったものの、それぞれのイメージする世界観が真逆になっていったこともあり、互いに一人で店を開いた。
Yukoさんがイメージするのは「明るく太陽がさんさんと照らしている、お昼のカフェ」。誰もが気軽にふらっと立ち寄れ、片手にコーヒーを持ちながら寛いだり、さっと持ち帰ったりとできるオープンなコーヒースタンド仕様になっている。
入れ替わり立ち替わり、様々な客が顔を出していく様子からも、すっかりそのイメージは定着していると感じさせられる。
定番のドリップやエスプレッソ系ラテ、シーズナルメニューも
店で提供するのは、尾山台の『AO COFFEE ROASTER』と共同開発したコーヒーだ。
1杯1杯丁寧にハンドドリップで淹れる「ロワンズブレンド」のほか、コーヒースタンドらしいエスプレッソメニューが注目だ。
しっかりと抽出したエスプレッソに、たっぷりのフォームミルクを乗せた「ロワンズラテ」は、エスプレッソの味わいを感じつつも、
変化球を求める大人のあなたには、アルコール入りコーヒーもお勧めしたい。この日季節の商品として並んでいた、春のシーズナルナルラテである「ダークリェリーラムラテ」。
オーガニックなチェリーシロップに、ほんのり感じるダークラムの味わいが、ラテを大人な味わいに変化させている。トップを飾るピンクのラズベリーパウダーが春らしさを誘う1杯で、心を緩める時に味わいたい。
柔らかな味わいのドリンクに華を添えるのは、自家製の焼菓子たち。マフィンやグラノーラバーなど、全てYukoさんが作る。「なるべく自然な味わいを」とグルテンフリーやオーガニック素材を意識して取り入れる菓子たちは、余計な添加物の味わいのない自然な食感だ。
開かれたカフェでありたいから、おおらかなルールで営む
『Rowans coffee』は、“地域の人にとって開かれたカフェでありたい”と、商店街の個人店で購入した商品も店内での飲食可能としている。また、うれしいのは犬連れも可能とのことで、お散歩途中の人も多く顔を出す。ずいぶんおおらかなルールだとも思うが、それはYukoさん自身が「近所でちょっとくつろげるカフェが欲しかったから」だという。
こうしたあたたかでフレンドリーな人柄と心意気があるからこそ、地域で愛されているのだろう。すでに三鷹の人にとってなくてはならない場所になっているようだ。
取材・文・撮影=永見薫