UAMOUとおばけのBooがいっぱいの夢空間カフェ
ここ最近、なんだか心お疲れ気味、ドキドキワクワクしていない……。そう感じたら、「2k540 AKI-OKA ARTISAN」に行ってみよう。
御徒町駅から歩くと5分ぐらい。御徒町駅と秋葉原駅との間の高架下は、クリエイターたちが個性豊かなアトリエや工房を構える不思議な空間になっている。
作り手の想いを直接聞き、心惹かれるものづくりワークショップに参加していると、あっという間に時間が流れる。ちょっと小腹がすいたなぁと思っていたら、この辺りの主? と思わせる不思議なキャラクターと遭遇した。
謎のキャラクターに導かれた先は『遊食家Boo』。入り口を入ってすぐの席には、白いのもいる! つぶらな瞳、大きくてモフモフのボディ、頭の上についているのは角、それとも耳? 未知の生命体との交信用だったりして、なんて考えながら見つめていると、ふいに誰かに声をかけられた。
「こんにちは。この子はUAMOU(ウアモウ)。僕の妹が生み出したキャラクターです。この店をオープンするきっかけも妹なんですよ」と、にこやかに話かけてくれたのは『遊食家Boo』オーナーの高木さんだ。
そういわれて店内を見ると、あっちにもこっちにもUAMOUがいる。なんだか不思議の国にまぎれ込んだみたいな気分になってきた。
美味なるローストビーフの原点は『東京會舘』
おばけのBooがハンバーグとローストビーフをおすすめしている黒板を見つけて、急に空腹感が戻ってきた。UAMOUのテーブルが運よく空いていたので、相席させてもらおう。
ランチメニューは、週替わりのパスタランチとハンバーグランチ、ハヤシライス、数量限定ローストビーフ丼、今月のどんぶりランチの5種。黒毛和牛の自家製ハンバーグにも魅了されたけれど、ここしばらく食べていないローストビーフ丼をチョイス。
待っている間に、デザートメニューを眺める。UAMOUとBooのパンケーキがとてもキュート。別腹ってことで追加する? でも、UAMOUの目の前でかぶりつくのも、と心が揺れる。
それにしても、どんなローストビーフ丼だろうと、想像がふくらむ。キャラクターを取り入れたかわいいビジュアルに仕上がっているのかな、と待っていたら、まるで高級レストランのような凛とした佇まいにびっくり。
引き込まれるような深いピンクのローストビーフの上に、青じそとミョウガ、カイワレなど5種類の薬味をトッピング、自家製のポン酢だれで仕上げられている。これほど本格的なローストビーフだったとは! 見とれてしまうほどの美しさだった。
心を静めて、まずはひと口。しっとりしていて柔らかい。ローストビーフと香り高い和の薬味、自家製ポン酢だれは、じっくりと引き出された豊潤な味となんてよく合うんだろう。
「うちのローストビーフの原点は、『東京會舘』のクッキングスクール。そこでは、會舘の料理長に直接習ったり質問したりできたのです。そのときの貴重な体験と感動、教わった技術や味からスタートしています」と高木さん。
『東京會舘』のローストビーフは、オーブンで中心温度を最適に保ちながら香ばしく焼き上げる昔ながらの王道レシピ。一方、『遊食家Boo』は、年末年始以外は基本無休。なので、高木さん以外のスタッフでも再現できるレシピが必要だった。そして、試行錯誤の末に低温調理へとたどり着く。
「もちろん、『東京會舘』とは使っている肉も違います。この店をオープンしたときに、お世話になった先生方も見に来てくださいました。そのとき、おいしいといっていただけた味を大切にしながら、これからも工夫し続けます」と楽しそうに話す高木さん。
コラボを楽しみながら店の魅力的をアップ
ところで、この店をオープンするきっかけになった妹の綾子さんは、英国留学中からヨーロッパを中心に、キャラクターUAMOUの製作販売を手掛けていた。
アートとデザインを軸にキャラクターの可能性を追求している綾子さんが「2k540 AKI-OKA ARTISAN」への出店に向けて準備をしていたとき、施設を運営するJRの担当者が高木さんの働いていた居酒屋を訪れた。「お兄ちゃんも一緒にやらない?」のひとことから、綾子さんの店『STUDIO UAMOU』とコラボでの出店が決まる。
綾子さんは「コラボするなら、パスタやグラタン、ローストビーフを出すお店がいい」とリクエスト。そのための料理を学んだのが、『東京會舘』のスクールだった。
高木さんは、人と会って話して飲んで、一緒に何かをするのが大好きだ。「いろいろな店舗さんとコラボしたくて、自家製ポン酢は『日本百貨店』さんのYuzuscoというポン酢をベースにしているし、木工の『nocra』さんにはうちのキャラクターのコースターやパーティションを作ってもらっています」。
帰り際、「2k540 AKI-OKA ARTISAN」の10周年イベントで実行委員長も務める高木さんから、「ものづくりの楽しさをたっぷりと味わえるスペシャルイベントを企画しているので、ぜひ体験しに来てください」と、お誘いいただいた。
おいしいランチでお腹を満たし、ドキドキワクワクするお誘いのおみやげもいただいて、大満足なランチタイムだった。たびたびこの街に足を運ぶことになりそうだ。
構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=松本美和