築90年以上のレトロなビルの中に広がる異国情緒漂う空間
浅草橋駅と馬喰町駅の中間地点に位置する『Bridge COFFEE & ICECREAM』。江戸通りと靖国通りが交差する場所に面したビルの1階で営業を行う。この店が入るビルもまたレトロモダンな雰囲気を醸し出していて、カッコ良いのだ。1階部分はネイビーブルーのタイル、それより上はコンクリート打ち放しの外壁という、周辺のビル群と比べてもどこか歴史を感じさせる佇まい。
イーグルビルという名のこのビルには、店の出入り口付近にもワシの頭を模したエンブレムが掲げられている。実は、このビルは90年以上も前に建てられた歴史ある建物で、東京大空襲の被災も免れた堅牢なビルとして大切にされてきたようだ。地下にも広い空間を備えており、空襲を逃れてやって来た多くの人々の命を救ったという逸話も残っている。
そんな味のあるビルに見惚れながら店内に足を踏み入れると、ビルの外観から感じられたイメージとはまた違う雰囲気の空間が広がる。歩道に面した大きな窓から光が射し込み、明るく開放的な店内は、まるで異国のカフェのようだ。出入り口と向かい合うかたちで配置されているカウンター越しから、店員さんがにこやかに迎えてくれる。
2017年12月に合羽橋から移転してきた同店。調理道具の問屋街から服飾雑貨を主に扱う問屋街へと場所を移したわけだが、出店先に問屋街が続いたのはたまたまだったという。けれども、そのおかげで幅広い年齢層のお客さんが店を訪れてくれると、スタッフの志村拓未さんは話す。「年配の卸売業者の方からSNSを見て足を運んで来てくださるような若い方、アイスクリームを目当てに来てくださるお子さん連れの方まで、幅広い層のお客さんに利用していただいています」。
店内は、公園をイメージしてつくられた。大きな窓に沿うかたちで配されたベンチに、現在はヨーロッパテイストのアンティークテーブルが置かれているあたりには移転当初、広場を設けていたのだとか。そんな誰もが気軽に立ち寄れる雰囲気に魅せられて、様々な人が自然とこの店に集まるのかもしれない。
名物はコーヒーとアイスクリーム
この店の名物は、店名のとおりコーヒーとアイスクリーム。アイスクリームを加えたのは、コーヒー好きだけにかかわらず、そうでない人や子どもにも気軽に利用してもらえるようにとの想いから。
コーヒーは、富ヶ谷にある『Little Nap COFFEE ROASTERS』の豆を使用する。ドリップコーヒーにはグアテマラ、コロンビア、ブラジル、エチオピアの4種類のシングルオリジンから1種類を日替わりで提供し、エスプレッソやカフェラテにはその4種の豆のブレンドを使う。オーダーごとに1杯ずつ豆を挽き、丁寧に淹れられるコーヒーは、香りや味が格別だ。
アイスクリームは、常時6種類を用意する。定番のバニラやチョコレート、ストロベリーなどのほか、期間限定のフレーバーも。中でも、焦がしバター塩キャラメルナッツとピスタチオナッツは、コーヒーとの相性が抜群だという。
さらに、このアイスクリームとコーヒーを一緒に楽しめるメニューもある。アイスクリームの上から熱いエスプレッソコーヒーをかけた「カフェコンジェラート」と、アイスカフェラテにアイスクリームをのせた「ラテコンジェラート」だ。中深煎りのコク深いコーヒーとアイスクリームの相性は、もはや言わずもがな。
そのほかにも、クッキーやケーキなどの焼菓子や、近所にあるベーカリー『BEAVER BREAD』のパンを使ったサンドイッチも用意し、利用客の様々なニーズに応える。
取材終了後、常連と思しき親子が店を訪れると、スタッフ全員が親し気に声を掛けていく姿が印象的だった。誰もが気軽に立ち寄れる街のコーヒー屋さんとしてあり続けたいという想いを、お店全体でお客さんと関わり合っていくことで体現しているかのように感じた。
『Bridge COFFEE & ICECREAM』店舗詳細
取材・文・撮影=柿崎真英