おとぎ話の中にトリップしたような気分になる⁉
扉の内側にあったのは、漆喰の壁に使い込まれた木のカウンターとテーブル、ところどころ色褪せた板張りの床、アンティークっぽいインテリア、明るさを落とした暖かい照明など、メルヘンな気分にさせるのに充分な空間。お店の中に足を踏み入れた途端、今度は本当におとぎ話の中に迷い込んでしまった気分になった。
そんな店内で真っ先に目に入ったのは、そこだけひときわ明るく照らされているカウンター奥の棚に並ぶ美しいカップとソーサーだ。20年前に店主のご両親がこのカフェをオープンする前は、50年続いた陶器店だった。その名残の、こだわりのコレクション。
このディスプレイも、おとぎの国のお店屋さんみたいでかわいい。素敵なカップたちは飾りではなく、実際にお店で使われているものだ。
濃厚なロイヤルミルクティーと手作りスコーンでご褒美時間
いつもならどちらかといえばコーヒーをチョイスしてしまうところだが、カウンターに置かれたケースにおいしそうなスコーンがあるのを発見! ならば紅茶でアフタヌーンティーとしよう。
『CAFÉ Kova Garden』では、炭火焙煎コーヒーもいただけるが、実は店主の小林千恵さん、日本紅茶協会認定のティーインストラクターの資格保持者。ここでは小林さんが厳選した茶葉を小林さん自身に淹れていただけるのだ。
小林さん曰く、ロイヤルミルクティーはイギリスには存在せず、日本流の飲み方なのだそうだ。初めて聞く紅茶トリビア!
スコーンはその日にあるスコーンから2個選べ、温めて提供してくれる。トッピングは、生クリーム+イチゴジャムorオレンジマーマレードorハチミツの3種から1つ選べる。
今日のスコーンはプレーンと紅茶だったのでそれを1ずつと、トッピングにはオレンジマーマレードをチョイス。
濃くまろやかなロイヤルミルクティーと生クリーム+オレンジマーマレードをつけたスコーンが美味しくて、最高のご褒美となった。
北千住に代々住む一家が営む地元の愛されカフェ
店主の小林さんはもともと、看護師さんとしてお仕事をされていた。それが、お父様が50年続いた陶器店を閉じ、カフェをオープンするにあたり、小林さんも看護師の仕事を辞めて手伝うことに。
紅茶が好きで、それまで趣味で紅茶やスコーン作りの勉強をしていたことが役立った。小林さんは代々北千住に住む一家に生まれた生粋の下町っ子で、商家で育ったためか、お客さんにも気さくに声をかける。
千住の街を歩けば声がかからないことがないのは昔も今も変わらない。「千住の人はおしゃべり好きなんです」と、屈託なく笑う。
カウンターに座る年配の常連さんたちに交じって、初めて来た若いお客さんも和気あいあいとおしゃべりする下町らしいカフェが楽しいと語ってくれた小林さん。街に大学のキャンパスが増えたことで、若いお客さんも多くなったという。
ここしばらくはまだまだ下町らしくにぎやかに、とはいかないのは残念だが、美味しいコーヒーと紅茶やケーキを味わい、可愛くてちょっと不思議な雰囲気のこのカフェで、静かに過ごすのも悪くない。
取材・文・撮影=京澤洋子(アート・サプライ)