まもなくに迫った春を待ち切れなくて
「浅草にはありますけど、ウチの場合は雷門や浅草寺からも離れているので……知る人ぞ知る感じは確かにあるかもしれないですね」
と、お店ついて伺うと店長のアキさんはこう答えてくれた。和テイストの観光地である浅草にあり、ひときわ際立つスタイリッシュな佇まい……それがこの『FEBRUARY CAFE』である。
白を基調とした外観に比べ、中はどこかほんのり暖かい空気が流れているようにも見える。アキさんに話を伺うと、「まさに2月の空気をお店のコンセプトに落としこんだ」という。
確かに「2月」と言えば、まだまだ寒く街並みもどこかモノトーン調に映りがち。しかしもう間もなく春はやって来る。そんなゆったりとしたときの流れを過ごすにはまさにピッタリなのでは? 2012年の6月にオープン以来、10年変わらずにやって来るという常連客の方がいるというのも頷ける。
「観光客の方がレンタル着物を着て、ここで一服という方も多いんですが……実は、意外と地元の常連さんたちがここで朝食を楽しんでくれるというケースが多いです」と、アキさんが言うように、この店のウリはモーニング。ということで早速1番人気を誇る「朝パンセット」をオーダーした。
サックサクのトーストが嬉しいモーニング
「もともと東日本大震災の起こった翌年にオープンしたというのもあって、オーナーは『浅草の街を元気にしたい』という思いがあったと聞いています。以前までは外国人観光客の方もたくさん来てくれたんですが、今はコロナ禍でパッタリになってしまったので寂しいですね」とアキさん。
とはいえ、この朝パンセットはかねてから人気が高く、これを食べてから出社するという方もいるほどだ。
朝パンセットはトーストとドリンクのシンプルなセットだが、それだけに一品一品の品質はまさに本物である。
「トーストは浅草でも人気の食パンを使っていて、バターにもカルピスバターを使ったり、トースターもアラジントースターという特殊なものを使用しているので……あのサクサクとした食感を楽しめるようになっています」
ただでさえサクサクな歯ごたえが嬉しいトーストだが、特殊なバターを使うことで甘みを控えながらも軽い食感を実現。そして何より印象深いのがこの糖蜜である。
サトウキビをベースにした砂糖になる寸前のもので、いわゆる液状にしたもの。通常使われがちなはちみつとは違って軽く食べられるのが多くのファンの心を掴んでいる。
朝をもっと優雅に過ごすには自家製プリンがマスト!
トーストを食べ、カフェラテをすすりながらのモーニング……どこか優雅で素敵な時間が流れていくが、ちょっと物足りなくなってきた。
ということで急遽、お店自慢の焦がしカラメル濃厚プリン650円も頂くことにした。
たまご選びからすべてをイチから作っているプリンだけあって、その味わいは超濃厚。
やや硬めに作られたプリンはスプーンを入れるとむっちりとした感触とともに切れていく。それをそのまま口へと運ぶと……まさに昔ながらのプリンの味わいが口に広がってくる。
そしてちょっとほろ苦い焦がしカラメルとの相性も抜群。先ほどの朝パンセットと合わせて大満足のモーニングとなった。ちなみに今回の筆者のような食べ合わせをするお客さんは結構いるらしく、完食後は皆、おしなべて笑顔で店を後にするという。
誰もがついつい笑顔になってしまう『FEBRUARY CAFE』の朝パンセットと焦がしカラメル濃厚プリン。自分へのご褒美に朝から贅沢するのも悪くないだろう。
構成=フリート 取材・文・撮影=福嶌 弘