清澄白河の第1号店の約4割は常連さん

「ブルーボトル」と聞くと、若者に人気のサードウェーブコーヒーショップの印象があるかもしれないが、1号店である清澄白河には老若男女、幅広い層のお客さんがやってくる。スマホで写真を撮る若者、ベビーカーをひいたママ友たち、ペットと散歩中のご近所さん、ご年配のご夫婦、PCを広げて作業するテレワーカー、自転車に乗りコーヒーをテイクアウトしていく人など店内を見渡すと幅広い客層で賑わっているのだ。天井が高く広々とした店内にはコーヒーのいい香りとシュ〜と響くエスプレッソマシンの音、そしてお客さん同士の心地よい会話が耳に優しく、意外なほどゆったりのんびりとした空間だ。

47席あるが、かなりゆとりのある空間。店舗内での感染対策もしっかり行われており、安心して利用できるのも嬉しい。(写真=ブルーボトルコーヒー)
47席あるが、かなりゆとりのある空間。店舗内での感染対策もしっかり行われており、安心して利用できるのも嬉しい。(写真=ブルーボトルコーヒー)

「オープンから6年経ちましたが、清澄白河という土地柄もあって、新規と常連さんの割合は6:4ほど。遠方からいらっしゃる方も多いですが、この地域に住む方々にはオープン以来たくさんご利用いただいています。先日も地元の喫茶店に足を運んだスタッフが、年配の方が『この街にブルーボトルコーヒーができてよかったわよね〜』とお話されていたと、うれしそうに報告してくれました。地域の方々にご迷惑をかけながらも、支えていただいた結果だと感じています」

工場部門を北砂に移し、くつろげるカフェにリニューアル

店長の鈴木さんはブルーボトルが上陸した2015年、知人のカフェオーナーから何気なく言われた「ブルーボトル受けてみたら?」の言葉をきっかけに、ブルーボトルが大切にしている3つのこと(デリシャスネス、ホスピタリティ、サステナビリティ)に魅力を感じて入社を決意。2015年5月から清澄白河店で働き、都内の店舗で経験を重ね、2021年に店長として清澄白河店に戻ってきた。

店長・鈴木理恵さん。店舗でもコーヒー豆やカップなどコーヒーグッズの購入が可能。鈴木さんのおすすめは、コーディー・ハドソンがデザインした数量限定のホリデー仕様の清澄マグ。
店長・鈴木理恵さん。店舗でもコーヒー豆やカップなどコーヒーグッズの購入が可能。鈴木さんのおすすめは、コーディー・ハドソンがデザインした数量限定のホリデー仕様の清澄マグ。

「リニューアル前はカフェスタンドに近いスタイルだったので、椅子も高くお子様連れの方やご年配の方がくつろぐスペースを作ることが難しい状況でした。もっと幅広い世代の方にお店を楽しんでもらいたいと考え、2019年に店舗内にあった焙煎とペイストリー部門を北砂ファクトリーへ移転させ、広々としたカフェスタイルへリニューアルしたんです。またライブキッチンを置き、オーダーが入ってから “できたて”のフードやスイーツをご提供できるようにしました。淹れたてのコーヒーとスイーツとのペアリングもお楽しみいただけます」

この日のドリップコーヒーはエチオピアのシングルオリジン。清澄白河店だけで味わえる季節のタルト(写真のタルトは2022年1月4日まで)との相性も抜群。口の中からホリデー気分に♪
この日のドリップコーヒーはエチオピアのシングルオリジン。清澄白河店だけで味わえる季節のタルト(写真のタルトは2022年1月4日まで)との相性も抜群。口の中からホリデー気分に♪

地域に根ざし、日常に寄り添えるコーヒーショップへ

(写真=ブルーボトルコーヒー)
(写真=ブルーボトルコーヒー)

新型コロナウイルスが世の中に広がったが、地域に根ざしていたブルーボトルコーヒーは大きな打撃を受けることなく、地域のお客さんからも変わらぬ支持を得ていたという。通販サイトでは本格的なインスタントコーヒーや、保冷・保温に優れたコーヒータンブラーがコロナ禍で注目を集め、人気商品になったそうだ。お家でもお店でも、ブルーボトルコーヒーの美味しさを求めるファンは増え続けている。

またオンラインでのコーヒーレッスンや法人向けサービス事業、SNSを使ったライブ配信など新たな取り組みも始まっている。日本上陸から6年、日常にはなくてはならないコーヒーショップへと成長した。

「1号店に戻ってきても、入社した時に抱いた“日本で愛されるコーヒーショップにしたい”という思いは変わっていませんでした。スタッフと共に1号店の誇りを持ちながら楽しく働くためにも、ご利用いただくお客様にコーヒーを通じて日々の活力を与え、日常に寄り添える存在になることが大切だと考えています。この先5年10年と地域に愛されるローカルなお店に育てていきたいですね」

ゲストの目の前でドリップされるコーヒーを目の前で眺められるのも『ブルーボトルコーヒー』の醍醐味。バリスタたちの所作を堪能できるカウンター席がコロナ禍でなくなってしまったのが悔しい。
ゲストの目の前でドリップされるコーヒーを目の前で眺められるのも『ブルーボトルコーヒー』の醍醐味。バリスタたちの所作を堪能できるカウンター席がコロナ禍でなくなってしまったのが悔しい。

オープンしたての頃に行った清澄白河の『ブルーボトルコーヒー』は、まるでテーマパークのようで特別感に溢れていたことを思い出した。リニューアル後に改めて訪れてみると、今やコーヒーの街となった清澄白河の中で昔からある純喫茶のような安心感と温かさを感じられた。トレンドからカルチャーへ、その言葉の意味は体験してこそ実感できる。ローカルな街の魅力も感じながら、とっておきの一杯を楽しんでほしい。

取材・文・撮影=つるたちかこ