高架線沿いにあるカウンターだけの立ち飲みバー
高架線沿いにある築50年ほどの平屋の建物が、『stand bar AJITO(スタンドバーアジト)』。2003年から営業している。向かいの高架下は駐輪場になっていて、駅からの人通りは多い。夜が更けても高架線沿いの路地を明るく照らす。
路地からも中の様子がよく見える。店内にはロックがかかり、カウンターのみで椅子はないが、カウンターの高さがもたれかかるのにちょうどよく、滞在時間は平均2、3時間と長めらしい。話し込んでいるうちについつい時間が経ってしまうようだ。取材時も居心地がよく、つい長居をしてしまった。男性客の方が比率は多いが、女性客も入りやすく、カウンターに並ぶお客が全員女性ということも。
バンドやバイク、格闘技。コースターも手作りするマスター
『stand bar AJITO』は地元・本八幡出身のマスターがご夫婦で営業している。「夫婦でバンド活動もしているのでずっと一緒ですね」とマスター。市川RAMONESという名前で10年以上のキャリアを持つ。マスターはさらにバイクや格闘技など趣味が多数。バイク誌や音楽雑誌等にもたびたび取り上げられる名物マスターで、全国にいる知り合いが、東京出張などのついでにこの本八幡のお店まで足を運ぶという。
「趣味の時間は早起きして捻出しています」とマスター。材料の仕入れは愛車のハーレーで行く。バンドの練習は主に定休日の日曜日で、ライブも日曜日に開催。お店の営業時間が短縮された時期は、時間が余ってしまって、店のコースターを自分で刺繍していたという。格闘技から手芸まで、手がける趣味が幅広い。
自家製ピザやコテージパイなどフードメニューも
『stand bar AJITO』ではフードメニューも提供。自家製のピザは生地から作っている。アンチョビ&オリーブのほか、チョリソー&ハラペーニョのメキシカンも。パリッとした薄い生地が食べやすく、お酒のつまみにちょうどいい。
フィッシュ&チップスにはケチャップが添えられているが、一緒にモルトビネガーも出してくれる。本場イギリスではこちらが定番。まろやかな酸味がくせになる。
ひき肉とマッシュポテトのコテージパイにもモルトビネガーをお好みで。なくてもおいしいが、かけると味が完成する。
アルコールを飲めない人、もう飲めないけどもうちょっとお店にいたい、という人のためにカフェメニューも始めた。50年代のビンテージの食器でコーヒーを出してくれる。「オーセンティックなバーだと、最後にコーヒーを飲んで帰ったりしますからね」とマスター。
「本八幡はそんなにすごく個性的な街でもないので、やるなら地元で何かおもしろいお店ができたらなと思っています」。『stand bar AJITO』のような個性的な個人店があることが、街の魅力になっていく。
構成=フリート 取材・文・撮影=藤村恭子