身体にいいお気に入り食材、小豆をメインに
西荻窪駅南口から西荻窪駅南通りを進んで、右に折れた住宅街に『一軒家カフェ&サロンhana』はある。築80年という2階建ての古民家で、2015年から1階をカフェ、2階をサロンやレンタルスペースとして営業している。
店を営むのは、もともとはセラピストとして活動していた李英淑さん夫妻だ。夫が脱サラしたのを機にサロンと併設して、体にいい食事やスイーツを提供するカフェを2人で開くことにした。
物件を探していた当初、西荻窪は自宅から通いづらいため候補に入っていなかった。ところが、サロンとカフェ、両方を営業できる場所はなかなか見つからない。探しあぐねていたときにもたらされたのが、西荻窪にある部屋数も多い古民家の情報だった。内見しに来てみると、1階でカフェ、2階で施術ができるし、大家が施していたリノベーションの感じのよさも気に入った。「この建物に呼ばれた感じ」と李さん。
サロンとしても活用される2階の部屋は、現在レンタルスペースにもなっていて、着付け教室や子供向けの英語教室なども開かれている。
大納言小豆と金時豆をブレンドした特製あんこはかなり甘さ控えめ
1階のカフェは”あずきパーラー”と謳っている。たくさんカフェがある中で、自分たちの店にもなにか特徴があった方がいいと考えていたとき、普段から身体に気を遣って取り入れていた小豆入りの酵素玄米に思い至った。
「酵素玄米を食べられるお店は少ないし、喜んでもらえるだろうと考えました。それから夫婦で占いに行った時に2人のラッキーフードが小豆だと言われたこともあったんです(笑)」
『一軒家カフェ&サロンhana』特製のあんこは、北海道産大納言小豆と金時豆をブレンドし、黒砂糖を加えて炊いている。砂糖の量は相当控えめ。その分、一般的な和菓子屋さんが作るあんこのような照りはなく素朴な印象だ。小豆も大納言なので大きく粒が残っているが、小豆の4〜5倍ほどの大きさがある金時豆がプラスされていることもあって、口に入れると、豆の味と食感が味わえると好評だ。
酵素玄米で作ったおはぎは食べ応えがある。酵素玄米独特のもちもちした食感と特製あんこの味わい、そして店主夫婦のルーツである韓国から取り寄せたオーガニックのきな粉もかかっている。きな粉には、大豆だけでなく雑穀もブレンドされていて、日本のきな粉より味や風味に広がりがある。
夏の人気メニューはなんといっても特製かき氷。目の前に置かれると、思わずのけぞってしまいそうな迫力あるボリュームだ。かき氷は3種類用意されているが、いちばん人気は「あずきな粉」。オープンした年からの定番だ。
山のような氷にトッピングされたきな粉は氷を覆い尽くすかのよう。スプーンをそっと入れると、氷の上できな粉の地滑りが小さく起こったりもする。練乳をかけたふわふわの氷の下には甘さ控えめの特製あんこが隠れていて、冷たい氷と2種類の豆のほくっとした食感とのバランスも楽しい。単品でも達成感のある大きさだが、食事のあとに食べたい人には、小さいサイズも用意されているのが嬉しい配慮だ。
食事のメニューは酵素玄米を使ったおにぎりやカレーのほか、冬には酵素玄米のベジビビンパやあずき餃子も用意されている。ドリンクの種類も豊富で、コーヒーやほうじ茶のほか、小豆を煎って煮出したオリジナルの小豆茶や韓国の伝統茶もいただける。
昭和の日本的なインテリアにプラスされた韓国のテイストも人気
畳敷の店内で使われている家具は、東京生まれで「昭和が好き」という李さんが西荻窪の古道具店で集めたものや、韓国のアンティーク街で買ったものなど、いずれも気に入っているものばかり。趣味のいい大家が揃えた古い建具ともうまく組み合わせられている。
かつてこの一軒家は借家として使われ、『一軒家カフェ&サロンhana』より前は店舗として使われてはいなかった。「あるとき、随分前にこの家に住んでいたという人がお客さんとしてきてくれて、びっくりしたことがあります」と李さん。
建物が持つ80年の歴史と懐かしい道具類の味わい、店主夫妻のルーツなど文化と歴史の融合した空間は、心まで癒やしてくれそうだ。
※営業時間は変更の場合あり/定休日:月・木/アクセス:JR中央線西荻窪駅から徒歩4分
取材・撮影・文=野崎さおり