駅を降りれば即エントランスのはずが……それまでがすでに楽しすぎる
日常のあらゆるニーズに応えてくれる私鉄とは「西武鉄道」! 厳密にはグループ会社の運営も含まれるけど、先程挙げた僕の「大手私鉄の勝手なイメージ」が全てある。
そして『西武園ゆうえんち』は2021年5月19日にリニューアルオープンを迎え、さまざまな「仕掛け」が楽しすぎる! ということで、連日大人気。その様子を見に行きたいところだが、行き先はテーマパーク。
さすがに一人で行くのも切ないので、今回は鉄道ダイヤ情報(小社刊)で連載中の「遖(あっぱれ)!はらから鉄道塾」から鉄道写真家の「助さん」こと助川康史さんと、ダンス&ボーカルユニット「SUPER★DRAGON」のメンバーで、鉄道愛溢れる伊藤壮吾くんをお呼びして3人でお出かけ!
「よくあるタレントさんの鉄道好きってただの設定でしょう?」と思ったそこのあなた、壮吾くんについては僕がこう断言しよう。彼は「リアルガチ」です。助さんや僕よりくわしいかも……。
西武園ゆうえんちに向かう西武山口線がすでにアトラクション
さて、『西武園ゆうえんち』までのアクセスは当然西武線が便利。最寄駅のズバリ西武園ゆうえんち駅。そうそう、この直結感がいいっすねー! THE私鉄って感じです。
しかもこの区間で運転されている山口線は、通常の電車とは異なるゴムタイヤで走る「新交通システム」。これがすでにゆうえんちのアトラクションっぽくて楽しい!
え、ここは昭和? これぞまさに「テーマ」パーク。
山口線を降りると目の前に広がるのは、迫力満点のアトラクションの数々……ではなくて、昭和レトロな世界観。流れる音楽も昔のテレビで聞いたことのある歌謡曲ばかり。年代的にストライクなのか、鼻歌まじりで助さんが楽しそう。そう、『西武園ゆうえんち』は「心あたたまる幸福感に包まれる世界」をコンセプトに古き良き昭和のムード溢れるテーマパークに生まれ変わったのだ。
ちょうど今回のメンバーは昭和生まれの助さん、ギリ昭和のムラカミ、バリバリの平成生まれの壮吾くんと世代も異なるので、それぞれ「グッとくるものも違うのか」という点にも注目したい。
しかし、早速園内に入る前に「いいねぇ」と30分も時間を消費してしまった。我々の歩みを止めさせたのはエントランス前にある路面電車だ。世代は異なっても、鉄道への愛は変わらないということを早速証明することができた。
昭和の熱気のシンボル「夕日の丘商店街」
路面電車に夢中になっていても、1日のスケジュールもこのページもいつまでも終わらないので、「園内に早く入りましょう」とメインエントランスを抜けたところで、またもや壮吾くんが立ち止まった。
「これ、鉄橋じゃないですか??」
一見、おしゃれなエントランスにしか見えないがよーく見ると、なんと鉄橋がモチーフになっている。さすが壮吾くん、感性が光る!ということで各自撮影にもう10分。やっと辿り着いたのは『西武園ゆうえんち』のシンボル的存在である「夕日の丘商店街」だ!
我々は鉄ちゃんなので駅からここまで少なく見積もっても40分以上かかっているが、通常のお客さんならチケット売場の混み具合を加味しなければ、2〜3分もあれば余裕でたどり着く距離だ。
さて、ここで元気ハツラツなのは助さんだ。「夕日の丘商店街」のモチーフは1960年代ということもあり、さすがに助さんよりもちょっと上の年代だが、それでも懐かしい光景も多いみたいで、壮吾くんに「昭和」を優しく激しく語りながら商店街をめぐっている。
1960年代と言えば東海道新幹線が開通したころ。商店街のショーウィンドウには「夢の超特急」と書かれた新幹線のおもちゃも展示されており、助さんの目は釘付けだった。
コロッケが食べたくても、日本円が使えない!?
実際にお土産やコロッケなども購入することができるのだけど、ここでもう一つ面白い「工夫」がある。
実は『西武園ゆうえんち』、園内では一部をのぞいて日本円が「使えない」! そしてPASMOなどの交通系ICも使えない。
「じゃ、なにで買い物するのよ」となるわけだが、ここはゆうえんち。流通している通貨が違うのだ。園内での流通通貨は「西武園通貨」と呼ばれ、日本円からはチケット売場か商店街内の「夕日丘郵便局」などで両替できる。日本円への再両替、入園日翌日以降の再利用はできないので注意しよう。
突然始まる昭和の日常ショー
しばし、商店街をぶらついていると「ドロボー!」と平和な商店街に響く不穏な大きな声。なーんと、商店街の店舗の2階にドロボーが!!これは許せんと駐在さんもドロボーを追いかける! しかしドロボーも必死に逃げる!
逃げたドロボーを居合わせた少年たちも必死に追跡。子供たちにとって「昭和」という未体験の世界観は伝わるのかと正直疑問に思っていたが、すっかりその熱気を楽しんでいる様子だ。
この商店街には実際に「住人」がいて、この泥棒騒ぎのように、至る所でいろいろなハプニングや生活のワンシーンを見ることができる。突発的に始まることも多いので、商店街では少し長めに過ごすものおすすめだ!
さすが『西武園ゆうえんち』の鉄道系アトラクション
夕日の丘商店街を抜けてやってきたのは「レッツゴー!レオランド」。
ここは小さな子供向けのアトラクションも多いのだけが特徴なのではなく、鉄腕アトムにジャングル大帝と手塚治虫作品のキャラクターたちが登場する、今回のリニューアルで新設されたエリアだ。手塚作品をテーマとして遊園地常設ファミリーエリアとしては、世界初の施設になる。
ここでも3人がついつい注目しちゃうのが、「レオとライヤの夕日列車」だ。レオランド内をぐるりと一周する列車で、ここで走っている機関車と客車はかつて「としまえん」で走っていたものだ。移設にあたって園内の坂や狭い道を輸送するのに苦労したという。
小さな機関車に思えるかもしれないが、その作りはメカとしてかっこいい。鉄道好き3人はそろって台車を覗き込んでは「はぁ~」とか「ほぉ~」とか溜息をつきながらニヤニヤ。
踏切も1箇所あるのだけど、ここの踏切にもひとネタ。実はこの踏切、本物の西武線で使われているものをゆうえんち向けにカスタマイズしており、西武線特有の優しい踏切警報音もそのまま堪能することができる。
あえてそのまま残した昭和のアトラクション
さて、レオランド内には軽食が楽しめる「軽食・売店ミルクホール」がある。こちらも昭和をモチーフにした品々が並んでいるけど、今日は思わず助さんが「あー昔食べたor飲んだわー」とつぶやいてしまったこんなメニューをチョイス!
今回のメニューは揚げパン20園とミルメーク20園! ミルメークとは冷たい牛乳に入れるパウダーで、いちごやバナナなどのフレーバーをつけることができる一品だ。このメニューも助さん世代的には、どストライクのようで楽しそう。壮吾くんが楽しそうにミルメークを作っていく。
「レッツゴー!レオランド」のまわりには、「大観覧車」や「バイキング」、「オクトパス・アドベンチャー」など、昔ながらのアトラクションがある。これらは、旧・西武園ゆうえんち時代から使われており、一部の演出などを除いて、基本的に当時のまま使用されている。
これも一つの「狙い」だ。リニューアル前のゆうえんちを知っている人にとっては限りなく懐かしい存在で、なにを隠そうムラカミがその一人。
大学時代に所沢に住んでいたこともあり、大学の同志と共にこのあたりにも遊びに来たことがある。いい思い出も多いが、思わず目を覆いたくなる思い出もある……。そんな切ない思い出を想起させてくれるのも、『西武園ゆうえんち』の魅力かもしれない。
ここに来たかったんだ! 大興奮のチャレンジトレイン
メインエントランスから入って園内最深部にあるが「チャレンジトレイン 出発進行!小さな運転士さん」だ! これぞ、キングオブ鉄道系アトラクション。鉄道好きな全ての人の夢を叶えてくれるであろう、アトラクションだ。こちらも「としまえん」にあったアトラクションで、『西武園ゆうえんち』に無事に移設された。「無事に」というのがポイントで、としまえんが閉園する際に「チャレンジトレイン」の行く先を誰もが心配した。それくらい人気で、多くのちびっこたちに愛されてきたアトラクションなのだ。移設にあたっては5000系レッドアローなど昭和の時代の車両も登場しているのもポイントだ。
このアトラクションは西武線の実車をデフォルメした車両に乗り込み、全長197mの路線を実際に運転士となって運転していくというもの。途中には通過駅も設定されており、その通過時刻によって点数が与えられるというシステムが取り入れられ、これが「繰り返しやり込みたくなる」要素につながっている。もちろん、大人も乗務可能で鉄道ファンの壮吾くんも本命はやっぱりココ! マイ手袋も持参して気合十分。安全、定時運行目指していざ出発!!
もう一つの世界初! 夕陽館「ゴジラ・ザ・ライド」
一日の締めくくりは「レッツゴー!レオランド」と並んで、もう一つの世界初である「ゴジラ・ザ・ライド」へ。今回のリニューアルの最大の目玉といっても過言ではないこちらの施設、メインなのになぜ夕方に来たのかというとこのアトラクションがある建物に理由がある。「夕日の丘商店街」を見下ろすように佇むこの夕陽館は、その名の通り、夕日が当たる位置に立っているのだ!
そして、注目の「ゴジラ・ザ・ライド」だが、最新技術を駆使した映像と体感システムから生み出される迫力とリアル感は乗らないとわからない。夕陽館のほのぼのとした外観とは180度違う、ウルトラ大スリル! ムラカミの乏しい文章力では伝わらないから、すまないがもう、乗ってくれぇい!!
プールも始まった、多彩に楽しめるゆうえんち!
夏の『西武園ゆうえんち』といえば、大型プールに花火! 2021年7月15日から9月5日まで園内では「大夏祭り」が開催中。波のプールに流れるプール、大回転!急流すべり台など暑い夏にはたまらない涼感があなたを待っている。プールでは「本気の合戦」を謳った「大水合戦」が1日2回開戦される。夜には期間中毎日19:30からはじまる夜空を埋め尽くすド迫力の大花火も打ちあがるエンターテイメントショー「大火祭り」も必見だ!
『西武園ゆうえんち』の楽しみ方は園内だけにとどまらないのも、ひとつの特徴。メットライフドームも隣の駅なので、日中はゆうえんち、夜はナイター観戦なんてコースだってコーディネートできる。さらに西武園ゆうえんち駅のすぐそばにある、中国割烹旅館『掬水亭』では狭山茶香る「狭山の茶湯」が楽しめる石造りの大浴場に、多摩湖を一望できるレストラン『天外天』もある。暑いシーズン、ゆうえんち帰りにひとっ風呂! なんていうのも粋だね、こりゃ。
さらに所沢から西武鉄道の看板特急「Laview」に乗って帰れば、完全にキマるコースの完成だ。ちなみに『掬水亭』は宿泊も可能になっている。
リニューアルして大きくパワーアップした『西武園ゆうえんち』。昭和のアツさにみんなで会いに行こう!
取材・撮影・文=村上悠太 取材協力=西武園ゆうえんち、西武鉄道