国内外の「怖い」本を展示

『絵本百物語』桃山人撰 竹原春泉画 1841年。40種以上の妖怪が描かれた、妖怪図鑑のような怪談本の一種。
『絵本百物語』桃山人撰 竹原春泉画 1841年。40種以上の妖怪が描かれた、妖怪図鑑のような怪談本の一種。

ロンドンタイムズの通信員、中華民国の政治顧問として活躍したオーストラリア出身のアーネスト・モリソンが集めていた約2万4千冊にのぼる文献と、この蔵書を購入した三菱3代目社長の岩崎久彌の支援でアジア全域に拡大して収集した書籍から成る東洋文庫。その約100万冊に及ぶ蔵書の中から、貴重な書籍や絵画などを展示する『東洋文庫ミュージアム』では、東洋の歴史・文化、東西の出会いと発見をテーマに洋の東西を越えた企画展示を行っている。

本展では、「怖い」という言葉から連想されるさまざまなテーマで資料を展示。「怖い」本と聞いてストレートに想像するような怪談本のほか、仏教における地獄の様子を詳細に描いた『往生要集』、昔の価値観では「正しい」とされた拷問や仇討ちの様子を描く資料なども展示。「怖い」本の実例を提示するに留まらず、災害や病などの「怖い」存在に向き合ってきた人間の営みまで幅広く取り上げる。

『九相図巻』鎌倉時代成立か 書写年不明。仏僧の色欲を絶つ修行に使われたとされ、遺体が朽ちる経過を9段階に分けて描く。このほか、第四相にあたる「方乱相」のページを開いた『九相詩』編者不明 1671(寛文11)年刊も展示する。
『九相図巻』鎌倉時代成立か 書写年不明。仏僧の色欲を絶つ修行に使われたとされ、遺体が朽ちる経過を9段階に分けて描く。このほか、第四相にあたる「方乱相」のページを開いた『九相詩』編者不明 1671(寛文11)年刊も展示する。
『和漢三才図会』寺島良安 1712年。中国で編纂された『三才図会』にならった江戸時代の百科事典で、このページには大食(アラビア)には人の頭のような実がつく樹木があると書かれている。
『和漢三才図会』寺島良安 1712年。中国で編纂された『三才図会』にならった江戸時代の百科事典で、このページには大食(アラビア)には人の頭のような実がつく樹木があると書かれている。
『流行病風刺絵』のうち「諸人麻疹退治之図」歌川芳盛 1862(文久2)年。病除けとして作られた「はしか絵」の一つ。はしかに苦しめられた人々が、擬人化された麻疹を懲らしめている。
『流行病風刺絵』のうち「諸人麻疹退治之図」歌川芳盛 1862(文久2)年。病除けとして作られた「はしか絵」の一つ。はしかに苦しめられた人々が、擬人化された麻疹を懲らしめている。

時代とともに「怖い」は変わる

日本で殉教したイエズス会士の伝記、『カルロ・スピノラ伝』ファビオ・アンプロジオ・スピノラ 1630年刊 アントワープ刊 ほか。数学者・天文学者としても著名だったスピノラの殉教がヨーロッパで反響を呼び、甥のファビオが著したもの。
日本で殉教したイエズス会士の伝記、『カルロ・スピノラ伝』ファビオ・アンプロジオ・スピノラ 1630年刊 アントワープ刊 ほか。数学者・天文学者としても著名だったスピノラの殉教がヨーロッパで反響を呼び、甥のファビオが著したもの。

本展では、怖さを感じさせる要因が時代や地域ごとに移り変わってきたことに着目する。信仰の証として評価されたキリスト教信者の殉教を描いた書や、ある時代には悪人とされた歴史上の人物に関する記述、かつては美談としても語られた仇討ちの様子を伝える瓦版などの展示が、「怖い」の普遍性に揺さぶりをかける。

また、現代人の目から見ると「面白い」「かわいい」とも捉えうる資料が並んでいる点も興味深い。自分にとっての「怖い」本とは何か、それはこの先も「怖い」本であり続けるのか、あらためて考えてみたくなる展示だ。

『瓦版集』1853(嘉永6)年頃刊 江戸。名主であった兄・幸七を毒殺した男を、幸七の妹・たかが斬り殺す姿が描かれている。江戸時代には武士の仇討ちが法的に認められていただけでなく、百姓の仇討ちも大抵は賞賛されたという。
『瓦版集』1853(嘉永6)年頃刊 江戸。名主であった兄・幸七を毒殺した男を、幸七の妹・たかが斬り殺す姿が描かれている。江戸時代には武士の仇討ちが法的に認められていただけでなく、百姓の仇討ちも大抵は賞賛されたという。
『内景図』江戸時代(制作年代不明)。人体の作りや、体内に住みさまざまな病や症状を引き起こすと考えられていた虫などを描いた巻物。
『内景図』江戸時代(制作年代不明)。人体の作りや、体内に住みさまざまな病や症状を引き起こすと考えられていた虫などを描いた巻物。

開催概要

「怖い」本

開催期間:2026年6月3日(水)~9月23日(水)
開催時間:10:00~17:00(入館は~16:30)
休館日:火(祝の場合は翌平日)
会場:東洋文庫ミュージアム(東京都文京区本駒込2-28-21)
アクセス:JR山手線・地下鉄南北線駒込駅から徒歩8分、地下鉄三田線千石駅から徒歩7分
入場料:一般1000円、65歳以上900円、大学生800円、高校生700円、中学生以下無料

【問い合わせ先】
東洋文庫ミュージアム☏ 050-5541-8600(ハローダイヤル)
公式HP:https://toyo-bunko.or.jp/

取材・文・撮影=増山かおり