フジタから始まった猫の絵画史に迫る
ツンとすましたモダンな猫、あえて朴訥(ぼくとつ)に表した猫など、多彩な猫の絵を描いてきた洋画家たち。しかし日本で洋画が生まれた当初、猫の絵はほとんど描かれていなかった。洋画家たちが手本とした西洋の絵画では絵の主役は人物で、そもそも動物の絵が少なかったのが理由という。
そんな猫というモチーフを、洋画の魅力的なテーマへと押し上げたのが藤田嗣治だった。はじまりは、1920年代のパリで脚光を浴びた「乳白色の裸婦」の側に一匹の猫を描いたこと。そこからフジタはまるで自分のサインのように猫を自画像に描き込むようになり、欠かせないモチーフとなっていったという。
本展は、フジタが描いた「裸婦の横の猫」を出発点に、日本の洋画家たちの猫の歴史をたどるもの。フジタから直接の影響を受けた画家もいれば、そうでない画家いるが、共通するのは、西洋とは違う日本の猫の絵の歴史も背負っていたということ。日本と西洋の伝統の間で悩み、猫というモチーフから新たな道を見出そうとした、画家たちの模索の道が伺える。
猫が主役の洋画を味わう
フジタがさまざまなモチーフに取り組んだなかでも、今も昔も、変わらぬ人気を誇るのが「猫」。裸婦の横に猫を描き込んだ初期の作品から『猫の本』、戦時下の混沌を象徴する猫の乱闘、そして最後まで手元に残した一枚まで、フジタの「猫」の傑作を通してその歴史をたどる。
また「猫」の絵を通して、「絵画の主役は人物」という芸術観から動物絵画の少なかった西洋と、人と動物は同じ心を持つという仏教の教えを背景に動物絵画の宝庫であった日本を比較。その奥にある動物観の違いも探る。それとともに、フジタ以降、日本でも多く描かれた洋画家たちによる猫の絵を紹介。洋画家・木村荘八が流行歌に着想を得て描いたハイカラな猫の絵や、前衛画家・中原實(みのる)による愛くるしい子猫まで、浮かび上がる洋画家たちの魅力に迫る。
猪熊弦一郎の猫の傑作15点が集結
フジタ以降の猫の絵に展開をもたらした猪熊弦一郎にも注目。1950年代に集中して、猫の絵に取り組んだ猪熊の猫の絵の傑作が集結するのも見どころだ。最大級の油絵から、ユニークな猫がびっしりと描かれたスケッチブックの一葉まで、猫の傑作15点が一堂に会する。
開催概要
「フジタからはじまる猫の絵画史 藤田嗣治と洋画家たちの猫」
開催期間:2025年9月20日(土)~12月7日(日)
開催時間:10:00~17:00(入館は~16:30)
休館日:月(ただし10月13日・11月3・24日は開館)・10月14日(火)・11月4日(火)・25日(火)
会場:府中市美術館 2階企画展示室(東京都府中市浅間町1-3)
アクセス:京王電鉄京王線東府中駅から徒歩17分
入場料:一般1000円、高校・大学生500円、小・中学生250円
※10月11日(土)〜13日(月)は市民文化の日無料観覧日のため無料。
※障がい者手帳を持参で本人と付き添い1名無料。
【問い合わせ先】
ハローダイヤル☏050-5541-8600
公式HP http://fam-exhibition.com/foujita2025/
取材・文=前田真紀 画像提供=府中市美術館





