貴重な名品10作も登場
20世紀初頭のパリの街並みを描いたことで知られる風景画家モーリス・ユトリロ(1883–1955)。生まれ育ったモンマルトルや暮らした郊外の風景を数多くの油彩画に残したユトリロは、ピサロやシスレーの影響を受けて厚塗りの画面を志向したのち(「モンマニー時代」)、1909年頃からパリの街の白壁を独自のマチエール(絵肌)で表現し、アカデミックな絵画と一線を画す作風を確立した(「白の時代」)。その独創的な表現や半ば抽象化された画面空間は、エコール・ド・パリのなかでも特異な存在として高く評価されている。
『SOMPO美術館』学芸員の桑名真吾さんは、「ユトリロ展は毎年のように開催されていますが、今回の見どころはパリ・ポンピドゥセンターから名品が10点出品されることです。フランスでユトリロの個展が開かれることは少ないため、現地でもなかなか見られない作品がそろっています。コルシカやブルターニュに滞在していた時期の珍しい作品も出品されるので、ぜひ会場で実際にご覧ください」と見どころを語る。
5つのテーマからユトリロの生涯と作品に迫る
「モンマニー時代」の初期作品にはじまり、最も充実していると評価される「白の時代」の作品を中心に、晩年の「色彩の時代」まで、ユトリロの画業を振り返る本展。ユトリロ協会から提供された資料もあわせて展覧することで、初期から晩年までの作品を通して鑑賞できる見ごたえある内容になっている。
展示では「幼少期と青年期に思いをはせる」「ユトリロと日本をめぐる短い歴史」「壁の質感を味わう」「制作方法を知る」「女性の描き方」といった5つの視点で展開しながら、ユトリロの生涯、制作、日本での評価の高まりについて解説。
従来では見過ごされがちな新たなユトリロ像が浮かび上がる構成になっている。
関連イベントも開催!
ギャラリートークが開催
9月26日(金)18時30分~19時と10月1日(水)11時~11時30分、本展担当学芸員が展示フロアを移動しながら説明するギャラリートークが展示室で開催。参加費無料(要入場券)。5階展示室入り口に集合。
「ギャラリー★で★トーク・アート」が開催
11月10日(月)14~16時、休館日に貸し切りの美術館でボランティアガイドと話をしながら楽しむ参加型作品鑑賞会が開催。定員30名、参加費1800円。参加申し込みはWEBにて9月19日(金)10時~美術館HPにて受付開始。高校生以下無料。
開催概要
「モーリス・ユトリロ展」
開催日:2025年9月20日(土)~12月14日(日)
開催時間:10:00~18:00(金は~20:00。入館は閉館30分前まで)
休館日:月(ただし10月13日・11月3・24日は開館)・10月14日、11月4・25日
会場:SOMPO美術館(東京都新宿区西新宿1-26-1)
アクセス:JR・私鉄・地下鉄新宿駅から徒歩5分
入場料:一般(26歳以上)1800円、25歳以下1200円、高校生以下無料
※障害者手帳をお持ちの人とその介護者1名は無料。
【問い合わせ先】
ハローダイヤル☏050-5541-8600
公式HP https://www.sompo-museum.org/exhibitions/2024/mauriceutrillo/
取材・文=前田真紀 画像提供=SOMPO美術館





