高知土佐の夏祭りで今なお飾られる絵金の屏風絵が大集結
歌舞伎や浄瑠璃のストーリーを極彩色で絵画化した芝居絵屏風。幕末から明治初期にかけて数多くの芝居絵屏風をのこし、地元高知では「絵金さん」の愛称で長年親しまれてきた土佐の絵師・金蔵の屏風は、今も夏祭りの間に神社や商店街の軒下に飾られ、提灯や蝋燭の灯りで浮かび上がる画が見る者に強い印象を残す。高知県外で半世紀ぶりとなる展示は、『あべのハルカス美術館』(2023年)、『鳥取県立博物館』(2024年)と巡回を経て、いよいよ東京で開催される。
『サントリー美術館』主任学芸員の内田洸(たけし)さんは、「絵金の芝居絵屏風は強烈な描写で知られていますが、ただ恐ろしいだけではありません。複雑な芝居の筋を巧みに表す構成力や、力強い色彩、躍動感あふれる人物描写など、一度見れば忘れられない魅力があります。また、今なお高知の夏祭りで飾られていることも大きな特徴で、本展では現地の祭礼の再現展示を行います。東京に絵金の主要作品が一堂に会する機会は滅多になく、ぜひこの機会に幕末土佐で生まれた絵金の美をご覧ください」と見どころを語る。
芝居絵屏風から掛軸、絵巻まで多様な画力を紹介
絵金の作品は約200点に及ぶ芝居絵屏風類が高知県に現存し、一部美術館・博物館に収蔵されている他は、神社や公民館、自治会などによって管理され、神社の夏祭りで使用されている。
第1章では、絵金の基準作として名高い、高知県香南市赤岡町の4つの地区が所蔵する芝居絵屏風が展示される。これらの屏風は、毎年7月に行われる須留田八幡宮神祭、土佐赤岡絵金祭りで商店街の軒下に飾られるものだ。
また、御用絵師でもあった絵金は、芝居絵屏風以外に風俗・歴史人物・芝居の物語などを表した掛軸や絵巻、安政元年(1854)に土佐を襲った大震災の画帖も手掛けている。それらも併せて展示されることで、絵金の多様な画力に触れられるのも見どころだ。
第2章では、高知の夏祭りの雰囲気を味わえるよう、展示室に神社の絵馬台を再現。高知の夏祭りのもうひとつの風物である絵馬提灯が展示される。行燈絵とも呼ばれる絵馬提灯は毎年新調されたため、現存作は非常に少ないが、近年発見された「釜淵双級巴(かまがふちふたつどもえ)」が登場するのにも注目したい。
開催概要
「幕末土佐の天才絵師 絵金」
開催期間:2025年9月10日(水)~11月3日(月・祝)
開催時間:10:00~18:00(金および11月1日〈土〉・2日〈日〉は~20:00、9月27日〈金〉・27日〈土〉は六本木アートナイトのため~21:00。入館は閉館30分前まで)
休館日:火(ただし9月23日・10月28日は開館)
会場:サントリー美術館(東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン ガレリア3F)
アクセス:地下鉄日比谷線・大江戸線六本木駅直結、地下鉄千代田線乃木坂駅から徒歩3分(東京ミッドタウンまで)
入場料:一般1800円、大学生1200円、高校生1000円
※中学生以下無料。
【問い合わせ先】
サントリー美術館☏03-3479-8600
公式HP https://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2025_4/index.html
取材・文=前田真紀 画像は主催者提供





