ギッリが見たもうひとつの風景がそこに

《カプリ、1981》〈イタリアの風景〉より 1981年 (C)Heirs of Luigi Ghirri。
《カプリ、1981》〈イタリアの風景〉より 1981年 (C)Heirs of Luigi Ghirri。

イタリアを代表する写真家ルイジ・ギッリは測量技師としてのキャリアを積んだのち、コンセプチュアル・アーティストたちとの出会いをきっかけに、1970年代から本格的に写真家として活動を開始した。

ギッリにとって写真とは、現実世界の複製ではなく、フレーミングされた視覚的断片によって風景を作り出すための手段であった。彼はこの表現手段を通じて、通り過ぎる風景の中に現実とイメージの関係性を見出し、「在」と「不在」、外的世界と内的世界について思索を深めようと試みた。

広報担当者は、「展覧会会期中、2022年に公開されたドキュメンタリー映画『Infinitio』を日本語字幕付きで、本邦初公開上映いたします。ギッリが撮影する様子や、生前ギッリと交流の深かった関係者のインタビューが含まれており、記録映像としても貴重な作品です。関連イベントにもぜひご注目いただけたらと思います」と見どころを語る。

《ボローニャ、1989-90》〈ジョルジョ・モランディのアトリエ〉より 1989-90年 (C)Heirs of Luigi Ghirri。
《ボローニャ、1989-90》〈ジョルジョ・モランディのアトリエ〉より 1989-90年 (C)Heirs of Luigi Ghirri。

初期の代表作から晩年の作品までが集結

《ザルツブルク、1977》 〈F11、1/125、自然光〉より 1977年 (C)Heirs of Luigi Ghirri。
《ザルツブルク、1977》 〈F11、1/125、自然光〉より 1977年 (C)Heirs of Luigi Ghirri。

ギッリが本格的に写真を始めたのは30歳の頃。それからわずか20年ほどの写真家活動の中で彼が手掛けた初期の代表作〈コダクローム〉や〈静物〉シリーズ、ギッリが生まれ育ったイタリア北部の都市レッジョ・エミリアなど欧州の風景、画家ジョルジョ・モランディ、建築家アルド・ロッシのアトリエを撮影したシリーズ含む、約130点が紹介される。

また、「プント・エ・ヴィルゴラ(Punto e Virgola)」という出版社をともに立ち上げた妻パオラがデザインした、書籍や彼女の作品もあわせて紹介。ルイジ・ギッリ作品を語る上で妻パオラが大きな存在であることを物語る。

約20年にわたるギッリの写真に対する多角的な思索をたどることで、彼が探求し続けた終わりのない風景に対する解釈と、その世界観に触れられそうだ。

《モデナ、1978》〈静物〉より 1978年 (C)Heirs of Luigi Ghirri。
《モデナ、1978》〈静物〉より 1978年 (C)Heirs of Luigi Ghirri。

関連イベントも開催

7月5日(土)にシンポジウムが開催

7月5日(土)の14~16時、アデーレ・ギッリ氏(ルイジ・ギッリ財団代表)、イラリア・カンピオーリ氏(レッジョ・エミリア市立博物館写真部門キュレーター)、山田裕理氏(東京都写真美術館 学芸員)を登壇者として迎え、シンポジウムが『東京都写真美術館』1階ホールで開催される。定員190名、参加費無料。当日10時より1階総合受付にて整理券を配布する。※伊日通訳付き。

ドキュメンタリー映画『Infinito』上映とゲストによるアフタートーク

『東京都写真美術館』1階ホールにて、下記日程でドキュメンタリー映画『Infinito』上映とゲストによるアフタートークが開催される。各回定員190名、参加費無料。当日10時より1階総合受付にて整理券を配布。※本邦初公開、日本語字幕付き。

・7月18日(金)17:00~19:30 ゲスト:イラリア・カンピオーリ氏(レッジョ・エミリア市立博物館写真部門キュレーター) ※伊日通訳付き
・8月24日(日)14:00~16:30 ゲスト:岡田温司氏(京都大学名誉教授)
・9月12日(金)17:00~19:30 ゲストは森岡督行氏(森岡書店代表)

開催概要

「総合開館30周年記念 ルイジ・ギッリ 終わらない風景」

開催日:2025年7月3日(木)~9月28日(日)
開催時間:10:00~20:00(入館は閉館30分前まで)
休館日:月(月が祝・休の場合は開館、翌平日休)
会場:東京都写真美術館(東京都目黒区三田1-13-1 恵比寿ガーデンプレイス内)
アクセス:JR恵比寿駅から徒歩7分、地下鉄日比谷線恵比寿駅から徒歩10分
入場料:一般800円、学生640円、高校生・65歳以上400円
※中学生以下および障害者手帳をお持ちの人とその介護者(2名まで)は無料。
※8月14日(木)~9月26日(金)の木・金17:00~21:00はサマーナイトミュージアム割引(学生・高校生無料、一般・65歳以上は団体料金、要証明書)。

【問い合わせ先】
東京都写真美術館☏03-3280-0099
公式HP  https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-5073.html

 

取材・文=前田真紀 画像提供=東京都写真美術館