江戸の流行を生み出した時代の風雲児に迫る

礒田湖龍斎筆「雛形若菜初模様 丁字屋内ひな鶴」大判錦絵 安永4年(1775)頃 『東京国立博物館』蔵 前期展示4/22~5/18。
礒田湖龍斎筆「雛形若菜初模様 丁字屋内ひな鶴」大判錦絵 安永4年(1775)頃 『東京国立博物館』蔵 前期展示4/22~5/18。

江戸時代の傑出した出版業者であった蔦屋重三郎(1750~97)。喜多川歌麿、東洲斎写楽(とうしゅうさいしゃらく)といった、現代では世界的芸術家とみなされる浮世絵師を世に出したことで知られている。蔦重は江戸時代後半に貸本業から身を起こし、社会状況の変化をつぶさにとらえ、メディア王にのぼりつめた。

特に人物の顔を大胆にクローズアップした「大首絵」の構図の手法により、歌麿はあらゆる年齢や階層の女性の心情を描き分け、写楽は歌舞伎役者の個性をとらえた。人々の内面を映し出した錦絵は、版元・蔦重の、そして浮世絵の人物表現の一つの到達点となった。

本展ではその活動をつぶさに見つめながら、天明、寛政(1781~1801)期を中心に、江戸の多彩な文化を展覧するもの。

浮世絵のみならず、黄表紙や洒落本(しゃれぼん)といった文芸のジャンルでも、時流をつかみ、数々のベストセラー作品を生み出した敏腕プロデューサーであり、稀代のマーケターでもあった彼の功績をたどっていく。

喜多川歌麿筆「歌撰恋之部 物思恋」大判錦絵 寛政5~6年(1793~94)頃 『東京都江戸東京博物館』蔵 後期展示5/20~6/15。
喜多川歌麿筆「歌撰恋之部 物思恋」大判錦絵 寛政5~6年(1793~94)頃 『東京都江戸東京博物館』蔵 後期展示5/20~6/15。
東洲斎写楽筆 重要文化財「三代目大谷鬼次の江戸兵衛」大判錦絵 寛政6年(1794)『東京国立博物館』蔵 後期展示5/20~6/15。
東洲斎写楽筆 重要文化財「三代目大谷鬼次の江戸兵衛」大判錦絵 寛政6年(1794)『東京国立博物館』蔵 後期展示5/20~6/15。

大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』(NHK)との連携にも注目

栄松斎長喜筆「四季美人 雪中美人と下男」大判錦絵 寛政4~6年(1792~94)頃 『東京国立博物館』蔵 前期展示4/22~5/18。
栄松斎長喜筆「四季美人 雪中美人と下男」大判錦絵 寛政4~6年(1792~94)頃 『東京国立博物館』蔵 前期展示4/22~5/18。

浮世絵黄金期と呼ばれる18世紀末の浮世絵界を代表する名品が一堂にそろうのとともに、もうひとつの大きな見どころが、話題の大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK)との連携だ。

会場では、蔦重が活躍した頃の江戸の街にタイムトリップしたような空間に、大河ドラマの世界を再現。蔦重が江戸時代後期の出版文化の一翼を担っていただけでなく、彼が創出した価値観や芸術性がいかなるものであったかまで体感できる空間となっている。

平賀源内作 重要文化財「エレキテル」木製彩色 江戸時代・18世紀 『郵政博物館』蔵 前期展示4/22~5/18(後期は複製を展示)。
平賀源内作 重要文化財「エレキテル」木製彩色 江戸時代・18世紀 『郵政博物館』蔵 前期展示4/22~5/18(後期は複製を展示)。
東洲斎写楽筆 重要文化財「市川鰕蔵の竹村定之進」大判錦絵 寛政6年(1794)『東京国立博物館』蔵 後期展示5/20~6/15。
東洲斎写楽筆 重要文化財「市川鰕蔵の竹村定之進」大判錦絵 寛政6年(1794)『東京国立博物館』蔵 後期展示5/20~6/15。

開催概要

特別展「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」

開催期間:2025年4月22日(火)~6月15日(日)
※会期中一部展示入れ替えあり。
開催時間:9:30~17:00(入館は~16:30)
※5月4日(日・祝)・5日(月・祝)および金・土は~20:00(入館は~19:30)
休館日:月・5月7日(水) ただし4月28日(月)・5月5日(月・祝)は開館。
会場:東京国立博物館 平成館(東京都台東区上野公園13-9)
アクセス:JR上野駅から徒歩10分、JR鶯谷駅から徒歩10分、地下鉄銀座線・日比谷線上野駅から徒歩15分
入場料:一般2100円、大学生1300円、高校生900円
※中学生以下、障がい者とその介護者1名は無料。

【問い合わせ先】
ハローダイヤル☏050-5541-8600
公式HP  https://tsutaju2025.jp/

 

取材・文=前田真紀  ※画像は主催者提供