ヨコハマという街の歴史と文化をコレクションとともに紹介

本展は蔵屋美香氏が『横浜美術館』館長に就任後初となる、蔵屋氏自らの企画による展覧会。「横浜」をキーワードに、名作コレクションの数々を新たな視点で紹介してみせる。

リニューアル後の活動理念の柱である「多様性」を観点とし、横浜にまつわる作品の中でこれまであまり注目されることのなかった“開港以前の横浜に暮らした人々、女性、子供、またさまざまなルーツを持つ人々”の存在に光を当てていく。

広報担当者は、「セザンヌ、ピカソ、マグリットや奈良美智など当館コレクションの名作が久々に勢ぞろいするほか、リニューアルしたグランドギャラリーには、この展覧会に向けて委嘱した檜皮一彦(ひわかずひこ)氏の新作もお目見えします。また、小さなお子さまと一緒にアートを楽しめるコーナーも設けました。さまざまな時代の多種多様な美術を通して見るヨコハマには、新しい発見がたくさんあります。そんなヨコハマに、ぜひ会いに来てください」と見どころを語ってくれた。

ルネ・マグリット《王様の美術館》1966年 油彩、カンヴァス 130.0×89.0cm 『横浜美術館』蔵。
ルネ・マグリット《王様の美術館》1966年 油彩、カンヴァス 130.0×89.0cm 『横浜美術館』蔵。

港町ヨコハマの苦難と光の歴史を8章に分けてたどる

片岡球子 《緑蔭》1939年 紙本着色、日本画 194.0×286.0cm 『横浜美術館』蔵(片岡球子氏寄贈)。
片岡球子 《緑蔭》1939年 紙本着色、日本画 194.0×286.0cm 『横浜美術館』蔵(片岡球子氏寄贈)。

開港前の横浜での人々の暮らしぶりと、安政6年(1859)の開港後、西洋風の街並みや各国の人の姿を描いた錦絵などを紹介する第1章、2章。ここでは国内外から向けられる視線を意識しつつ、「見られる/見せる」都市として出発した様子を伝えていく。また第3章では、開かれたあとに外国人向けのみやげものや輸出品として多く作られた絵画や工芸品などを紹介する。

その後大正12年(1923)の関東大震災をはじめ、世界恐慌、横浜大空襲といくつもの苦難を乗り越えた横浜。1983年にはみなとみらい21地区の開発がスタートし、丹下健三の設計による『横浜美術館』は1989年の「横浜博覧会(YES’89)」にあわせ開館した。第7章では、開館前後に収蔵され、“横浜市民”となって30年以上親しまれてきたコレクションの名品を、新しい視点から読み直していく。

ラストを飾る第8章では、『横浜美術館』の新しい船出を祝し、奈良美智氏などの2010年代以降の作品と、アーティストの檜皮一彦に制作を委嘱した新作を紹介。子供のために作品を選び、見やすいよう工夫した展示「子どもの目でみるコーナー」も登場する。多様性を切り口に、横浜に生きるさまざまな生の姿を描き、子供たちに未来への希望を託す構成となっている。

ペーター・ベルンハルト・ヴィルヘルム・ハイネ(伝)《ペルリ提督横浜上陸の図》1854年以降 油彩、カンヴァス 53.3×80.5cm 『横浜美術館』蔵(原範行氏・原會津子氏寄贈)
ペーター・ベルンハルト・ヴィルヘルム・ハイネ(伝)《ペルリ提督横浜上陸の図》1854年以降 油彩、カンヴァス 53.3×80.5cm 『横浜美術館』蔵(原範行氏・原會津子氏寄贈)
奈良美智 《春少女》 2012年 アクリル絵具、カンヴァス 227.0×182.0cm 『横浜美術館』蔵(C)YoshitomoNara。
奈良美智 《春少女》 2012年 アクリル絵具、カンヴァス 227.0×182.0cm 『横浜美術館』蔵(C)YoshitomoNara。

アーティスト・インタビュー「映画と空間:アーティスト/映画監督、クリス・チョン・チャン・フイに聞く」開催

2月8日(土)14時~15時30分、関連イベントとしてアーティスト・インタビュー「映画と空間:アーティスト/映画監督、クリス・チョン・チャン・フイに聞く」が「おかえり、ヨコハマ」展 展示室で開催。本展に横浜・黄金町で滞在制作を行った《HEAVENHELL》(2009年)を出品中のクリス・チョン・チャン・フイ。黒澤明監督作品《天国と地獄》(1963年)に触発された本作をはじめ、映画と都市空間の関係について話を聞く。和英逐次通訳つき。定員なし、無料(当日観覧券要)。申し込み不要。

開催概要

「横浜美術館リニューアルオープン記念展 おかえり、ヨコハマ」

開催期間:2025年2月8日(土)~6月2日(月)
開催時間:10:00~18:00(入館は~17:30)
休館日:木(ただし3月20日は開館)、3月21日(金)
会場:横浜美術館(神奈川県横浜市西区みなとみらい3-4-1)
アクセス:JR桜木町駅から徒歩10分、みなとみらい線みなとみらい駅から徒歩3分
入場料:一般1800円、大学生1500円、高校・中学生900円、小学生以下無料
※障がい者手帳を持参の人、および付き添いの人1名は無料。

【問い合わせ先】
横浜美術館☏ 045-221-0300
公式HP  https://yokohama.art.museum/exhibition/202502_welcome_back_yokohama/

取材・文=前田真紀  画像提供=横浜美術館