江戸の人々を支えた上水道、玉川上水はどのように作られたのか?

『江戸上水配水図』(千川家文書・練馬区指定文化財) 享保2~3年(1717~1718)頃  練馬区立石神井公園ふるさと文化館蔵。
『江戸上水配水図』(千川家文書・練馬区指定文化財) 享保2~3年(1717~1718)頃 練馬区立石神井公園ふるさと文化館蔵。

今から370年前の承応3年(1654)に江戸市中に水を送るために作られた上水道、玉川上水。多摩川の羽村取水堰から水を引き、現在の四谷区民センターの場所にあたる四谷大木戸水番所までの43㎞は川のように地上を流した。その先の江戸市中は地下に石や木でできた水道管を通して配水したという。

四ツ谷大木戸水番屋構之図『羽村臨視日記』 国立公文書館蔵。
四ツ谷大木戸水番屋構之図『羽村臨視日記』 国立公文書館蔵。

新宿区内には上水の水質・水量の管理を行う水番所のほか、神田上水への助水堀や渋谷川への余水吐(よすいばき)、四谷見附の掛樋(かけひ)など、多くの関連施設があった。当時の人たちがどのように工夫を凝らして、玉川上水を引いたのか? その歴史や江戸時代の水道利用について、古文書や絵図、発掘調査の成果などを通して紹介する興味深い内容になっている。

『新宿歴史博物館』の後藤さんは、「玉川上水といえば、玉川兄弟の活躍が注目されがちですが、開発時の状況には多くの謎があります。今回は、現在の西新宿にあたる角筈(つのはず)村の資料を通して、玉川上水の開発状況や開発後の流域の村の様子も紹介します。今も昔も変わらぬ水道の重要性と、それを作り維持するしくみや人々に思いを馳せ、地域の再発見を楽しんでいただけましたら幸いです。また、この秋は東京都水道歴史館、文京ふるさと歴史館でも江戸の水道に関する展示を開催しており、3館をめぐるスタンプラリーも実施しています。江戸の水道の世界をたっぷりとお楽しみください」と見どころを語ってくれた。

上水道づくりのために人々が奮闘した時代に思い馳せる機会となりそうだ。

『角筈村寅之御検地名寄帳』渡辺家文書 延宝2年(1674)4月  慶應義塾大学文学部古文書室。
『角筈村寅之御検地名寄帳』渡辺家文書 延宝2年(1674)4月 慶應義塾大学文学部古文書室。
井戸側 新宿区蔵。
井戸側 新宿区蔵。
玉川上水についてわかりやすく書かれた子供用パンフレットも用意。
玉川上水についてわかりやすく書かれた子供用パンフレットも用意。

開催概要

特別展「江戸の水道 玉川上水」

開催期間:2024年10月5日(土)~12月1日(日)
開催時間:9:30~17:30(入館は~17:00)
休館日:10月28日(月)・11月11日(月)・11月25日(月)
会場:新宿歴史博物館 地下1階企画展示室(東京都新宿区四谷三栄町12-16)
アクセス:地下鉄丸ノ内線四谷三丁目駅から徒歩8分、地下鉄新宿線曙橋駅から徒歩8分
観覧料:一般300円、中学生以下無料

【問い合わせ先】
新宿歴史博物館☏ 03-3359-2131
公式HP  https://www.regasu-shinjuku.or.jp/rekihaku/news/109376/

 

取材・文=前田真紀 画像提供=新宿歴史博物館