見栄えと旨さに二度びっくり!『第二宮嶋庵境野支店』[群馬県桐生市・ひもかわ]
桐生名物の極広ひもかわは、店ごとに競いエスカレートして当店では何と15㎝幅。「食感をよくするために薄くのばすと切れやすい。うどんの3倍手間がかかります」とご主人は苦笑い。だから店のメニューにないので直接注文しよう。桐生は織物と共にうどん屋も栄えたという。「父の代には織り子さんの夜食にと、工場に40人分の出前をしていました」。
『第二宮嶋庵境野支店』店舗詳細
注文後に打つ究極の手打ち麺『三升屋』[群馬県渋川市・水沢うどん]
群馬県3大うどんの中でも特に歴史あるのが、水澤寺参道で400年前から食べられた水沢うどんだ。榛名山の清涼な水で練った透明感のあるうどんで、現在は約1kmの道筋に13軒が点在している。今も手打ちを貫くこの店では、メニューはもりとかけの2種類だけ。ご主人は、客の注文を受けてから生地を打って茹で上げるので芯が残らず、弾力ある食感に。
『三升屋』店舗詳細
地元の昔話にちなんだ創作うどん『花山うどん』[群馬県館林市・館林のうどん]
その昔は館林城主にうどんを献上し、乾麺は贈答品として発達。皇后陛下美智子様のご実家である醤油醸造業の正田家が、明治 33年に市内で製粉会社(現在の日清製粉)を興すなど、気品あるうどん歴の町だ。当店 5代目は小麦粉に詳しく、地元産つるぴかりときぬの波を繊細に調合してうどんを打つ。「分福茶釜の釜玉うどん」は具材豊か。
『花山うどん』店舗詳細
県内産の小麦で打つ昔ながらの味『中央食堂』[埼玉県加須市・加須うどん]
利根川流域の江戸時代からの小麦どころで、今もうどん屋が多い。地元の不動ヶ岡不動尊總願寺には、約300年前に館林城主から饂飩粉を贈られたお礼状があり、うどん歴の古さを裏付ける。こちらでは、県内産小麦あやひかりを練り込んだ手打ちうどんを、野菜入りつけ汁でいただける。家庭料理のような優しい味わいにほっこり。
『中央食堂』店舗詳細
歴史にあやかり、開運できるかも!?『藤エ門』[栃木県小山市・小山うどん]
縁起の良い商品名は400年前、北上する徳川家康が小山の本陣で軍議を開いて引き返したため、関ケ原の戦いで大勝した「小山評定」に由来しているのだ。ではうどんをいただき、開運をば。大ぶりのつけ汁には豚肉やネギなどが豪快に盛られ、地元産小麦イワイノダイチのなめらかなモチモチ感が活きるうどんを付けて食せば、まさに至福である。
『藤エ門』店舗詳細
馬肉とキャベツの意外な調和『くれち』[山梨県富士吉田市・吉田のうどん]
富士山が迫る吉田の町は、かつて織物が盛んだった。「朝から晩まで機織りをする女房を気遣い、男が夕食のうどんを打ったんです」とご主人。そんなわけで吉田のうどんはごつい。麺は太くて硬めだし、馬肉とキャベツと具も独特。やみつきになる。味噌と醤油を合わせた汁に、唐辛子とゴマなどをすった「すりだね」で調えている。
『くれち』店舗詳細
煮込んで味わうお袋の小麦食『ほうとう処 いしはら』[山梨県甲州市・ほうとう]
うどんが小麦食文化のハレならば、麺を茹でずに直接鍋で煮込む「すいとん」や「おきりこみ」などは家庭で常食するケの料理。「ほうとう」もそれで「かぼちゃや芋などと共に大鍋で味噌味の汁で煮込んで、家族で取り分けたものです」と奥さん。かつてこの家で暮らしたお姑さんに教わった味わいは、体を芯から優しく温めてくれる。
『ほうとう処 いしはら』店舗詳細
取材・文=眞鍋じゅんこ 撮影=鴇田康則