自家製粉の珍しきそばとスイーツで堪能『一休庵』
懐石料理の腕を磨いた3代目店主、内野和彦さんが心がけるのは「素材の味」。かつて北海道で自家栽培した経験から、十割そばは自家製粉の粗めの粉に細かく碾いたそば粉をつなぎにして手打ち。コシがしっかりあり、香りが鼻び 腔くうを抜けていく。本かつお節に宗田がつお、さば節を加えたそばつゆも風味豊かだ。せいろもいいが、稀有な玉子だれもいい。「月見の改良版」と笑うが、2個入った温泉玉子&つゆがそばにまったりと絡んでまろやか。そば粉や実を加えた手作りおやつも秀逸。そば茶と味わえば、そばの甘みが口中でふくらむ。
『一休庵』店舗詳細
そば前から甘味までじっくり味わいたい『深大寺そば きよし』
初代の孫にあたる店長の和地弘樹さんが、京懐石の職人と手を携え、4年前にリニューアル。北海道産石臼碾きの一番粉で細めの二八を手打ちする。そばつゆの出汁は本かつお節のみ。かえしと合わせてから寝かせ、味をグッと引き締めている。花のように別皿に盛った鴨せいろなら、鴨をアテにして飲むのもいいが、そばつゆで味わえば鴨脂が旨味を深め、そばの香りを引き立てる。キスやハゼもお目見えする江戸前天ぷら、ニシンにもファン多く、長尻必至。
『深大寺そば きよし』店舗詳細
行列になるほどの人気店『湧水』
「そばはシンプル。だからこそ、奥深い」と、2代目の児玉友輔さんは、そば屋から専業そば農家に転身した『赤城深山ファーム』に惚れて九割を用いる。碾き具合を変えた粉が配合され、「このそばは、うちのそばつゆによく合うんです」。祖母が始めた『深水庵』の味を継承する辛めのつゆにつければ、コシ強く、喉越しつるり、香味ふわっ。また食後にうれしいのが、そば湯を用いたそばようかん。そばの甘皮粉入りとの2層であんこをサンドし、舌が喜ぶ。
『湧水』店舗詳細
そば粉を使った料理も揃う『松葉茶屋』
神代植物公園にほど近く、高い木々に囲まれた抜群のロケーション。三代目・石川和之さんは、池波正太郎の小説に出てくる江戸のそば屋の世界観に憧れ、そば前を強化するように。約200年前に普及し、今では稀少な「江戸甘味噌」を用いるそば味噌、そばがき、そば揚げ餅など、そば粉を使った料理が揃う。そばは細打ちの江戸風。丁寧に殻を取ったむき実を挽く、青みがかった色味が涼やかだ。
『松葉茶屋』店舗詳細
オツなつまみと升酒でよい気分『そばごちそう門前』
左党ならずともぜひ味わいたいのは、東京の地酒、澤之井原酒の升酒700円。小さなつまみ付き、という粋な計らいだ。酒飲み心をそそるアテもとりどり。それもそのはず、名物の門前そば1050円の具から派生した椎茸のつけ焼き、岩手産南蛮味噌を和えたモツなどは、酒を嗜むお客のリクエストから生まれた。締めには、北海道の契約農家から取るソバで打つ一枚を。つゆをそば湯で割れば、カツオのみのダシがふくよかに広がる。
『そばごちそう門前』店舗詳細
(クレジット)
取材・文=沼由美子、佐藤さゆり(teamまめ) 構成=前田真紀 撮影=オカダタカオ