【古書】りんてん舎[三鷹]
日常からひとつ駒を進めるような本を
2019年3月オープン。詩や短歌、俳句を核として海外文学や人文思想などの分野に力を入れている。店主の藤田裕介さんは20代のころ自分の枠組みにないものが読みたいと古書店を巡るようになり、尾形亀之助の詩に出会った。「詩を読むことは日常生活とは別の生を歩むことで、よい詩を読むとひとつ駒を進めたような感じがします」とその魅力を語る。
棚の本の並びは、ゆるやかにジャンル分けがされているが、ときにその流れを断ち切るような一冊が潜んでいて油断ならない。日々の生活に思いがけない刺激と転換をもたらす本が、きっと見つかる。
『りんてん舎』店舗詳細
【古書】水中書店[三鷹]
雑念を払ってひたすら本を選ぶ空間
開店時から力をそそぐ詩、短歌、俳句の品揃えは今や棚7本分。「他のジャンルにはないエネルギーがあります」と店主の今野真さんは話す。とはいえ詩歌専門というわけではなく、文芸、芸術から絵本や漫画まで、日々の生活に寄り添う本が程よく並ぶ。どの書棚も本の背がぴしっと揃い、抜き差ししやすいように余裕があり、選ぶことに集中できる。本を大切に扱う店主の思いが随所に光っている。
『水中書店』店舗詳細
【古書】おへそ書房[武蔵境]
日々、読む本を求めて立ち寄る街の書店
駅から続く商店街にあって、人通りが絶えない。店頭に並ぶ本を物色する人、店内に入ってじっくり選ぶ人、さまざまな年齢の人たちが生活の一部として思い思いに本を楽しんでいる。開店時は店主の小宮健太郎さんの蔵書から始まったが、お客さんからの買い取りだけでよい本が揃うようになり、「今はどんどん自分を消していきたい」という。店主でさえ与(あずか)り知らないところで本が回り、流れていく。
『おへそ書房』店舗詳細
【新刊・古書】よもぎBOOKS[三鷹]
非日常の体験ができるのんびり空間
店内に一歩入ると、穏やかな空気が流れている。一方の壁面には 色とりどりの絵本の表紙が並び、 見本として気軽に手に取ることができる。店主の辰巳末由さんが絵本を選ぶ視点は「子供目線というより、デザイン性があって大人が見ても楽しめるもの」。親世代に向けて、文芸や人文、哲学の本も多く置いている。家族連れでも、 ひとりでも、それぞれの本を探し、 選ぶ時間を過ごす楽しみがある。
『よもぎBOOKS』店舗詳細
【古書・喫茶】藤子文庫[三鷹]
思わずニヤけるささやかな遊び心
もと和菓子店だったという建物は、庇(ひさし)に暖簾(のれん)に引き戸と、和風な外観とのギャップが面白い。店に入ると、目につくのは多彩な文庫本。かと思えば、歴史に関する本なら専門書も小説も交えて年代順に並べた“年表棚”に、ジャンル問わず黒い背表紙の本だけを並べた“黒い棚”などとささやかな遊び心があり、思わずニヤリ。飲食業経験者の鈴木博己さんが淹れるコーヒーをはじめ、こだわりのドリンクで憩うこともできる。
『藤子文庫』店舗詳細
【古書】上々堂[三鷹]
本探しの運と腕を試してみる?
高い天井と重厚な本棚に囲まれ、古い図書館のよう。本棚の分類は大ざっぱながら、絵本から一般書に家事本、専門書に宗教本までと多岐にわたり、古本ライターの選書棚や絶版文庫の棚も見逃せない。個人的に気になるのは充実する300円・500円均一の棚。「『何か読みたい』と来られるお客さまに安く提供したくて。でも古書好きも唸(うな)る掘り出し物も紛れているんです」と店主のいしまるのりひでさん。本探しの運と腕を試される店なのかも。
『上々堂』店舗詳細
【古書】古本はてな倶楽部[武蔵小金井]
訪れる人の「?」に応えたい!
「お客様の“?”の解決に役立てれば」との思いで名付けた、2013年オープンの店。住宅地につき子連れママの来店も多いため、主婦向けの本や児童書は万全。「自分の好みが出ないよう、入った本は取捨選択せず並べる」を心がけ、趣味、文学、美術書に雑誌などと、広く雑多な分野がバランスよく収まる。と思いきや、建築書の棚が広いような?「建築が好きなのでつい(笑)」と店主の伊東健太さん。店主の好みもやっぱり見えなきゃ!
『古本はてな倶楽部』店舗詳細
【古書・雑貨】尾花屋 [小金井]
漫画から歴史まで 地域に愛される本屋さん
パン屋さん、鮮魚店、精肉店といった生活の店が軒を連ねる、こぢんまりとした商店街の一角。近隣の人が買い物のついでに気軽に立ち寄る。「品揃えは専門的にしないようにしています。敷居を低く、ふらっと来て好きなことが見つかるように」と店主の尾花雄馬さん。
文庫・新書の棚は、敷居が高い岩波文庫も、元値が高い講談社文芸文庫も、すべて200円均一。探求心と知識欲が一度に満たされる。
『尾花屋 』店舗詳細
駅前チェーン店も見逃せない! 街と本をつなぐ、いちばん身近な存在
【新刊】啓文堂書店 三鷹店[三鷹]
本に親しむ土地柄に全力で応える地域一番店
2003年のオープン以来、文芸と人文の単行本が売れている。「情報や教養の源としての本を求めるお客様に支えられています」と店長の大塚昌宏さんは話す。
そうした地域の需要に応えるべく新刊案内には必ず目を通し、新聞の書評欄に掲載された本は常設の棚に2カ月は置くようにしている。なにより売り場の本の並びに乱れがなく探しやすい。街と書店が支え合う幸福な関係が成り立っている。
『啓文堂書店 三鷹店』店舗詳細
【新刊】くまざわ書店 武蔵小金井北口店[小金井]
ドン・キホーテの地下に広がるワンダーランド
広大な地下空間にあらゆるジャンルの本が並ぶ光景は壮観。雑誌、文庫、単行本、漫画など売り場のあちこちで小さなフェアが開催されていて、書店員さんの思考や熱意に触れるたびに自らの知識欲が刺激される。ひとつのテーマに沿って、新刊だけでなく既刊の本や、小規模出版の本も埋もれることなく置かれているので発見も多い。一冊の本からゆるやかにつながる読書の楽しさを実感できる。
『くまざわ書店 武蔵小金井北口店』店舗詳細
取材・文=屋敷直子 撮影=丸毛 透、本野克佳
『散歩の達人』2021年1月号より