欧州アンティークと味わう極上の時間『Majorelle(マジョレル)』【三軒茶屋】
高い天井からアール・デコ、アール・ヌーボーのランプが無数に下がり、カトラリー、ビンテージアクセ、クリスタルグラスをやさしく照らす。「オールドバカラを中心に揃えています」と、店主の本田晶子さんは贅沢(ぜいたく)にもカフェで味わうプリンにも一つ一つ柄が異なるバカラのシャンパングラスを使用。味わうとむっちり固め。カラメルの苦味が効いて、これぞクラシック!と膝を打つ甘さだ。カフェオレボウルを両手で抱えながら優美な時間に浸りたい。
『Majorelle』店舗詳細
路地の先で音とアートとコーヒーを『CAL COFFEE CLUB(キャル コーヒー クラブ)』【下北沢】
奥まって立つがゆえ、穴場感ハンパなし。特注の真空管アンプを通したジャズレコードの音が心地よく、季節で入れ替える風景画や猫の置物にほっこり和む。「店の名前は初代の茶トラから取ったんですよ」とは、念願のカフェを始めた土井真理子さん。不揃いのアンティーク家具に席をとり、ハンドドリップコーヒーをすすれば、深い香り。軽やかな口当たりのレアチーズケーキとよく合う。「亡き夫が大好きだった」蒸し焼きプリンや週末の夜カフェも人気だ。
『CAL COFFEE CLUB』店舗詳細
色香をまとう空間で香味を堪能『drip』【池尻大橋】
狭い階段を上り、扉を開くと、木調で設えた空間にため息。デザイン事務所でもあり、洋書やアート雑誌にクリエーターたちが手を伸ばす。コーヒーはエチオピアとブラジルの特注ブレンドで、コクがあるのに果実のような甘酸っぱさ。この味わいに合うよう、店長の小川莉咲(りさ)さんが工夫を凝らすのが自家製スイーツだ。しっとりしたチーズケーキは、焼く直前にパルミジャーノレッジャーノを削り入れ、鼻に抜ける濃厚な香りが魅惑的。じっくり味わいたい。
『drip』店舗詳細
飲みもの片手にまったりと憩う場所『喫茶サロン ことたりぬ』【若林】
ストーブが赤々と燃え、看板が点っていたら営業中。民俗学に古い食物本、漫画などの本や、棚に並ぶマスター手縫いのコロナくんを手にとって眺めるのが楽しい。深煎りオールドビーンズのコーヒーは苦味と香りが深く、抹茶茶碗で供すミルク珈琲にはフワッフワの泡がこんもり。レモン香るビスケットサンドなどの食べものは売り切れ御免なれど、「近所で買って持ち込んでもいいですよ」とマスター。できる飲みものなら作ってくれるスタンスも心憎い。
『喫茶サロン ことたりぬ』店舗詳細
みずみずしい香りと甘みが重奏的『喫茶 一房(ひとふさ)』【下北沢】
ハンドドリップの深煎りコーヒーをのんびり味わうだけでもいい。けれど、この店を訪れたならフルーツサンドは外せない。店主の松田剛毅(よしき)さんは店先に並ぶフルーツを見て「色が合うなら味も合う。あとは思いつきで」とコンビネーションを工夫。洋梨には、マスカルポーネ入りの生クリームとラム酒香るカスタードを。柿には、岩塩で味を引き締めた粒あんと黒ゴマを。フルーツの香りと甘さがより際立ち、口中のハーモニーに誰もがうっとり目を細める。
『喫茶 一房』店舗詳細
取材・文=林さゆり 撮影=加藤熊三
『散歩の達人』2025年1月号より