高田馬場がリトルヤンゴンといわれて久しい。90年代以降、同じ西武新宿線の中井駅付近に多かったミャンマー人が移り住むようになり、エキゾチックな店も増えていった。日本における韓国カルチャーの中心である新大久保、リトルチャイナを有す池袋に近いという立地もあったのだろう。年々、アジア人の数が増え、ハイレベルな各国料理の店が立ち並ぶように。日本の居酒屋ではお目にかかれないアジア各地の蒸留酒を現地料理と一緒にいただける、なんとも幸せな状況が生まれている。早稲田大学のお膝元で日本語学校もあるため留学生も多いが、「店には中国や韓国の人だけでなく、他のアジアの国の人、欧米人もいらっしゃいます」と『アプサラ レストラン&バー』のジャナカさん。最近は、さらに人種の多様化が進んでいるようだ。
一方、『馬記 蒙古肉餅』の店主夫妻のように、他のアジア人街から移ってくるケースもある。川口と池袋でもモンゴル料理の店を出していた金さん夫妻は「あまり日本語は得意じゃなくて」と謙遜するが、料理からも店内の活気からも、言語の壁をものともしないエネルギッシュさが感じ取れる。さらに「アジア各国のお客さんが来てくれます。日本人の常連さんも多くて、みんなタイが好きなんです」とは『タワン・タイ』、マライさんの言葉。目下、常連客とタイ旅行を計画中と彼女はにこやかに教えてくれた。アジア人が多い街は、気づけば“アジア好き”が集う街としても進化しているのだ。
【スリランカ】琥珀色のアラックで乾杯! 『アプサラ レストラン&バー』
ココヤシを原料とするアラックは、アジアや中東の国々で飲まれる蒸留酒。スリランカでも定番の味だ。店主のジャナカさんは「パーティーなどでよく飲みますね。あとはお見合いのときとかね」と笑顔で教えてくれた。フルーティーな香りが口に広がり、スパイシーなスリランカ料理の味を引き立てる。他にはハイボールや、コーラ割にマンゴー割などカクテルも! 異国情緒あふれるお酒に気軽に挑戦できる。
『アプサラ レストラン&バー』店舗詳細
【モンゴル】酒好きも驚く強〜い酒、あります。『馬記 蒙古肉餅(マーキー モウコローピン)』
珍しい羊料理も豊富で、本場の料理目当てに来る常連も多く、店内にはあらゆる言語が飛び交う。世界三大蒸留酒に数えられる白酒(ぱいちゅう)は中国に加えてモンゴルでもおなじみ。42度となかなかの度数で、しかもストレートが基本とは。羊肉と一緒にいただくと本当にモンゴルの草原で宴を開いている気分……早くも酒が効いてきたようだ。実は、さらに強い白酒(56度)もあるんです。おそろしや。
『馬記 蒙古肉餅』店舗詳細
【タイ】タイ焼酎が激辛料理にマッチ。『タワン・タイ』
早稲田通り沿いにある『タワン・タイ』は、日本に来て30年、ずっとタイ料理に関わってきたというマライさんのお店。「ジャスミンライスが原料なのでやさしい味です」と勧められたモンシャムは、タイで人気の焼酎だ。爽やかな辛さの本格タイ料理と合わせるならソーダ割が相性抜群。甘くてさらりとした飲み心地がクセになる。青唐辛子の辛さにヒーヒー言いながらタイならではのお酒を楽しみたい。
『タワン・タイ』店舗詳細
/営業時間:11:00~14:30LO・17:00~22:30LO/定休日:不定/アクセス:JR・私鉄・地下鉄高田馬場駅から徒歩4分
取材・文=半澤則吉 撮影=丸毛 透
『散歩の達人』2024年1月号より