職人の矜持(きょうじ)が生んだ豊富なメニュー『うなぎや せきの』[浦和]
濃厚な旨味のインパクト、雑味のなさ、ふっくらした食感の穏やかさを併せ持ち、箸を持つ手が止まらない。板場の桶で泳いでいるのは四万十川で少しずつ餌を与え、1年半かけて育てられた希少な四万十うなぎ。関東で食べられる店は珍しく、職人歴50年の店主・関正彦さんがその日使う分だけさばく。ヒレやバラなど希少部位を用いた串は「残さず使い切り、おいしく提供したい」との心意気の表れ。
『うなぎや せきの』店舗詳細
うなぎを身近な存在にする若手の奮闘『うなぎ 瀧澤』[浦和]
串を持つ真剣な表情とは打って変わって、「うなぎを焼くのが楽しくて仕方がない」と笑顔が弾ける店主の瀧澤まゆみさん。「普段使いできる店」を目指し、2400円以下のメニューも用意する。うなぎ本来の風味が感じられるのは、地焼き後の下処理で余分な脂を適度に洗い落としているから。長めに蒸し、柔らかく仕上げた蒲焼きを米と共に頬張ると、舞い上がるたれの香りが軽く鼻先を撫でる。
『うなぎ 瀧澤』店舗詳細
イタリアン出身店主の工夫が光る『うなぎ ときわ』[北浦和]
店主の相田友明さんは約25年間イタリア料理店を営んでいたが、病気で倒れ閉業。リハビリ後に縁あってうなぎ屋で働き、「前の店でも鮮魚を使っていた」ことからうなぎを扱う技術も会得でき、2018年に独立した。調味料ほか、ステンレス製蒸し器で骨まで柔らかくするなど、イタリアン畑での経験を存分に応用。たれには川越・弓削田(ゆげた)醤油の木桶仕込み醤油を煮込まずに使い、まろやかさを出す。
『うなぎ ときわ』店舗詳細
共水うなぎの真髄を感じよ『うなぎ 浜名』[浦和]
良質な水と餌で育った静岡の「共水うなぎ」。30年前、その味に惚れ込んだ店主の下谷地健二さんは「店ではこれ以外使わない」と決め今に至る。焦げ目を均等に付けるため、炭火の上で頻繁にうなぎを返し、甘さ抑えめのさらりとしたタレを付けさらに焼く。ふっくら炊かれた長野産特Aコシヒカリと一緒に頬張ると、皮と身の間の分厚い脂が、噛んだ瞬間プルンと弾けた。旨味が身と混ざり、食欲は増進、一気に平らげてしまう。
『うなぎ 浜名』店舗詳細
和せいろで蒸されたふっくらうなぎ『二代目 串長』[浦和]
店主の関正彦さんは、うなぎ一筋48年。「池で育てるところから、捌いて焼くまで、全部やった」と、笑う。四万十のうなぎを、蒸気をしっかり閉じ込めた和せいろで蒸し、炭火で香ばしく蒲焼に。同じく和せいろで炊いたごはんの上に2枚を重ねる。ふわり膨らんだ身は竹の香りを含み、旨味が倍増。また、人気のうな串も外せない。肝焼には7尾分の内臓が串打ちされ、濃厚な味と香りが後を引く。酒は常時約30種用意。十四代をおともに、舌鼓を打つ。
『二代目 串長』店舗詳細
(祝の場合要確認、12月31日休)/アクセス:JR浦和駅から徒歩8分
常に進化をやめぬ浦和最古の老舗『山崎屋』[浦和]
「伝えられた味わいを守りつつ、新しい試みも取り入れています」とは、店主の椎名さん。店の趣を時代に合わせて変化させる一方で、うなぎの味はブレない。愛知や九州など、四季折々で仕入れる新鮮な国産ウナギは、この道40年以上の職人が一枚一枚丁寧に焼き上げる。タレは醤油の味が引き立ち、甘さ控えめ。脈々と引き継がれてきた秘伝の味だ。ほろっと身が崩れつつ、魚本来の繊維質も感じられ、上品かつ力強い味わいが広がる。
『山崎屋』店舗詳細
取材・文=信藤舞子、高橋健太(teamまめ) 撮影=井上洋平、井原淳一