やわらかい身に個性派の甘辛タレ『東屋』

上うな重4280円。
上うな重4280円。

2006年から5 代目として腕をふるう店主の柿田准さんは、料理の幅を広げるため和食屋で修業。創業は明治の初め、昭和初期に現在の場所へ店を移した。すべて座敷席の店内は、黒光りした廊下や縁側の障子戸など、築90年の歴史の重みを感じさせる。脂を落とすため、炭火で白焼きにしたうなぎに創業当時から注ぎ足されたタレは個性派甘辛系。さっぱりとしたなかに、ピリッと辛みがアクセント。

店主の柿田准さん。蒸したうなぎを素早い手さばきで焼いてゆく。
店主の柿田准さん。蒸したうなぎを素早い手さばきで焼いてゆく。

『東屋』店舗詳細

住所:埼玉県川越市西小仙波町1-16-1/営業時間:11:30~14:00LO・17:30~19:30LO/定休日:木/アクセス:西武新宿線本川越駅から徒歩15分

川越鰻の伝統とともに品格ある味を慈しむ『小川菊』

上うな重4000円。
上うな重4000円。

文化4年(1807)に創業した、川越随一の老舗のうな重は、見目麗しく、ふっくらとした艶やかさ。そして秘伝のタレと熟練の焼きが織りなす、さらりとした甘味を備えた味わいが、長い歴史と伝統を物語るよう。「変えないために変えるんです」と、サラリと語る7代目ご主人が選び抜いた地元米との相性も絶妙だ。戦前までは近隣の旦那衆や文人墨客も集ったという大正末期の建造の木造建築には、どこか文化の香りも漂う。お店同様に大切に磨き上げてきた上品なうな重には、川越のうなぎの来し方があふれている。

一子相伝で受け継がれた秘伝のタレを使い、熟練の職人さんたちが焼き上げる伝統の味。(写真提供=小川菊)
一子相伝で受け継がれた秘伝のタレを使い、熟練の職人さんたちが焼き上げる伝統の味。(写真提供=小川菊)
大正生まれの木造3階建ては、蔵の街で柔らかな味を醸し出す。
大正生まれの木造3階建ては、蔵の街で柔らかな味を醸し出す。

『小川菊』店舗詳細

住所:埼玉県川越市仲町3-22/営業時間:11:00~14:00・16:30~18:30LO/定休日:木・不定休あり/アクセス:西武新宿線本川越駅から徒歩9分

懐かしい風情の中できりりとした味わいを『小川藤』

うな重 竹3300円。
うな重 竹3300円。

大正ロマン通りのにぎわいを折れ、住宅街の小道の先に、下町にありそうな懐かしさを感じる年季の入った店舗が現れる。「うなぎを高尚にしたくないんですよ」と笑う3代目ご主人。うな重のふたを開けた瞬間、フワッと醤油の香りが鼻をくすぐり、後から優しい香りがついてくる二段構え。表面の焦げ目には、見た目を超えた旨味が潜んでいる。甘みを抑えたエッジの効いたタレも「普通の材料ですよ」とさらりと言いつつも、常に工夫を怠らない。鰻裂きから焼き上げまでの全行程を、たったひとりで行い、厳しい目の行き届く範囲を守り続けている。

創業時から継ぎ足したタレで、皮と身の食感を大切に焼き上げる。
創業時から継ぎ足したタレで、皮と身の食感を大切に焼き上げる。
下町情緒あふれる木造家屋は、昭和初期に建てられた優しい佇まい。
下町情緒あふれる木造家屋は、昭和初期に建てられた優しい佇まい。

『小川藤』店舗詳細

住所:埼玉県川越市松江町2-3-1/営業時間:11:30~14 :30LO/定休日:火/アクセス:西武新宿線本川越駅から徒歩11分

さばきたての身を寝かせダレで極上に『うな吉』

上うな重3600円。並重3000円。
上うな重3600円。並重3000円。

慣れた手つきでうなぎをさばくのは店主の柳田勇(やなぎだいさお)さん。10年間の修業を積んだ末、開いた店は今年で34年。注文を受けてから生きたうなぎをさばき、焼き上げる。味に深みを出すために三日三晩じっくり寝かせたタレは、新鮮なうなぎの味に深みを増し、表面も艶やかにしてくれるという。最高なうなぎの味を引き出すためには労を惜しまない、それがこの道44 年の職人技だ。駅からは少し離れているが、バスに乗って行く価値はある。

使用するうなぎはすべて国産。
使用するうなぎはすべて国産。
タレをつけて焼く工程を3回繰り返し、味を染み込ませていく。
タレをつけて焼く工程を3回繰り返し、味を染み込ませていく。
普段は柔和なご主人だが、調理の際は一転、職人の顔へ。
普段は柔和なご主人だが、調理の際は一転、職人の顔へ。

『うな吉』店舗詳細

住所:埼玉県川越市宮元町35 -1/営業時間:11:00~22:00/定休日:水(祝の場合は営業)/アクセス:西武新宿線本川越駅から東武バス「神明町車庫」行き8分の「神明町」下車2分

柔らかさと香ばしさが口に広がる喜び『林屋川越店』

うな重 上3520円。
うな重 上3520円。

元米問屋という重厚な建物を入ると視界に飛び込んでくる、きびきび働く若いスタッフの姿が、気持ちをカジュアルに和らげてくれる。供されるのは、香ばしい皮が潜んでるとは想像も出来ない、見るからに柔らかな身のうな重。京都から取り寄せる山椒が、アクセントを添える。うなぎは川魚専門店である本店の養鰻場で吟味されたもの。白髪ねぎと大葉を乗せたさらしねぎ丼、ささがきごぼうやねぎと共に煮込んだうな玉丼など、アレンジメニューも嬉しい。蒲焼きの端にこんがり凝縮された味もじっくりと。

赤酒を使ったタレを用い、皮目の香ばしさを大切に焼き上げる。
赤酒を使ったタレを用い、皮目の香ばしさを大切に焼き上げる。
元米問屋という重厚な建物の中は、明るく落ち着いた雰囲気に。
元米問屋という重厚な建物の中は、明るく落ち着いた雰囲気に。

『林屋川越店』店舗詳細

住所:埼玉県川越市仲町2-4/営業時間:11:00~17:00/定休日:不定/アクセス:西武新宿線本川越駅から徒歩10分

活気あふれる空間も、うなぎを引き立てる隠し味『ぽんぽこ亭』

上うな重3600円。
上うな重3600円。

街道沿いの巨大たぬきに誘われて入ると、地元の常連や家族連れでにぎわう風景が広がる。愉快な店名は「お客さんにお腹いっぱい食べてもらいたい」という願いから誕生した。食欲をそそる照りは誰にも愛される甘みゆえ。山椒の実を自分で擦るひと手間がまた楽しい。小さな店を一代で広い大店に育てた先代が考案した秘伝のタレ、うなぎのために引いた地下水と、こだわりはそこここに。長いカウンターで、1日700を超える注文をさばく職人さんたちのチームプレーを楽しみつつ待つのも味のうち。名物の天重始め豊富なメニューも、好きなものを選んでもらおうというお客さん第一主義の現れだ。

広い厨房と大きな焼き場で、手際よく焼き上げる様子を目の前で見られる臨場感は格別だ。
広い厨房と大きな焼き場で、手際よく焼き上げる様子を目の前で見られる臨場感は格別だ。
川越街道沿いにある大狸は、いつでも笑顔で待っている。
川越街道沿いにある大狸は、いつでも笑顔で待っている。

『ぽんぽこ亭』店舗詳細

住所:埼玉県川越市藤間151-7/営業時間:11:00~20:00/定休日:火/アクセス:東武東上線新河岸駅から徒歩12分

取材=風来堂、高野ひろし 撮影=オカダタカオ