沖縄県は、肩こり腰痛頭痛に効く

東京砂漠に住んで10年。コンクリートジャングルの一角でパソコンに向き合う日々で、慢性的な肩こりと腰痛、頭痛に悩まされていた。あるとき思い立って沖縄へ行くと、なぜか治った。疲れは揮発性なので、沖縄のサンサンと照る日差しで体から抜けていったのかもしれない。旅行へ行けなくなって、しばらく。再び体がずしりと重たくなってきた。沖縄で癒やされたい。

そうだ、沖縄のアンテナショップへ行こう。

予算1000円!旅とは

我が家の電子レンジが壊れたことにはじまる。旅行に行けるその日まで残そうと決めていたお金が最新家電になってしまった。そのショックと出かけられないストレスが沼の化身になって現れて、私を飲み込む。節約と旅を両立できる場所を求めて、行き着いた先がアンテナショップだった。

ここでアンテナショップを巡る1000円旅、略して「せんたび」のルールを説明したい。

・予算1000円
・予算内ならなにを買ってもOK
・オーバーしたら、自腹

1000円ポッキリでご当地を堪能する品を買う。これだけだ。

スタッフさんが現地っぽさを醸し出している

沖縄のオーラをまとった渡嘉敷さん。
沖縄のオーラをまとった渡嘉敷さん。

迎えてくれたのは、スタッフの渡嘉敷(とかしき)さん。挨拶を交わすと沖縄独特のイントネーション。なんだか癒やされる。スタッフの皆さんも沖縄出身者か沖縄の沼にハマった人で構成されているそうで、その影響か店内に沖縄の空気が漂っている。

渡嘉敷さん:ようこそ! 『わしたショップ本店』は銀座の中でも古参組。当店でしか扱っていない名産もたくさんあり、沖縄の雰囲気を感じてもらえると思います。ゆっくり楽しんでいってくださいね。

なるほど、古参ということは沖縄の空気が長年蓄積しているわけか……。深く深呼吸をして、東京で一番沖縄に近い空気を吸ってみる。

渡嘉敷さん:本店ということもあり、お店も広く幅広い品揃えが特徴です。1階は主に食料品、地下1階は泡盛などのお酒と三線や、やちむんの器などの民芸品の売り場です。

渡嘉敷さんが説明してくれる横で、沖縄出身のおじちゃんが「これ、この前買ってよかったからまた買いに来たよ〜」と話しかけてくる。なんかいいぞ。

渡嘉敷さん:曜日によって入荷は異なりますが、1階の生鮮食品の売り場はなかなか近所のスーパーでは見かけない珍しいものが揃っています。沖縄そばのそばの麺やつゆはエリアごとに特徴があるのですが、こちらもいろんなバリエーションを用意しています。

 

どれもスタッフに聞けば、食べ方までレクチャーしてくれる。未知の食べ物にも出合えそうだ。

これ全部泡盛!
これ全部泡盛!
ヤンバルクイナって可愛くないのか……。
ヤンバルクイナって可愛くないのか……。

渡嘉敷さん:地下1階のお酒の品揃えも自慢です。担当スタッフが書いているお酒への愛あふれるポップもぜひ見てほしいですね。

アンテナショップ大手のわしたショップ、さすがのラインナップである。心の中で拍手した。

渡嘉敷さん:イートインコーナーもあり、さーたーあんだーぎーや沖縄風のてんぷらも揚げたてで食べられます。銀座へお出かけして疲れたからひと休みしにくるお客様も多いですね。

定番品はやっぱりコレ!

続いて、定番の人気商品を教えてもらった。

渡嘉敷さん:お店で一番人気があるのは、やっぱり紅芋タルトです。ほかにも雪塩ちんすこう、シークワーサーの果汁など、皆さんが旅行のときに沖縄土産として買うような商品が多いですね。思い出の品で美味しかったからまた食べようと、お買い求めいただいているようです。

パッケージのおばあのイラストもキュート。
パッケージのおばあのイラストもキュート。

渡嘉敷さん:個人的には沖縄の味噌を使ったみそクッキーがオススメです。味噌の風味が懐かしくて、いいんですよ。

こういう地元民に愛される菓子パンって、魅力的だよなぁ。
こういう地元民に愛される菓子パンって、魅力的だよなぁ。

店内を長時間かけて巡り、厳選した今回の1000円セットは……

私の沖縄県1000円セット

下記の通り!

ナーベラー 398円
かつおみそ 180円
オキコラーメン 67円×2
八重泉 ミニボトル(100ml) 331円

計1043円!

ナーベラーってなんぞや?とお思いの方も多いでしょう。まぁまぁ、慌てないで。

これが……

こうなります。

泡盛の八重泉はソーダ割りに。沖縄で知らない人はいない即席麺、オキコラーメンはひとつはラーメン、ひとつはおつまみでいただく。

ナーベラーは沖縄の言葉でヘチマのことなのだそうだ。沖縄では味噌汁や味噌炒めなどにして食べるという。渡嘉敷さんのアドバイスに従って、カレーと味噌炒めに挑戦してみた。おにぎりやディップに使われる、かつおみそは味噌炒めの味付けに使った。

どうだ、けっこう豪勢なおつまみたちではないか。

ナーベラーのカレーはイチからカレーを作るのが少し面倒だったので、レトルトのカレーと合わせてしばらく煮込んでみた。じゃくじゃくした心地よい歯ざわりを残したまま、身が少しトロリとしている。カレーの頭のようにつまみでいただくには、充分すぎる出来栄えだ。

豚肉を使うのはズルだ、なんて言わないでくれ。
豚肉を使うのはズルだ、なんて言わないでくれ。

味噌炒めはあれやこれや野菜を入れるより、シンプルに楽しむ。ナーベラーと豚肉、生姜の千切りを炒めてから、かつおみそで味付け。こっくりとした味噌味がお酒はもちろん、ご飯にも合いそうだ。

編集のシラタキがなぜかハブ酒を奢ってくれた。元気出して原稿を書けよというメッセージだろうか。
編集のシラタキがなぜかハブ酒を奢ってくれた。元気出して原稿を書けよというメッセージだろうか。

1000円で沖縄が味わえて、自宅にいるのにちょっと浮かれてきた。自炊もマンネリ化していたから、大変ありがたい。

待ちわびていた沖縄だ。1000円のみで満足できるわけがない。他に買ったものを紹介しよう。

1000円オーバー!はみ出し購入品

ゼブラパン194円。
ゼブラパン194円。

余裕で手のひらサイズを超えてくるゼブラパン。ご当地パンと聞けば、放っておけない。

ゼブラパンの名前の由来は横から見たしま模様から。黒糖とピーナッツバターが地層のようになっている。食べてみると、初めてなのになじみのある味がした。学生のときに買い食いしたパンの味に似ている。沖縄の学生はこれをランチやおやつに食べていたりするんだろうか。

かちゅー湯324円。
かちゅー湯324円。

飲んべえとしては見逃せなかった、かちゅー湯。かつお節と味噌を合わせた即席の味噌汁で、うちなーのスタンダードだ。かつお節がぶ厚めで存在感があり、噛むほどに出汁がにじむ。これは、二日酔いのとき用にストック!

夢中になって食べて飲んで、すっかり疲れを忘れた。でも、じんわり青い海と空が恋しくなってくる。旅行用の積立貯金を再開しなければ、と決意を新たに泡盛をあおった。

待っててね、沖縄!

『銀座わしたショップ本店』店舗詳細

住所:東京都中央区銀座1-3-9 マルイト銀座ビル1F・B1F/営業時間:10:30~20:00(パーラーは~19:00LO)/定休日:無/アクセス:JR有楽町駅から徒歩4分、地下鉄有楽町線有楽町駅から徒歩すぐ

取材・文・撮影=福井 晶

アンテナショップは一瞬で現地へ行けるワープ装置だ。なかなか遠くへ行きにくいこのご時世に、気兼ねなく旅をした気分になる。今回は池袋にある『宮城ふるさとプラザ』を訪ね、1000円ポッキリの旅に出る。
1000円で旅に出る。お金がなくても外食できなくても、アンテナショップへ行って目を閉じれば、もうそこは現地だ。日本橋にある『三重テラス』で取材をしたら、餃子と意外なドリンクの組み合わせに出合ってしまった。どんな旅になるのやら。