鶏の油を注ぎ、炎の中で焼きあげる
鉄板の上で湯気を立てる熱々の「名物ももやき」。コリコリとした食感の中からは旨味が詰まった肉汁があふれ出す。見た目こそ煤のような黒さがあるが、この表面の風味がまた絶妙なのだ。どうしてこれほどの味が出るのか、調理場を覗かせてもらって、その秘密を探ってみた。
まず、使用する鶏肉は全て宮崎県から仕入れた地鶏。30年にわたって信頼を預けている養鶏場から直送した鶏だ。その鶏のモモ肉を小口切りにし、2種類の塩で下味をつけ、備長炭の炭火で焼きあげる。その途中で、鶏の油を回しかけると一気に炎が立ち上がる。この強い炎の中で燻し焼きにすることで、炭の香りがつき、鶏の油と渾然となって旨味が出るのだ。
さらに肉汁を内側に閉じ込めるので、鶏内部の旨味が逃げない。
「おやどり」「ひなどり」を食べ比べてみて
この名物ももやきは「おやどり」と「ひなどり」、「ひなどりバターペッパー」の3種類がある。この「おやどり」と「ひなどり」の味の違いはどこにあるのか。店長の熊木礁太(くまきしょうた)さんに聞いてみた。
「これは本当によく聞かれます! どちらがおいしいかはお好み次第ですが、おやどりの方が飼育期間が長いぶん、肉が締まって歯応えがあります。ひなどりは、それより多少柔らかいということでしょうか」とのこと。ぜひ、食べ比べて味の違いを確認して欲しい。
ももやきは骨付きのフルサイズ以外に、ハーフサイズ(1210円)もある。フルサイズは3人前以上、ハーフサイズでも2人前はいける分量だ。まず、そのまま味わってみてから、にんにく醤油や柚子胡椒をつけてもおいしくいただける。
もうひとつの名物はチキン南蛮。唐揚げにした鶏胸肉を、独自のブレンドで作り上げた甘酢の南蛮ダレに漬け込んだ。日向ならではの一品だ。玉ねぎやキュウリの食感がアクセントになったタルタルソースも味を引き立てる。
和のテイストを取り入れたモダンな内装
店内は木の風合いを生かしたテーブルや、ゆったりと寛げるソファ席もあるモダンなインテリア。BGMはR&B。和風居酒屋をイメージしていたら、よい意味で裏切られるスタイリッシュな空間だ。テーブルの間隔も広く、ついたてで区切られているので、適度なプライベート感もある。
その中に、お品書きの墨文字が和の雰囲気を醸し出している。ぐっと落ち着いた大人の雰囲気だ。実際に40代以降のお客さんが多いとのこと。
お酒は、佐藤 黒はもちろん、黒霧島や山ねこなど九州産の焼酎をそろえている。常に煙をあげる環境なので換気には非常に気を使っている。駅前の喧騒を感じさせない、ちょっとした隠れ家のような一軒だ。
取材・文・撮影=新井鏡子