『ルポ新大久保 移民最前線都市を歩く』

ひとつの街に、日本の未来を見る

室橋裕和 著/辰巳出版/1600 円+税

新大久保のアジア化が止まらない。
『散歩の達人』本誌で新大久保を特集したのは2004年のこと。「ヨン様」「ワールドカップ」をきっかけに韓国ブームだった当時、韓国系の店が100軒ほどあったそう。今はそれどころではない。ベトナム、台湾、ネパールなどなど、アジアを中心に店舗の多国籍化が続いているのだ。
著者の室橋氏は、伝説のアジア情報誌『Gダイアリー』のデスクを務めた方だけあって、街の実情をアグレッシブに、丹念に聞き取りしている。何よりもアグレッシブなのが、本書に登場するアジア人たちだ。例えばベトナム人のドゥックさんはベトナム人向けカフェを開店したかと思ったら「街で流行っているのは韓国だから」と、異国のレストランをあっさり開いてしまう。そんな彼らを支えるために「家賃保証会社」「送金会社」などのインフラも整い、街はますます活性化していくのだ。
一方、文化や価値観などの違いから、街、ひいては日本の今後を見直すべきような現実もある。商店街組合に入るよう彼らに声をかけても「メリットが感じられない」と断られてしまうのだ。組合員が減ってしまえば、商店街の存続にもかかわりかねない。そんな状況に新大久保商店街理事長の伊藤節子さんが放った言葉が重い。
「執行部の部長を韓国人に任せるとか(中略)そう変わっていかないと、商店街そのものがなくなっちゃうと思うんだよね」
ダイバーシティ、SDGsなどが叫ばれている昨今、ひとつの答えがここにあるようにも思えた。(久保)

『東京時層探検』

黒沢永紀 著/書肆侃侃房/1700 円+税

不思議な時間の層が見える異空間を「時層」ととらえ豊富な写真とともにまとめた一冊。江戸時代から戦後までその時代が濃密に感じられる場所を案内するとともに、最後に戦禍を免れた「時層堆積街」も紹介。防空壕が残る中野坂上の多寶山成願寺など、単なる歴史散歩にとどまらないディープさが想像力を刺激する。(土屋)

『東京の美しいお花屋さん』

櫻井純子 著/エクスナレッジ/1600円+税

大切な人への贈り物や自分の部屋の彩り探しに。思わず行きたくなる東京のお花屋さんをまとめた一冊。厳選された26店は、色とりどりの花はもちろん、そのレイアウトや装飾も美しく、個性豊か。写真を眺めているだけで気持ちが華やぐ。花器の選び方やお手入れ方法も紹介されているので、初心者にもおすすめだ。(町田)

『すごいエスカレーター』

田村美葉 著/エクスナレッジ/1800円+税

マニアの著者が選ぶ、日本のエスカレーターベスト40。用語や分類付きで、今までなんとなくカッコイイなと思っていたエスカレーターの、カッコよさの理由がわかって読後は満ち足りた気持ちになれる。個人的には元町・中華街駅のエスカレーターは、映画に出てくる地下研究所みたいでいつもワクワクしてしまいます。(吉岡)

『散歩の達人』本誌では毎月、「今月のサンポマスター本」と称して編集部おすすめの本を紹介している。2020年も年の瀬にさしかかり、いよいよそれを一斉公開する時が来たと言えよう。ひと月1冊、選りすぐりの12冊を年末年始のお供に加えていただければ幸いである。