間借りの週末ランチ店から独立し、地元で開いた居酒屋
柏市役所通りは比較的チェーン店が少なく落ち着いた雰囲気の店が点在する。通りから一歩入れば住宅地という立地もあって、駅前のにぎわいとは少し様子が違う。『食べ呑み処 おみゆき』もそんな店のひとつだ。
女将の門倉みゆきさんは、2021年から我孫子で週末限定の間借り店『おみゆき食堂』をはじめた。そして2025年3月、地元・柏で独立。「食事と一緒にお酒も楽しめるように」と居酒屋の要素も加え、『食べ呑み処 おみゆき』をオープンした。
軽い世間話をしながら、仕込みや片付けを手際よく進めていく。そんなキビキビとした姿を見ていたら筆者も背筋がシャンとしてきた。
門倉さんは、飲食店で働いていたことに加え、料理代行の仕事もしてきた。そのため料理の腕はもちろんだが、10年以上テレフォンアポインターとして働いた経験もあり、お客さんとの会話もテンポよく弾む。
料理代行でさまざまな家庭を訪ねてきたことから、食べる人の好みを汲み取ることには慣れている。移転してからもお客さまのリクエストから定番化した料理は少なくない。
我孫子時代からの常連客が今なお訪れる。「居酒屋にするなら少し味を濃くしようかなとも思ったんです。でも、『そのままでいい』って。私もあまり濃い味が好きではないんです」と門倉さんは話す。
提供する料理のほとんどは手作り。旬の食材も取り入れながら、また明日も食べたくなるような料理を提供する。
酒選びも“おみゆき”流。好みでそろえた辛口の日本酒
ビール、焼酎、ワインにウイスキー。門倉さんいわく「誰が来ても楽しんで欲しいから」と定番ものはしっかりと網羅されている。
そんな中でも門倉さんの好みが色濃く反映されているのが日本酒のラインアップだ。
わざわざ酒蔵を訪れて手に入れることもあるとか。
「そもそも私が日本酒好きなので、辛口が多いですね。好きなものばっかり仕入れています」
そんな素直な品ぞろえもまた“おみゆき流”なのだ。
飲み歩きも好きだという門倉さんは、柏市内の飲食店仲間との交流も酒場で育んできた。今では知り合いの飲食店店主や、酒場で知り合った仲間がこの店に立ち寄ることもしばしば。
酒場でつながった縁が、今では店に訪れる人たちへつながっている。
揚げたて春巻きと素朴な煮物で1杯
この日オーダーしたのは、我孫子時代から人気のパリパリ春巻き770円と、3種の副菜にドリンクがついたちょい飲みセット1300円だ。
「春巻きや鶏肉のから揚げは我孫子の時から人気のメニューなんです。自分では狙って作ったメニューじゃないんですけどね」
そう話しながら、手早く春巻きの皮に具を包み油で揚げていく門倉さんだ。
そういえば、門倉さんはずっと店やメニューの話をしながらも、手を止めず仕込みや洗い物などをしている。
5人きょうだいの長→次女で、子供の頃から“ちいママ”のように弟や妹の世話をしてきたという。今ではその気質が店でも発揮され、客やスタッフに自然と目を配っているのかも。
そんなことを考えていたら、料理とお酒が運ばれてきた。
まずはパリパリ春巻き。
ひと口かじれば、パリッと小気味よい音。中にはアツアツの肉と野菜がたっぷり詰まっている。
ハフハフ言いながら慌ててウーロンハイを流し込むと込み上げてくる幸福感。春巻きの具はしっかり味がついているので調味料は不要だ。
1本食べ終わり、付け合わせのサラダにも手を伸ばす。そこで、ドレッシングも自家製だと気がついた。
「このドレッシングをかけると、生野菜が苦手な子どももパクパク食べてくれるんですよ。お客さまのリクエストに応えて、ドレッシングのテイクアウトもやっています」
ドレッシングというと、塩味、酸味や油のコクが際立つものをイメージするが、これはまろやかでやさしい。しかも、野菜のおいしさと調和している。
続いて、副菜もいってみよう。
どこか懐かしい素朴な味付けのカボチャの煮物、一味唐辛子の香りがオシャレなしらすおろし。やわらかいつぶ貝の煮付けは噛み締めるほどに味わい深い。
3品ともお酒が進む味わいで、ついつい飲みすぎてしまいそう。
春巻きや煮物をつまみに飲んでいると、気取らない味やほどよいにぎわいに包まれて実家の食卓にいるような気分になる。
そんな親しみこそ、この店へ毎日帰ってきたくなる理由なのだ。







