今回めぐったコースはこちら!

風情あふれる湯治場で温かなふれあいを

霊峰・月山(がっさん)をはじめとする山々に囲まれた大蔵村は、山林面積が全体の約85%を占める小さな村。肘折温泉も山深い地にあり、開湯から1200年以上の歴史を紡いできた。

銅山川沿いに、むかしながらの風情ある佇まいの宿が軒を連ねる静かな温泉郷。豊富な湯量が自慢で、全19軒の宿の温泉はすべてかけ流し。いまでも湯治客が多く、自炊場を設けている宿も多い。温泉街の店や朝市で購入した食材を使って自炊をする光景は、肘折温泉の風物詩ともいえる。

まずは、肘折温泉発祥の湯であり、温泉街のシンボルになっている『上(かみ)の湯』へ。肘折地区代表の大友久士さんによれば、現在も地域の約50世帯、80~100人が毎日利用しているという。

一般客の利用は17時までだが、「お客さんと地元民との交流の場でもあります」と話す。地元のご夫婦が、男湯と女湯の壁越しに話す姿に思わず笑みがこぼれた。

温泉街のなかでも『亀屋旅館』は湯治場風情を色濃く残す一軒。いまは食事付きの宿泊客が多いそうだが、増築を重ね、迷路のように延びた長い廊下や館内に設置された洗濯機は、むかしながらの湯治宿そのものだ。

旧肘折郵便局舎はレトロな佇まい。記念撮影をする人も多い。
旧肘折郵便局舎はレトロな佇まい。記念撮影をする人も多い。

朝市さんぽの楽しみはおばちゃんたちとの会話

『長南(ちょうなん)精肉店』の名物は馬刺。「うちで馬刺を買ってからチェックインする人もいるんです」と店主の長南宗典さんはうれしそうに話す。銅山川沿いの『そば処 寿屋』で、やや太めのそばをすすると、ほのかに口に広がる清涼な香り。山間の店で食べるそばは格別な味がする。

温泉まんじゅうが看板商品の『ほていや商店』では、肘折こけしや肘折温泉のなりたちに関する資料も見られる。まんじゅう屋で歴史を学ぶ。これもいい肘折土産になりそうだ。

朝市では地元の人との会話も楽しみ。
朝市では地元の人との会話も楽しみ。

最後に立ち寄った『カネヤマ商店』では、角打ちで地酒3種を飲み比べ。客同士の不思議な連帯感が生まれ、ほんわかなごむ雰囲気が漂っている。

温泉街は端から端まで歩いても徒歩10分ほど。行き来していると何度か顔を合わせた人が「どっから来たのっさ?」と声をかけてくれる。こんな会話ができるのも長逗留(とうりゅう)が多かった湯治文化の名残かもしれない。

肘折温泉といえば朝市が名物。4月20日から12月上旬までの毎日、温泉街に露店が並ぶ。明日は朝市に出かけよう。旬の野菜や山菜も楽しみだが、何よりおばちゃんたちとの会話が楽しみだ。

illust_14.svg

『カネヤマ商店』肘折温泉を支える商店で散歩の途中で軽く一杯

店主の須藤和彦さんも、閉店時刻が迫ると軽く一杯。日本酒利き酒セット950円。
店主の須藤和彦さんも、閉店時刻が迫ると軽く一杯。日本酒利き酒セット950円。

地酒と土産、食品、日用品を扱う肘折温泉の拠点商店。店の一角に設けられた角打ちコーナーには、大蔵村の蔵元・小屋酒造の代表銘柄「花羽陽(はなうよう)」をはじめ、県内の地酒を各種そろえる。散歩途中の湯治客の姿も見られる。

☎0233-76-2123
6:30~18:30、不定休
山形県大蔵村南山506-3
山形新幹線新庄駅からバス55分の肘折温泉待合所下車、徒歩1分

『上(かみ)の湯』地元民がこよなく愛する肘折温泉始まりの湯

浴槽には、肘折温泉を発見したと伝わる地蔵菩薩を模したお地蔵様が。
浴槽には、肘折温泉を発見したと伝わる地蔵菩薩を模したお地蔵様が。

温泉街の中心にあり、傷や骨折に効果が期待できる疵湯(きずゆ)を注ぐ。無色・透明の湯は、肌にしっとりとまつわり、湯上がりがさっぱりしていることから「冷えの湯」とも呼ばれる。

☎0233-34-6106(大蔵村観光協会)
8:00~17:00、不定休。400円
泉質/ナトリウム-塩化物泉
山形県大蔵村南山506-3
山形新幹線新庄駅からバス55分の肘折温泉待合所下車、徒歩1分

『亀屋旅館』2つの源泉と女将手作りの田舎料理

浴槽の片隅には、湯治客から傷が治ったお礼に贈られたお地蔵様の姿。
浴槽の片隅には、湯治客から傷が治ったお礼に贈られたお地蔵様の姿。
お地蔵様と入れちゃう。
お地蔵様と入れちゃう。
旅籠(はたご)部屋で提供される、女将さんが手作りする料理の一例。この料理を目当ての客も多い。
旅籠(はたご)部屋で提供される、女将さんが手作りする料理の一例。この料理を目当ての客も多い。

風呂には『上の湯』と同じ源泉の疵湯と、湯上がりのほかほか感が気持ちよいあったまり湯の2つの源泉を引く。山野草を中心に地元食材を使う田舎料理も評判。

☎0233-76-2311
1泊2食湯治部屋7350円~、旅籠部屋1万350円~ ※冬期は別途暖房費
8室
泉質/ナトリウム- 塩化物泉(疵湯)、炭酸水素塩泉(あったまり湯)
山形県大蔵村南山521
山形新幹線新庄駅からバス55分の肘折温泉待合所下車すぐ

『長南(ちょうなん)精肉店』看板商品は馬刺と山菜

適度のサシが入った馬刺(小)1800円。馬肉はこの地方の郷土の味。
適度のサシが入った馬刺(小)1800円。馬肉はこの地方の郷土の味。
大蔵村産の栗を煮込んだ しぶ皮煮(小)1500円。
大蔵村産の栗を煮込んだ しぶ皮煮(小)1500円。
月山の筍 (大)3500円。
月山の筍 (大)3500円。
キノコにも精通する店主の長南宗典さん。
キノコにも精通する店主の長南宗典さん。

さまざまな肉が用意されているが、湯治客に人気があるのが馬刺。夕飯のおかずに、酒のアテに買い求めていく。ずらりと並ぶ山菜の瓶詰めは、親族が近くの山で採ったものを店内加工したもの。

☎0233-76-2011
6:00~17:00、不定休
山形県大蔵村南山480
山形新幹線新庄駅からバス55分の肘折温泉待合所下車、徒歩5分

『ほていや商店』温泉まんじゅうと肘折こけし

温泉まんじゅうは1個110円~、6個入り700円。
温泉まんじゅうは1個110円~、6個入り700円。
歴代こけし工人が描いたこけし絵。
歴代こけし工人が描いたこけし絵。
こけしへの造詣も深い店主の斉藤栄輝さん。
こけしへの造詣も深い店主の斉藤栄輝さん。

温泉まんじゅうや肘折こけしなど、肘折温泉にちなんだ土産物が各種そろう。毎朝蒸すまんじゅうは、香りづけにカカオを生地に加えたことで、黒糖のコクはあるが甘すぎない。温泉街の食べ歩きにぜひ。

☎0233-76-2132
7:00~18:00(春期以降は5:30~)、無休
山形県大蔵村南山499
山形新幹線新庄駅からバス55分の肘折温泉待合所バス停下車、徒歩2分

『そば処 寿屋』たっぷりのった山菜はいつ訪れても春の気分

ウドやワラビなどがのった山菜そば980円。
ウドやワラビなどがのった山菜そば980円。
4代目店主の早坂隆一さん。
4代目店主の早坂隆一さん。

創業100年を超す老舗。最上早生(もがみわせ)のそば粉を使った“三たて”のそばを味わえる。おすすめは、山の幸が豊かな土地ならではの山菜そば。種類が多く、ほろ苦く、みずみずしい山菜のおいしさに驚く。

☎0233-76-2140
10:00~15:00、第2・4木休
山形県大蔵村南山571
山形新幹線新庄駅からバス55分の肘折温泉待合所下車、徒歩6分

肘折温泉街のひとり泊OK宿

『若松屋村井六助』

自家源泉をもち、男女別浴室のほか貸切風呂を1カ所備える。夕食は山の幸満載の郷土料理。

☎0233-76-2031
1泊2食1万3900円~
32室
泉質/ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉
山形県大蔵村南山496
山形新幹線新庄駅からバス55分の肘折温泉待合所下車、徒歩2分

※日帰り入浴は2026年10月現在一時休止中

『優心の宿 観月』

大浴場には、肘折温泉では珍しい展望露天風呂を併設。地産地消にこだわった料理も絶品だ。

☎0233-76-2777
1泊2食1万9950円~
日帰り入浴は13:30~16:00、無休。700円
泉質/ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉
18室
山形県大蔵村南山516
山形新幹線新庄駅からバス55分の肘折温泉待合所下車、徒歩6分

編集・制作=アド・グリーン
旅の手帖MOOK『温泉ひとり旅』より

※宿泊料金は、平日に大人1名で宿泊した場合の税込金額です。営業時間は特別の事由がない限り、閉館時間を表記しています。
※ひとり泊対応は、時期や曜日により各宿で異なります。

この記事に関連する書籍
旅の手帖MOOK『温泉ひとり旅』
旅の手帖MOOK『温泉ひとり旅』
月刊『旅の手帖』の人気特集「温泉」×「ひとり旅」が1冊に。人気の温泉地から秘湯の一軒宿まで、ひとりで泊まれる温泉宿69軒を紹介しています。