手軽に揚げたてが食べられる天ぷらの専門店
店内は、ほんのりごま油の香り。20席あるカウンター席には、それぞれ揚げたての天ぷらをおく、網付きのトレーが設置されている。壁には天ぷらのネタなどを書いた短冊が並び、庶民的な雰囲気だ。蒲田店は2017年にできた『天ぷらすずき』の1号店だ。その後、人形町、水道橋、錦糸町、2025年にオープンした池袋店を含めて、2026年10月現在で5つの店舗を展開している。
天ぷらの専門店というと高級店というイメージがある。そのイメージを打ち破るように、気軽に、日常的に新鮮なネタを使った揚げたての天ぷらが食べられるようにとオープンしたのが『天ぷらすずき』だ。ランチタイムは定食が5種類用意されていて、天ぷらの種類が少しずつ異なる。天ぷら6品の天ぷら定食が1200円とお手頃。しかもごはんは、おかわり無料だというからありがたい。
店には豊洲から毎日、魚や野菜などの食材が届く。「週末に向けた金曜日は、マネージャーが魚の仲卸と青果の仲卸に出向いて仕入れています」と店長の岡村真樹さん。おすすめは、天ぷらが合計8品の上天ぷら定食で、キスと穴子が入っていて価格は1600円と手頃だ。
奮発してよかった! キスと穴子など天ぷら8種類の上天ぷら定食
最初に出てきた天ぷらは店の名物でもある半熟玉子。柔らかな白身を箸で割ると、黄身がとろりと溶け出した。濃厚で柔らかい玉子と、あつあつの衣が持つ独特の食感。一品目からそのインパクトに心を奪われた。
海老、イカ、キスと、揚げたてが目の前のトレーに置かれていく。海老やイカのそれぞれの甘みと柔らかさにもニンマリしていたが、キスのふわふわと柔らかい身には驚かされた。奮発して上天ぷら定食にした甲斐があったというものだ。
頃合いを見て出てきたのが、鶏の天ぷら。口にしたとき思わず「鶏肉、柔らかい」と声に出てしまった。「塩麹につけているんですよ」と岡村さん。ほくほくしたさつまいも、天つゆとのコンビネーションがたまらないナス、そして最後にこちらも柔らかくて、味わい深い穴子と全部で8種類を堪能した。あつあつの天ぷらの魅力に取り憑かれていたら、ごはんと味噌汁を食べ進めるのを忘れていた。
その様子に気づいた岡村さんが「カウンターに鶏そぼろと高菜明太もあるので、どうぞ。それからもう一つ、壺の中身が天丼のつゆです」と声をかけてくれた。卓上のケースに入った鶏そぼろと高菜明太は『天ぷらすずき』全店でランチタイムに提供されている。この2つの総菜をお供にして、まず1杯目のごはんを食べ、天ぷらと一緒に食べるためにごはんをおかわりする人もいるそうだ。蒲田店では夜の時間帯にも提供されていて、お酒のあてとしても楽しまれている。
夜にも訪れてみたい! 天ぷら好き庶民の味方
壁に貼られたメニューを眺めていると、定食には入っていないが、子持ち昆布や牡蠣、黒舞茸なども天ぷらになることに気づいた。「夜はアラカルトですか?」と岡村さんに尋ねてみたら、「一つずつ頼んでもらってもいいですし、盛り合わせもあります。まずはちょい飲みセットから始めてもらうのがおすすめです」とのこと。
ちょい飲みセットは、ホッピーや焼酎、ソフトドリンクなどから1杯選び、小鉢、天ぷらは海老のほかにハゼなどの魚、野菜2種類がついて1100円(生ビール、日本酒は、+230円)。この破格ぶりにも驚く。江戸時代、天ぷらは屋台で提供され、庶民のファストフードのようなものだったというのは有名な話。そんな天ぷらの歴史を改めて思い起こされた。
お店の移り変わりが激しい蒲田で10年目。店にはスーツ姿の会社員から女性の一人客、20代前半と思しき男性、高齢の夫妻まで、年齢層の幅広い天ぷら好きが訪れる。
客席に囲まれて天ぷらを揚げる店長の岡村さんは、「食べる人のペースに合わせて揚げるようにしていますが、みなさんペースがそれぞれなので、そこが難しいですね」と配慮を滲ませる。週末は20席が満席になることも多く、2人がかりで天ぷらを調理しているそうだ。蒲田の庶民的な商店街にある『天ぷらすずき』で粋な贅沢を楽しもう。
取材・文・撮影=野崎さおり






