府中市 DATA
面積……29.43平方キロメートル
人口……26万2162人(2025年1月現在)
ドドンと紹介! 府中はビッグスケールな名所ばかり!?
京王線特急に乗り、新宿駅から20数分。府中市のコア・府中駅に降り立つと……。
漫画なら「ドン!」という効果音をつけたくなるような、デカくて迫力ある光景の連続、と思うのは筆者だけでしょうか。
街の写真を一挙にドドドン!とご覧ください。
そのまま東京競馬場(いわゆる府中競馬場)まで歩いて行っちゃって……。
芝のコースは1周2083m。このG1の大舞台「府中競馬場」の存在感もあり、「府中」の地名は全国区となっているのでは。
おぉ〜? そういや、今日は府中での開催日じゃないけど、場外の馬券は買えちゃうのか〜。じゃ、ちょっとこの辺で本記事も切り上げて……ってオイ!失礼しました。ジャンボな見所の多い府中市を改めて探索しましょう。
古代・武蔵の“都庁所在地”——大國魂神社と府中市街を巡る
気を取り直して、府中市の全体地図はこんな感じ。
ちょうど市の真ん中あたりに、京王線の府中駅があります。そばのJR南武線・武蔵野線の府中本町駅を含む一帯が府中の中心市街で、主要な道路もこのあたりへと集中……「すべての道は府中に通ず」ですね。
何はさておき、府中を語る上で欠かせない、武蔵国の守り神・大國魂神社にお参りしましょう。平安期に、武蔵国の一之宮から六之宮の祭神を合祀したことから、「六所宮(ろくしょのみや)」「六社(ろくしゃ)」という異名もあります。
年中行事の多い大國魂神社。ゴールデンウイークに約80万人を動員する「くらやみ祭」は、聞き覚えのある方も多いのでは。一昔前まで、深夜に一斉消灯した中で神輿を担いだのが、名の由来といいます。
この「くらやみ祭」、巨大な太鼓を鳴らしながらの神輿渡御がクライマックスですが、それ以外にも本当にプロセスが多いんです。
品川近海に出向いて海水を汲む「潮盛り」に始まり、本物の馬が走る競馬式(こまくらべ)……厳格なしきたりにのっとり、委員会の強固な組織力で毎年運営されています。
定番の屋台が並ぶ境内には、多摩エリアじゅうからティーンが集結。元々同じ中学だったメンバーが再会してはしゃいでたりする様子を見ると、若年層の間でも“活きてる”イベントだなー!という感慨があります。
ほか、7月20日の「すもも祭」の起源も古く……平安時代、前九年の役に勝利した源頼義・義家親子が、戦勝のお礼参りに果物のすももを奉納したのが由来。ちなみに冒頭のけやき並木を寄進したのも、この頼義・義家とだという伝説が。
そもそも「府中」という地名、奈良時代の大化の改新後、国ごとに置かれた役所・国府のある場所という意味で、武蔵国の政治的中心でした。大國魂神社も、国司(いわば知事)による祭祀の場、という性質を備えていったようです。
で、奈良時代から超かっ飛ばしますが……!
江戸時代、幕府が整備した甲州街道のルート上となった府中は、宿場町としても栄えるように。近代、大正5年(1926)には京王線が府中まで開通。交通面にも恵まれた府中には工場や大規模施設もどんどん進出し、「京王沿線の要」としての地位を固めていきました。
府中駅南口の今はというと、大規模開発が完了。かつて伊勢丹だったビルも新ブランドで再出発し、5つの商業ビルが空中回廊でつながる立体的タウンに。
「ル・シーニュ」「くるる」「フォーリス」……など、よそ者の筆者は「いま俺がいるビルはどこ!?」と迷いがちですが、慣れれば最強の買い物タウン。揃わないものはありません。
西暦3ケタ代の史跡から、ピカピカのビル群まで……クラクラするような時代のギャップを楽しめる街です。
大國魂神社参拝のお土産に!『青木屋 府中けやき並木通り店』には店舗限定品も
せっかくなので、府中の街の歴史に縁の深いお菓子をお土産にいかがでしょう。
けやき並木のすぐそば「フォーリス」の中に、府中を代表する菓子店の店舗があります。
多摩エリア在住の皆さんなら、もうお気づきかも……? 『青木屋 府中けやき並木通り店』です!
府中市を中心に、多摩エリアに13店舗を展開する『青木屋』。代表取締役社長の多久島治さんと、府中けやき並木通り店 店長の冨田剛睦さんにお話を伺いました。
そもそも『青木屋』の創業からして、あの大國魂神社との関係が深いんです。
「創業は明治26年(1893)。初代・加藤幸吉が、大國魂神社の境内で万頭(まんじゅう)の商いをしたのが始まりと記録されています」と多久島社長。
その後、生産拠点を新設して発展させたのが、3代目にあたる加藤次郎氏。工場の立地に府中市南町を選んだのにも、理由があるようで……
「地下水が豊富な南町には、当時すでにサントリーさんのビール工場があったんです。その美味しい水であんこを作ったら良いだろうと、場所を決めたそうです」
工場見学も人気の『サントリー〈天然水のビール工場〉東京・武蔵野』、たしかに府中にありますよね。あのあたりですか……!
『青木屋』の銘菓の中でも、多摩エリア在住者に最もなじみ深いのは、ミニバームクーヘンにチョコレートクリームを詰めた「武蔵野日誌」ではないでしょうか。
チョコレート・ホワイトなどの定番に加え、期間限定のフレーバーが出るのも楽しい! 「雑木林の小枝」がモチーフというのが、“武蔵野”らしさのポイントです。
『青木屋』では、贈答用の箱入りだけでなく、家庭用にバラで購入できるのがうれしい! 特にこの「府中けやき並木通り店」はゆったり選べて、ついつい長居してしまいます。
ここはせっかくなので、とくに府中と縁の深い商品を教えていただきました。
まずはこちら。「武蔵国銘菓 万頭詰め合わせ」。この掛け紙のついた3種万頭入り箱詰めは「府中けやき並木通り店」限定品とのこと!
それぞれの万頭のネーミングは府中の歴史を感じさせ、大國魂参拝の記念にぴったり。
「六社万頭」は、外側が醤油味、中が粒あん。「武蔵国府万頭」は黒糖風味で、中はこしあん。
北海道産の小豆にこだわった、あんの風味も格別です。
もう1種は「國府鶴(こうづる)酒万頭」。
市内の『野口酒造店』で醸造される日本酒「國府鶴」の酒粕を使った、香り豊かな一品です。この「國府鶴」、大國魂神社のお神酒として奉納されることでも有名な、地元に深く根付いた銘柄。しばらく自家醸造を休止していたそうですが、2024年に井戸を新たに掘削して酒造りが復活。晴れてコラボ商品が誕生しました。
もう1品、府中らしいものをいうことで……「馬サブレ」!
もともと「レーシングサラブレッドサブレ」というサブレがあったそうですが、午年・2026年を見すえ、その前年に「馬サブレ」と刷新。ほどよく固めの焼き上がりに、バター100%のリッチな味わい。いや〜、府中といえば競馬ですよね……とそこへ、多久島社長が補足してくださいました。
「競馬以前にも、古くから馬の売買をする『馬市』があったなど、府中と馬の歴史は深いんです。徳川家康もこの府中で良い馬を買い、関ヶ原の戦いで勝利したという言い伝えもあります」
そんなに古くから、馬との縁があったとは!
毎年の「くらやみ祭」で本物の馬が走る「競馬式」も、奈良時代に良馬の産地だったことに由来するそう。そしてもちろん、現代の競馬がもたらす効果も大きいようで……日々この店舗を見守る冨田店長もこう語ります。
「東京競馬場のレースにスター馬が出る日は、府中に降り立つ方の母数そのものが増えるので、売り上げも上がります。それから大國魂神社の行事の日も、やはり大勢のお客さまが来られますね」
三重県出身の冨田店長は、伊勢神宮の門前町・おはらい町に似た雰囲気も感じるそう。
競馬と祭り……ハレの日がたくさんあるのも、府中らしさでしょうか。お菓子をゲットした勢いで、もう少し別のエリアも開拓しましょう!
よそからもわざわざ訪ねたい!府中の公共施設は軒並みゴージャス
府中駅周辺をちょっと離れて、やや広域エリアをぐるっと回ります。
まずは「府中の森公園」のある、東府中エリアへ。
その広大な公園の入り口で目立つのが『府中の森芸術劇場』。オーケストラもどんとこい! 2000人以上収容のホールも備える、音楽・芸能の拠点です。
そして公園内を北に進むと、『府中市美術館』が!
2026年春、かわいい子犬の日本画で話題となった「長沢蘆雪展」で訪れた方も多いのでは。年間通して、美術通もうなる企画展が続々。気鋭の作家が滞在し、その作画過程に触れることのできる「公開制作室」もあるんです。
ほかにも、蔵書100万冊を誇る府中市立中央図書館に、子供たちがゴーカートを運転できる交通遊園……府中の公共施設は軒並み豪華で、内容も超充実。その税収はどこから?なんて、おカネのことを考えつつ、北府中駅のほうへ歩くと……。
“TOSHIBA”——! これは東芝の工場敷地内にある、エレベータの研究塔。そう、東芝にNEC、そして例のサントリーのビール工場と、超有名企業の拠点がズラリ。なるほど、それで潤沢な税金が……。
ちなみに誤解されがちな点でいうと、東京競馬場の存在は市税に直接関係ないみたい。かわりに府中市は、大田区にある平和島競艇場の主催をしていて、その収益は市へと入ってくるそうです(ややこしい!)。
2026年7月、森記念財団都市戦略研究所(森ビル関連のシンクタンク)が発表した「日本の都市特性評価」という調査も話題になりました。さまざまな項目のうち、在住者アンケートを元にした「居住者満足度」というランキングで全国136都市中、府中市がトップに躍り出たのです。隅々まで整備された市内をぐるっと歩くと、その理由も納得!
その東芝関連施設密集ゾーンを大回りして南に出ると、分倍河原(ぶばいがわら)という駅に行き着きます。
超コンパクトながら、京王線と南武線の乗り換え地点という分倍河原駅。
何かとビッグスケールな府中駅前と一味違い、駅前には小さな飲食店がギュッと凝縮。昭和そのままのミニ横丁も健在で、趣のある街です。
スローでゆったり独自路線!? 西武多摩川線界隈を歩こう
最後に、ちょっと違った風の吹くエリアを歩いて締めましょう。「西武多摩川線」沿線です。
武蔵野市の武蔵境駅が起点のミニ路線「西武多摩川線」、その沿線半分は府中市域内。ここまでの「京王&大企業」ゾーンとは違った、スローな空気なんです。まず、多磨駅というところで下車しましょう。
ここは東京外国語大学の最寄り駅。毎年の文化祭では、各言語専攻学生による本格民族料理の出店も話題になりますね。
都立多磨霊園もこの近辺に広がっています。
大正12年(1923)、この地に開園。高橋是清、東郷平八郎、江戸川乱歩、岸田劉生……と、 園内に眠る人物を挙げれば近現代史事典そのもの。で、東京ドーム27個分ととにかく広い!
多磨霊園の裏には、平坦な府中市では珍しく、ポッコリと小山が。
これは浅間山(せんげんやま)といい、大昔「川に削られそびれた」台地の名残なんだそう。戦時中には、陸軍の火薬庫として接収された過去もあります。
軍事遺跡でいえば、西武多摩川線白糸台駅付近には戦闘機を空襲や攻撃から守るための格納施設・掩体壕(えんたいごう)も保存されています。
そして西武多摩川線は、是政(これまさ)という町内にある競艇場前駅へ。駅名の通り、ここにはもう一つの公営競技場「ボートレース多摩川」があります。
ほどよく年季が入った場内。モツ串一本単位のつまみを買って、ボーッと過ごす……。華々しいファンファーレの響く東京競馬場と違った楽しみがあります。
さらに南へ歩くと農地も目立ち、やがて多摩川へと行き当たります。あの西武多摩川線も、もともとは多摩川で採取した砂利を運搬するために敷設された鉄道とのこと。
あ!そういえば。川沿いの押立(おしたて)という町内で撮った行事の写真もあったっけ。
1月中旬、正月飾りを藁のやぐらと一緒に燃やす「どんど焼き」。全国各地で広く見られる風習(呼び名が異なる場合がありますが)ですが、押立バージョンはというと……。
……3・2・1、FIRE!!!
やっぱジャンボなんか〜い! いや、感服いたしました……。
大いなる存在を求めて、山でもなく海でもなく「府中」のスケール感に飛び込む小旅行。オススメ!大本命ですよ!
取材・文・撮影=イーピャオ







