みほとけ
お寺・仏像大好き芸人。1994年、鎌倉市生まれ。2015年アイドルとしてデビュー、2016年にミス鎌倉。クイズ番組や旅番組などのメディアへ出演する傍ら、自称「お寺・仏像研究家」として年間500以上のお寺を訪れる。拝観した仏像は1万体超え。著書に『みほとけの推しほとけ』(笠間書院)。
アイドルと仏像・仏教の共通点
—— みほとけさんは小さい頃から鎌倉にお住まいと。
みほとけ 祖父母が鎌倉で、幼稚園から大学出るまでは鎌倉にいました。学校も全部神奈川県で。
—— では江ノ電の風景も海も日常ですね。
みほとけ 江ノ電は中学の通学で使ってました。あと母親が駅前の観光案内所で働いていたこともあって、観光のお勉強みたいな形で土日にお寺に行くことも多く、住民だけど観光もしてた、という感じです。
—— お寺や仏像に興味を持ち始めたのはいつ頃ですか?
みほとけ まさに今話したところがきっかけとしてすごく大きくて、母の観光の勉強で鎌倉のお寺をぐるぐる巡っていたことがお寺好きになるきっかけで。ただ、なかなか幼いと理解が難しいじゃないですか。ずっとなんとなく好きだな程度だったんですけど、仏像に関しては全然別で……京都のお寺、「六波羅蜜寺(ろくはらみつじ)」にある「空也上人像」と出会ってしまったんです。口からちっちゃい仏像が出ているあの仏様を拝観した瞬間にグッと心を惹かれて「やば!」ってなって。
—— “推し”との出会い。
みほとけ 出会っちゃいました(笑)。これは本当に初恋の仏像なんですけど。そこから「あれ、地元にもいっぱい仏像いるじゃん!」と立ち返った感じですかね。
—— みほとけさんはアイドルもお好きですよね。
みほとけ アイドルは中1ぐらいですかね。AKBがデビューした頃にハマって。
—— 好きが高じてご自身もアイドルになった。すごい。
みほとけ なりたいって思っちゃうんですよね(笑)。ハマると気になって、ちょっとオタクっぽくなってしまう。今は仏になりたい気持ちです。
—— 仏に!!
みほとけ 仏像になりたいとは常々思っていて、あんな尊い存在になれたらすごいなと思って。空也上人像も、口から仏が出てるじゃないですか。あれもやりたいって思っちゃうんですよ。
—— アイドルと仏像・仏教に共通点は感じますか?
みほとけ めっちゃありますよ! だってステージの上にいる尊い存在ということでは同じですから。お堂の須弥壇(しゅみだん)の上に立っていらっしゃって、お線香がスモークのように焚(た)かれて、お灯明がライトのように照らされて……もうアイドルの世界と本当に一緒だなと思うんです。お経まで唱えちゃったら、みんなでコール状態。
—— 確かに……!
みほとけ だから仏様を拝んでいると、なんか動いているように感じるんですよ。「あ、この方はソロシンガーのタイプだな」とか「トリオのユニットの方もいる」みたいな(笑)。あと仏像はアイドルと違って卒業しないので、永久に現役。推し甲斐(がい)があります。スキャンダルもないですし(笑)。
みほとけ流、お寺の回り方・楽しみ方
—— みほとけ流・鎌倉のお寺のおすすめの回り方や楽しみ方を教えてください。
みほとけ まずはここ「長谷寺」。何度来ても表情が違うんですよ。季節の花々があるし、大きな観音様も自分の心持ちによって感じるものが全然違う。この長谷エリアは鎌倉時代からお寺が多く信仰の街だったので、鎌倉大仏に行くもよし、私はちょっと足を延ばして極楽寺もおすすめ。アジサイが道端にぽこぽこ咲いていて、山っぽい感じと海っぽい感じが両方混ざったエリア。極楽寺さんの中に入ると、本当に静謐(せいひつ)な空気に触れることができます。長谷から歩いても30分もない距離です。
—— 大人のお散歩ですね。
みほとけ 『手ぬぐいカフェ 一花屋(いちげや)』さんのような古民家を改装したカフェがあったり。この由比ヶ浜通りのエリアは今一番ホットスポットで、個人経営のお店がどんどん増えています。
—— 「鶴岡八幡宮」の方はどうですか?
みほとけ 八幡宮の中に『鎌倉国宝館』という博物館があるんですよ。仏像好きとしては外せない。関東大震災で鎌倉の仏像をはじめとした多くの文化財が被害を受けて、それを保存し、公開するために建てられた、開館100年近い渋めの博物館です。鎌倉の美しい仏像はもちろん、企画展も面白い。
—— 知らなかった! 八幡宮の中にそんな博物館があるとは。
みほとけ 意外と知らない方が多いんですよね。八幡宮をぐるっと回りながらぜひ寄ってほしいです。さらに「杉本寺」もおすすめです。鎌倉で一番古いお寺で、源頼朝が鎌倉に幕府を開く時代を全部見ているという歴史深いお寺です。コケの階段がすごく綺麗で、茅葺(かやぶ)きのお堂があって、歴史のままの景色が広がっています。ぜひチェックしてください。
—— 北鎌倉エリアはいかがですか?
みほとけ 八幡宮から北鎌倉側のエリアは北条氏のエリアで、禅のお寺がどんどん作られた場所なんです。禅の静けさと、中国から伝わってきたちょっとハイカラさも入った独特な雰囲気があります。
シーズンで、もしも混みすぎていたら……
—— 「明月院」が有名ですよね。
みほとけ めちゃくちゃ奇麗なのでおすすめです。ただ、アジサイの咲くシーズンは北鎌倉駅まで行列ができるほど混むので、もしも混みすぎていたら「円覚寺」へ。境内が広大ですし、アジサイもすごく奇麗で、注意事項を守れば写真撮影も楽しめます。あと、円覚寺のご住職、横田南嶺さんがYouTubeにものすごく力を入れていて、法話が大量にアップされているのでそちらもぜひ。
鎌倉駅周辺だと、小町通りや若宮大路から歩いてすぐのところに「英勝寺」という尼寺があります。鎌倉唯一の尼寺で、水戸徳川家ゆかりのお寺。江戸時代の建築による華やかさと優しげな雰囲気があります。ヒガンバナの時季はすごく人気ですが、それ以外の時季はすぐそこが小町通りの喧騒(けんそう)なのに一歩入ると本当に静かで。ベンチでぼーっとできる、穴場です。
憧れの仏像になりたいと思って
—— 仏像をお仕事にしようと思ったきっかけは何でしたか?
みほとけ 憧れの仏像になりたいと思って、折り紙やお玉、野菜などを使って仏像になりきってみたんですよ。写真をSNSにあげたらリアクションが良くて。それがスタートですね。仏像に興味がない人も、面白かったら見ていただけるなと思って、じゃあお笑いのネタでも仏像のことをちょっといじってみようかな、仏教の面白いポイントをネタにしてみようかな、と思ったら意外とできて。お寺の方にも面白がっていただけるので、「本当に好きでやってるんだな」と伝わっているのかな、と。
—— 仏像モノマネのポイントは?
みほとけ やっぱりポーズが大事。脇の動き、腕の上げ下げ、腕の太さ細さで全然見栄えが違うんですよ。現実味のないポーズもしていて、腰がねじれまくっているとか。それくらいいかないとかっこよくない(笑)。
—— ジョジョみたい(笑)。
みほとけ そうなんですよ! 表情もポーズも、同じものが一個もないというのがすごく面白いです。鎌倉の大仏さんも実はめっちゃ猫背で……下から拝観するみなさんがちゃんと顔まで見えて迫ってくるように、少し前のめりになってくださっている。
—— これからの夢や挑戦したいことはありますか?
みほとけ 仏像はめちゃくちゃ楽しいので、ずっとこれをしゃべり続けたいです(笑)。そしていろんな人にもっとお寺に足を運んでほしい。全国には魅力的なお寺がたくさんあります。いろんな人の人生の楽しみに、仏像やお寺や歴史をなじませていきたい。そんな「なじませる作戦」を今しています。
—— 私も今日久しぶりに長谷寺に来て、こんな素晴らしいお寺だったんだなと再認識しました。
みほとけ そうなんです。めっちゃイライラしている時とか、仏様をぼーっと見て「助かる〜」ってなります(笑)。皆さん、心が疲れたらぜひ、鎌倉へ。
鎌倉 長谷寺
十一面観音菩薩像を本尊とする古刹(こさつ)。由比ヶ浜を望む高台にあり、四季折々の花と庭園、眺望が楽しめる。例年6月ごろには、境内裏山の斜面に40種類以上約2500株の色とりどりのアジサイが咲き誇る、鎌倉屈指のアジサイ処。
鶴岡八幡宮
鎌倉の中心に鎮座する源頼朝ゆかりの神社。源実朝暗殺の際、公暁が身を潜めていた大イチョウは、切り株から新芽が育ち再生の大イチョウとして復活。コロナ禍に行われた「花手水アジサイ」が印象深い。
鎌倉国宝館
鶴岡八幡宮境内に立つ博物館。鎌倉市域に所在する寺社から宝物の寄託を受け、昭和3年(1928)に開館。鎌倉ゆかりの仏像や絵画、書跡など国宝・重要文化財も見ることができる。収蔵品は薬師三尊及び十二神将立像など。
円覚寺
鎌倉五山第二位に数えられる臨済宗円覚寺派の大本山。弘安5年(1282)、北条時宗が元寇で亡くなった敵味方双方の霊を弔うために創建。国宝の舎利殿をはじめ、仏殿や山門など由緒ある建築が点在。
英勝寺
鎌倉で唯一の尼寺。徳川家康の側室・お勝の方(後の英勝院)が創建した浄土宗の寺院。仏殿や山門などは国指定重要文化財。代々の住職がお花好きで、境内はアジサイのほか、四季折々の草花が美しい。
取材・文=西澤千央 撮影=高野尚人
『散歩の達人』2026年6月号より






