まずは杉本店長のご案内で『三省堂』店内ツアーへ!

『三省堂書店 神田神保町本店』。
『三省堂書店 神田神保町本店』。

イベント参加者がまず集合したのは『三省堂書店 神田神保町本店』の1階。このタイミングで初めて足を運んだという参加者の方もいて、リニューアルオープン後の店内を興味深く眺めている様子が見受けられました。棚から棚へ、内なる関心が喚起させられるような店の造りです。

クロストークの前には、店長の杉本佳文さんが案内役となって「店内ツアー」が行われました。各フロアの特徴や、どういった意図をもって店内の構成が形作られているか、そこに込められた思いとともに伝わってきます。

新店舗のテーマは「歩けば、世界がひろがる書店。」。目的の本を探していると、新たな興味が湧いてくる仕掛けが随所にちりばめられています。参加者の多くが、「世界の展望台」と名付けられた少し高くなっている場所(写真奥)から店内を見渡していました。
新店舗のテーマは「歩けば、世界がひろがる書店。」。目的の本を探していると、新たな興味が湧いてくる仕掛けが随所にちりばめられています。参加者の多くが、「世界の展望台」と名付けられた少し高くなっている場所(写真奥)から店内を見渡していました。
2階の一角には「神保町本店」時代から引き続き「神保町いちのいち」が。2階にはさらに、専門書や文庫・新書の書棚がずらりと並んでいます。
2階の一角には「神保町本店」時代から引き続き「神保町いちのいち」が。2階にはさらに、専門書や文庫・新書の書棚がずらりと並んでいます。
3階へ。実用書、学習参考書、児童書などが揃う。
3階へ。実用書、学習参考書、児童書などが揃う。
3階中央は棚が放射状に配置される「みちびきの渦」。背の高い棚が並んでも閉塞感がなく、自然と奥の棚が視界に入ります。
3階中央は棚が放射状に配置される「みちびきの渦」。背の高い棚が並んでも閉塞感がなく、自然と奥の棚が視界に入ります。
棚の向こうにあるトークイベント会場(イベント中はカーテンで仕切られていました)。
棚の向こうにあるトークイベント会場(イベント中はカーテンで仕切られていました)。

建築史家・倉方俊輔さん×『散歩の達人』編集長・平岩美香のクロストーク

開店前の落ち着いた店内を隅々まで見て回り、いよいよクロストークが3階の会場で幕を開けました。登壇者は建築史家の倉方俊輔さんと、月刊『散歩の達人』編集長の平岩美香。

倉方さんは、2024年に始まった「東京建築祭」の実行委員長(2026年は5月16~24日開催予定)。『散歩の達人』には、2026年4月号(創刊30周年記念号)の企画「建築の30年」や、2025年5月号(神田・神保町・御茶ノ水特集)の「建築史家が選ぶレトロ建築4選」などにご登場いただいています。

高層ビルが次々と建ち、東京のスカイラインは大きく変わった。「でも、本当の変化は足元にあります」と建築史家の倉方俊輔さん。ここ30年で進化した「街と建築の捉え方」とは?
レトロ建築を紐(ひも)解けば、その街の歴史も見えてくる! 昭和初期の建物が点在する神田・神保町・御茶ノ水エリアで建築史家の倉方俊輔さんが「ここぞ!」と選んだ4つの建築をご案内。

『散歩の達人』では、「神保町」はこれまで1、2を争うほどの回数特集してきたエリアであり、読書や喫茶などテーマ特集でも何度も取り上げてきました。過去の神保町特集を振り返りつつ、神保町の変遷を概観します。

神保町のイラストマップを指し示しながら話す倉方さん(右)。建築史家目線の解説で、街の造りがどうしてそうなっているのかが見えてきます。
神保町のイラストマップを指し示しながら話す倉方さん(右)。建築史家目線の解説で、街の造りがどうしてそうなっているのかが見えてきます。

「東京建築祭」の盛り上がりと並行して、各メディアで解説者として出演する機会が増えたという倉方さん。重要文化財であることや、竣工年など、額面上のデータを知ることも大切ですが、実際に足を運んで魅力を感じること——倉方さんの話から、建築さんぽや街歩きをより楽しめるような視点が養われていく感覚がしました。そして、「東京建築祭」が多くの人に支持されている理由の一端も垣間見えた気がしました。

いよいよ神保町さんぽへ出発!

クロストークを経て、神保町の街へ繰り出します。この日は晴天に恵まれ、最高気温が25℃を超える夏日となりやや暑く感じるものの、比較的お散歩日和でした。

靖国通りを西進し、明治36年(1903)創業、店舗ビルは昭和6年(1931)完成の『一誠堂書店』、大正7年(1918)創業の『矢口書店』、さらに雉子橋通りへ折れ、明治30年頃創業、店は昭和8年(1933)築という『今荘』、と順に巡っていきます。

『一誠堂書店』では、倉方さんの解説に耳を傾けながら、最上部にある掲揚塔を皆で見上げていました。

『一誠堂書店』。
『一誠堂書店』。
『矢口書店』。
『矢口書店』。
通りの向かいに立つうなぎの『今荘』。当時は必ずしも珍しい造りではなかったかもしれないが、周囲が時代とともに変化していく中で変わらずにそこに残ったことで貴重なものとなった、といった話が印象的でした。
通りの向かいに立つうなぎの『今荘』。当時は必ずしも珍しい造りではなかったかもしれないが、周囲が時代とともに変化していく中で変わらずにそこに残ったことで貴重なものとなった、といった話が印象的でした。

『今荘』で折り返し、すずらん通りに戻ってきて訪れたのは老舗喫茶店『さぼうる』。お店の方のご好意で、午後に開催が控えていたイベント前の時間を頂戴し、“店内さんぽ”をさせてもらいました。参加者それぞれ、上から下までゆっくり見て回れる貴重な機会。均質的じゃない立体的な造りがゆえに「どの席も一等席」という倉方さんの表現に、店内を眺めながらうなずきました。

『さぼうる』。
『さぼうる』。
柱に掛けられているのは『散歩の達人』コラボトートバッグ。イベント後、『さぼうる』を再訪して購入してくれた参加者の方がいたそうです! ありがとうございます!
柱に掛けられているのは『散歩の達人』コラボトートバッグ。イベント後、『さぼうる』を再訪して購入してくれた参加者の方がいたそうです! ありがとうございます!
2026年は『散歩の達人』創刊30周年イヤー。2026年1月号から12月号までの1年間にわたり、特集エリアのお店にご協力いただき毎月異なる「散歩の達人スペシャルメニュー」が登場!第4弾は30周年記念号にあわせた拡大版! 『散歩の達人』とは切っても切り離せない街、神保町エリアから『さぼうる』『肆(ヨン)』の2店と、とっておきのコラボレーションです!

お店を後にし、『神保町シアター』、『南洋堂書店』、『文房堂』を見て行き、神保町さんぽはフィニッシュ。その建築ができた背景、そういう設えである理由——普段何気なく見ていた街の風景のひとつひとつに、新たな魅力を見出せると感じました。たとえ専門的知識がなかったとしても、“さんぽ的”に建築の妙を楽しめる、ということを。神保町さんぽの楽しみがより重層的になりそうです。

倉方さんが神保町を訪れる理由のひとつだという、建築・都市書籍専門店の『南洋堂書店』。倉方さんからは、建築としてのみならず、書店としても推せる店だということが語られました。
倉方さんが神保町を訪れる理由のひとつだという、建築・都市書籍専門店の『南洋堂書店』。倉方さんからは、建築としてのみならず、書店としても推せる店だということが語られました。

楽しい散歩から『三省堂』の会場に帰ってからは、質疑応答の時間。「散歩を楽しむコツ、街を選ぶポイント」「神保町の街としての価値」「お店の外観・内観のどこまでが建築で、どこまでが装飾なのか」「古い建物を今後どう守っていくか」など、多種多様な質問がゲストに向けられました。質問に答える流れで、倉方さんからは、建築を閉ざしたものにしないために、という「東京建築祭」への思いに関する言及も。

2026年4月に発売されたばかりの新刊『建築を旅する 歴史と地域を楽しむ「建築ツーリズム」のすすめ』(イカロス出版)。本イベントを通して伝わってきたエッセンスが垣間見える一冊、ぜひ書店で手に取ってみてください!
2026年4月に発売されたばかりの新刊『建築を旅する 歴史と地域を楽しむ「建築ツーリズム」のすすめ』(イカロス出版)。本イベントを通して伝わってきたエッセンスが垣間見える一冊、ぜひ書店で手に取ってみてください!
毎月、「今月のサンポマスター本」と称して編集部おすすめの本を紹介している本連載。街歩きが好きな人なら必ずや興味をそそられるであろうタイトルが目白押しだ。というわけで、今回は“サンポマスター本”6冊を紹介する。

イベントに関わってくれた全てのみなさまに御礼申し上げます。ありがとうございました!

ちなみに、トークイベント会場のすぐ横には「みんなでつくる たのしい神保町MAP」が。神保町愛を感じる多くの書き込みに、編集部の感慨もひとしおです。
ちなみに、トークイベント会場のすぐ横には「みんなでつくる たのしい神保町MAP」が。神保町愛を感じる多くの書き込みに、編集部の感慨もひとしおです。
『三省堂書店 神田神保町本店』が2026年3月19日にリニューアルオープン! そして神保町のご近所に編集部がある『散歩の達人』は、3月21日発売の2026年4月号で創刊30周年を迎えました。これを記念して、『三省堂書店 神田神保町本店』の3階に「みんなでつくる たのしい神保町MAP」を設置中。神保町の白地図に、みなさんのお気に入りの場所とエピソードを書き込んで一緒に地図をつくりませんか?散歩の達人/さんたつ編集部の中島・桑原がレポートします!

文・撮影=阿部修作(さんたつ編集部)