納豆の可能性を切り拓(ひら)き、湘南から世界へと羽ばたく
納豆。それは日本が誇る発酵食品で、栄養面は言わずもがな、免疫力や美容においてのポテンシャルも凄(すさ)まじい。海外ではスーパーフードとして取り上げられ、知名度だけでなく輸出額も右肩上がり。世界各国における健康志向の高まりはもちろん、ベジタリアンやヴィーガンがライフスタイルとして定着していること、さらにはいつの時代も日本食が不動の人気を集め続けていることも理由に挙げられそうだ。
とはいえ、納豆特有の匂いと粘り気に食べることを躊躇(ちゅうちょ)したり、敬遠したりしてしまう人はまだ少なくない。
神奈川県は大磯。海と山に囲まれた自然豊かな場所に、大豆の新たな価値を発信している大豆発酵食品メーカーがある。その名は『Shonan Soy Studio』。築80年ほどの古民家を改装したショールームには、自社商品の開発、製造、販売を行うスペースに加えてカフェも。
店頭で販売されているのはデビュー作の納豆「SOYFFEE(ソイフィー)」をはじめ、既存の大豆製品にとらわれない発酵食品、すぐ側にある大磯海岸の砂を練り込んだ陶器製品やロゴをあしらったアパレルグッズなど。カフェでは、季節限定のフレーバーが好評の自家製豆乳ジェラートや豆乳スムージー、こっくり濃厚な「みそラテ」500円といった体が喜ぶ、ここだけのメニューがめじろ押し。
開業から7年。時代の最先端を行く商品やメニューを目がけて、遠方から足を運ぶ人が年々増えている。「地元にしっかり根付くように、国内で認知されるメーカーになるように活動してきました。今後は、当初から視野に入れていた海外展開に力を入れていきたいですね」と、展望を話してくれたのはオーナーの小野岡圭太さんだ。
日本の発酵食品が世界の人々の健康と生活を支える
伸びしろに気づいたのは、高校卒業後の大学生活を送ったアメリカだった。当時から豆腐や味噌など、日本で安価に買える大豆発酵食品はいい値で販売され、需要もそれなりにあったという。「ただ、納豆に関しては食べられないという海外出身の友人が多かった……理由はやっぱり匂いと粘り。ここを解決すれば」と、納豆に可能性を感じ、会社を立ち上げてからは独自に研究、開発を繰り返す日々。
現在では匂いも粘りもない、コーヒー風味の納豆「SOYFFEE」を筆頭に、いつでもどこでも片手で気軽に食べられる納豆のスナック「ナットウジャーキー」、大豆発酵食品をベースにしたパウダー状のドレッシング「発酵サラダふりかけ」がラインアップ。商品のどれもが栄養価はそのままに、納豆の一般的なイメージを根底から覆す、思いがけないものばかり。「これが本当に納豆?」と疑わずにはいられない、いい意味で“らしさ”がないものばかりだ。
「自分達の役割は、納豆の間口を広げることです。国内外問わず苦手意識を持っている人が手に取りたくなる、食べたくなるおいしいものを引き続き模索し、日本の伝統食品そのものももっと普及させていきたいと思っています」
そしてもう一つ、発酵食品を通して積極的に行っていることが支援だ。海外生活が長かった小野岡さんは、経済格差を目の当たりにしてきた。企業理念に「あなたのひと口が誰かのひと口に」という意味を持つ「Bite for Bite」を掲げ、売り上げの一部を新興国や地元のこども食堂などに寄付している。
「実現には至っていませんが、あらゆる格差を縮める手段として各国のメーカーとライセンス契約を結び、その土地の雇用創出につなげられたらと考えています。日本の大豆発酵食品を世界中に広めるという点においても有効的ですしね」
納豆がもたらすパワーは計り知れず、想像以上の価値を持っていた。健康面だけでなく、世界のさまざまなことを担う“救世主”になるのかもしれない。
気になる商品ラインアップ
SOYFFEE Original 702円
大豆のほっくり感と甘さが楽しめる大粒を採用。ラオス産ピュアアラビカコーヒーで煮ているので香ばしい。納豆特有の粘り気と匂いはなく、デザートやヨーグルト、サラダなどのトッピングにしても。
ナットウジャーキー各646円
納豆の旨味と栄養素が凝縮した、オイルフリーのドライ納豆。低温乾燥でしっとり食べ応えのある食感に仕上げ、かむほどに納豆を感じる。木桶醤油、ペッパーガーリック、麻辣、梅しその4種類。
発酵サラダふりかけ 各698円
納豆、味噌、醤油をベースにした、使い勝手のいい粉末ドレッシング。発酵食品として栄養価も高く腸活にも打ってつけ。イタリアン風のハーブ&ポルチーニと韓国風のガーリック&エゴマがある。
miso-bushi 2376円(白) 2916円(黒)
ハードチーズのように使う量だけ削ってかけられる固形味噌。魚料理に合う白味噌と肉料理向きの黒味噌の2種類。神奈川県小田原の老舗味噌蔵『加藤兵太郎商店』の木桶仕込みの味噌を使っている。
取材・文=新居鮎美 撮影=加藤熊三
『散歩の達人』2026年3月号より






