やみつきになる神業級の和製ドッグ『goddog』

『goddog』のオーナーの愛犬・たまちゃんと、窓から顔を出す店長の満尾優さん。「ホットドッグを散歩のお供にね!」。
『goddog』のオーナーの愛犬・たまちゃんと、窓から顔を出す店長の満尾優さん。「ホットドッグを散歩のお供にね!」。
goddog700円~、セットの大森貝塚チャウダー300円、自家製レモンスカッシュ450円。
goddog700円~、セットの大森貝塚チャウダー300円、自家製レモンスカッシュ450円。
平日、隣の美容院にいるよ!
平日、隣の美容院にいるよ!

『神名美容室』の店主・神名康至さんが、隣の元ガレージで2024年に始めたホットドッグ店。カウンター6席の店内で供される「goddog」はなんと細かく刻んだガリ入り! 甘酸っぱさと食感が絶妙で、粗びきソーセージ、自家発酵のキャベツ、地元ベーカリー特注の甘めのパンとの相性は神業級。夜は神名さんこだわりの日本酒が飲める。

11:00~18:00(土・日・祝は~19:00)・バータイムは18:00~、月・火休。
☎03-4363-6815

食卓の買い物も、防災対策にも!『MAX CAMP』

「マニアじゃなくても楽しいよ」。
「マニアじゃなくても楽しいよ」。
自社製品だけでなく池上の『水牛食品』など他メーカーの調味料も並ぶ。
自社製品だけでなく池上の『水牛食品』など他メーカーの調味料も並ぶ。
店頭には調味料の自販機も!
店頭には調味料の自販機も!
黄金比率の万能すぱいすまっくす842円。
黄金比率の万能すぱいすまっくす842円。
ゴリゴリまっくすパンチ891円。
ゴリゴリまっくすパンチ891円。

2021年に開店したキャンプ用品店で目を引くのは、調味料やインスタント食品など食料品コーナーの充実ぶり。店主の松浦高士さんは食品会社の経営者でキャンプ好きゆえ、キャンプと食を融合させた店を目指した。「地元の人も来やすいように、毎日の料理や災害時にも使える品を揃えています」。気軽な商店のように立ち寄りたい。

11:00~19:00(土・日・祝は10:00~18:00)、木休。
☎03-6320-2941

童心に返る、懐かしき素朴なおもちゃたち『大川工芸』

太鼓すもう1500円。
太鼓すもう1500円。
けん玉800円。
けん玉800円。
吊り人形 ピエロ600円。
吊り人形 ピエロ600円。

コマにけん玉、だるま落としに輪投げ、ベーゴマ、凧(たこ)、メンコに紙風船……と、100品以上の民芸品や小物玩具を取り扱う民芸玩具の卸問屋。1980年の創業当時は卸だけだったが、国内メーカーの相次ぐ廃業で20年ほど前からは木製玩具の製造も担うようになったという。卸価格で小売りもしており、店先と店内の一角に並ぶ品々には思わず、「懐かしい~」を連発してしまうはず。

9:00~17:00、土・日・祝休。
☎03-3768-3361

ほっとするお茶で巡る日本旅行『旅する茶屋』

「抹茶+甘酒は元気をくれます」。
「抹茶+甘酒は元気をくれます」。

旅を愛する日本茶ソムリエの津田尚子さんが、改装された木造家屋で営む日本茶カフェ。高千穂の釜炒り茶640円、徳之島のサンルージュ660円など、さまざまな産地の茶を単一品種にこだわり、益子焼の大ぶりのマグカップで堪能できる。香ばしい皮のかえる最中300円~のあんにも旅先で出合った食材を多用。「みなさんにも旅気分を味わってもらえたら」。

13:30~19:00LO、水・木・旅に出ている日休。
☎080-8410-5511

見れば見るほど引き込まれる小さな芸術品『ボタン専門店 みかね』

フランス製のボタン1800円。
フランス製のボタン1800円。
フランス製の貝のボタン2000円。
フランス製の貝のボタン2000円。
ボタンヘアゴム3600円。
ボタンヘアゴム3600円。

天井までぎっしりと収まるボタン箱。昭和20年代の創業時から同じこの場所で、2代目の三林歌子さんが娘さん、お孫さんと営む。扱うのは半世紀以上前に仕入れた舶来品のビンテージボタン。貝にメタル、ガラスに木に水牛などと材質も多彩で、もはや小さな芸術品だ。その数なんと1万種類以上とか。「お持ちの服もボタンを替えるだけで素敵になりますよ」。

11:00~16:00、月・水・金のみ営業。
☎03-3771-8408

目移り必至、魅惑のアレンジドリンク『TiMELY Coffee&Drink Stand』

「ひといきついてもらえたら」。
「ひといきついてもらえたら」。
バニラフレーバーピスタチオラテ(S)550円。
バニラフレーバーピスタチオラテ(S)550円。
ほろにがイチゴモカ(S)510円。
ほろにがイチゴモカ(S)510円。

築68年の木造アパートの1階に、2023年に開店。季節限定品含めて20種類以上ある飲み物は、凝ったアレンジドリンクが多く、トッピングも可。店主・山田勝也さん直筆の構成図付きメニューボードが店先の小窓やレジ回りで誘惑するので、何にしようか目移り必至! 軽食なら海苔のりトースト350円もぜひ。焼き海苔と海苔の佃煮、たっぷりバターが後を引く。

7:30~18:00(土・日・祝は~17:00)、火休。
☎なし

イレール=“非日常”へようこそ!『イレール・イグレック』

牛頬肉の赤ワイン煮 マッシュポテト添え3200円、パテ ド カンパーニュ1600円、ワインはボルドーのキュヴェ デ ガレ5700円。
牛頬肉の赤ワイン煮 マッシュポテト添え3200円、パテ ド カンパーニュ1600円、ワインはボルドーのキュヴェ デ ガレ5700円。
「気軽に話しかけてくださいね」。
「気軽に話しかけてくださいね」。

人形町のビストロ『イレール』が2025年末に開いた姉妹店。白を基調にした隠れ家のような空間では約30品あるメニューを肩ひじ張らずに味わえる。八角やクミンが効いた牛頬肉の赤ワイン煮、手切りにより肉々しさ満点のパテドカンパーニュ、いずれもシェフ・山口拓己さんの技とセンスが光る。現在約50種揃うボトルワインは直接保冷庫を見て選べるのがうれしい。

17:30~22:00LO、日・第1・3月休。
☎03-6271-6630

起伏に富んだ立体感も街の醍醐味(だいごみ)

今年(2026年)、大森駅は記念イヤー。ということで少し歴史を紐(ひも)解こう。駅開業の150年前、この付近は新井宿村という農村。1km以上離れた海側の“大森”村から駅名を取ったのは、東海道の地名として、海苔の産地としてすでに知名度があったからとか。開業翌年にはアメリカ人動物学者・モース博士が新橋へ向かう汽車で崖に貝殻の地層を発見。この「大森貝塚」も大森を有名にした立役者だから、貝あっての大森!と、駅西側で史跡の碑を拝み八景坂を下る。

大森貝塚の石碑近くの地面に、学べるタイル群。
大森貝塚の石碑近くの地面に、学べるタイル群。
闇(くらやみ)坂から分岐する急坂も、驚異の勾配率16%!
闇(くらやみ)坂から分岐する急坂も、驚異の勾配率16%!

起伏に富んだ台地で坂ばかりの山王は、高級住宅地で、昔ながらの商店街もある。老舗の『ボタン専門店みかね』に立ち寄ると、わわ、あっちにもこっちにも貝のボタン。黒蝶貝(ちょうがい)に白蝶貝、メキシコ貝……。神秘的な色、光沢はため息が出るほど美しい。

「昔は洋裁屋さんがたくさんいて、山王のマダムたちの服のために、ボタンを選びによく来ていました。大森といえば、貝塚だし、室生犀星も住んでたし(馬込文士村)、海苔屋さんですしね」とは、店主の三林歌子さん。大森の不滅のアイデンティティ。“これがある!”って街は強い。

巨大タイヤの遊具がインパクト大の大森北公園。
巨大タイヤの遊具がインパクト大の大森北公園。

一方、東側に下りればフラットな商・工業地。所々に新しさも見られるが、変わらぬアーケード商店街や飲み屋街は地方都市感も漂い、じんわりと郷愁を誘う。新店の『イレール・イグレック』の山口拓己シェフも「故郷の岡山の繁華街を思い出す。都心とは違う気張らない感じが好きです」と言っていたけど同感だ。

凛々(りり)しいたまちゃん(犬)のいる『goddog』では、ガリが入った名物のホットドッグを頬張る。が、ここにも貝!「大森貝塚チャウダー」の驚くほどのアサリの量に、縄文を想い、海を想う。明治時代に開かれた大森海水浴場はもうないけれど、大森海岸通り、大森海岸駅の名に海を感じて、京急線沿線を散策する。

PEACE ISLANDに宿る下町気質

駅名の字体がどことなくかわいい大森駅西口。
駅名の字体がどことなくかわいい大森駅西口。

なぜここにキャンプ用品店? と思った『MAX CAMP』は棚一面の調味料、非常食にテンションが上がる。

「僕は生まれも育ちも平和島。最近は平和島公園にキャンプ場もできたしキャンパーも来ますが、地域にも、平和島を知らない人にも開かれた店を目指したい。地元を発展させたいんですよね。とりあえず今、“PEACE ISLAND”ってTシャツを作ったりしています」と、熱い代表の松浦高士さん。平和島=競艇のイメージが強かったけど、それより今は穏やかな住宅地の顔。街にも人の気質にも下町が残っている。

『TiMELY Coffee & Drink Stand』はアレンジドリンクが楽しめる今風の店だが、老若男女がどしどしと訪れる。「一人で営むのでご迷惑をかけることも……」と店主の山田勝也さんは、カウンターに時間潰しの本を並べたり、よほど長く待たせた人にはそっとおまけしたり。時には「お疲れですか? 甘めに作っておきますね」なんて常連さんへの気遣いも。この温かさ、近所なら通っちゃうよ~。

頭を下げないとくぐれない金山神社の低い鳥居。
頭を下げないとくぐれない金山神社の低い鳥居。
大森海岸通りをかつて走った1両の路面電車・大森支線の敷石が!
大森海岸通りをかつて走った1両の路面電車・大森支線の敷石が!

環七を越え、町工場に学校、神社に川に路地を通り過ぎて見つけたのは、『大川工芸』。けん玉やコマの素朴なおもちゃがこの街にはまだ似合う。

「街の人は、人懐っこいけどさっぱりしてる。心地いい距離感なんです」。半分ガラス面の独特な古民家で『旅する茶屋』を営む津田尚子さんはそうほほえむ。その感じって、自身も暮らす大森町の人の好みを表したという「大森町ブレンド」みたい。基本すっきり、でも甘みと旨味もほんのりあって、もう1杯飲みたくなる。

それはこの広い大森エリアも同じ。情景も気質も決してひと括りにできないけれど、歩くたびだんだん変わる味わいのグラデーションが楽しくて何度でもお代わりしたくなるのだ。

谷間の飲み屋街、“地獄谷”の正式名称は「山王小路飲食店街」。
谷間の飲み屋街、“地獄谷”の正式名称は「山王小路飲食店街」。
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大森駅開業150年グッズも!

ロゴボールペン990円。
ロゴボールペン990円。
大森海岸通りアンバー(330ml)1000円。
大森海岸通りアンバー(330ml)1000円。
地獄谷IPA(330ml)1000円。
地獄谷IPA(330ml)1000円。

2026年開業150年を記念して、大森駅ではさまざまな限定商品が登場。地域と企業がタッグを組み、「いつものとおり」「大森海岸通りアンバー」といった大森の“通り”をテーマにした記念ビールも継続的に販売している。「地獄谷IPA」はアルコール度数8%で香りも強いがボディは軽やかで、地獄と天国を表現。販売場所は大森駅中央改札外『NewDaysミニ大森1号』(ロゴボールペンはなくなり次第終了)。

取材・文=下里康子 撮影=高野尚人
『散歩の達人』2026年2月号より