すべて偶然!? アルバイターだった宮崎さんが柏のカフェ店長になるキッカケとは
柏駅東口は、柏神社周辺に雰囲気のいいカフェが点在している。『kikkake』もそのひとつ。駅前から柏神社を横目に進んだところにあり、街をぶらぶらしながら行くにはちょうどいい距離だ。
店内に入ると、アメリカンビンテージを思わせる雑貨が並べられ、テーブル席、ソファ席、掘りごたつ席と客席もバリエーションがあってユニークだ。
このカフェがオープンしたのは2015年4月。店主の宮崎恵里子さんにとって、開業は長年の夢というよりも、いくつかの縁が重なった結果だった。
もともとアルバイトで勤務していた飲食店での経験はホールが中心。調理を専門に学んだわけではないが、独学で料理や焼き菓子の腕を磨いてきた。
「作ったお菓子をアルバイト先でを提供させていただきながら、『ホッとできる空間を自分で作れたら』と思っている時期に、現在のオーナーと出会い、縁あってこの場所で店を構えることになったんです」
開店当初から、ひとつのコンセプトや看板商品を決め込むことはなかった。お酒を飲む人も飲まない人もいる。和食が好きな人もいれば、洋食を選びたい日もある。体調や気分で食べたいものは変わるから、「この店はひとつの型に収めなくていい」。
宮崎さんは時間を気にせず好きな店づくりを大切にしてきた。
「時間を気にせず、好きなときに立ち寄れる店でありたいんです」と宮崎さんは話す。一方で、営業時間も強く意識した。これまで飲食店で働いてきたなかで、休憩時間に「もう14時だから閉店していて入れない」と感じる場面が何度もあったからだ。その思いから、通し営業を基本とした。
駅から少し離れた立地もあり、客層は近隣の常連が中心だ。いつでも、誰でも迎え入れる懐深い存在感が静かに日常へ溶け込む。その積み重ねが、10年を超える時間につながっている。
本場よりライトな食感のパラタでいただくスパイスカレー
お昼の名物になっているのが、カレーとパラタのプレート1200円(ランチ以降は1450円)だ。昼どきになると、このメニューを目当てに訪れる客も多い。
一般的にパラタとは、インドを中心に食べられている全粒粉で作った平たいパンのことで、デニッシュのようにサクッとモチモチな食感だ。主にカレーとともに食べるもので、宮崎さんが南インド出身のシェフに教えてもらったレシピで提供している。
「本来はギー(やバター)を練り込んで作るんですが、うちは油脂が控えめなのでカリッとサクッとした食感でヘルシーなんです」
チキンカレーは宮崎さんオリジナル。辛さは中辛程度で、旨味や香りが楽しめるよう設計されている。全粒粉などで作ったパラタは香りがよく、スパイスが効いたカレーにぴったりだ。
バターで焼く豆乳シフォンケーキとブレンドコーヒーのマリアージュ
カレーと同様に定番人気を誇るのが、豆乳シフォンケーキ(単品)680円とkikkakeオリジナルブレンド600円。それを聞いてぜひいただいてみたくなった。
メニューには「単品の場合は、半分をバターで焼きます」と書いてあって驚いた。
そもそもシフォンケーキは焼き菓子なのであって、それをバターで焼く!? 想像しただけでおいしそうだ。
豆乳シフォンケーキには国産小麦粉やきび糖、国産豆乳を使用。軽い口あたりと、後味のよさを大切にして作っている。
ピュアな味を追求しているのかと思えば、シフォンケーキをフライパンで焼くという常識を破る発想が出てくるから宮崎さんは面白い。
「たまに、フレンチトーストを出す時があるんですよ。でも、意外と手間がかかる。それである時、『あ、シフォンもバターで焼いたらおいしいんじゃないかな』と思って、やってみたらいろんなお客さまによろこんでいただけました(笑)」
スイーツは定番人気のガトーショコラやチーズケーキがあるのだが、常連に一番人気なのはこの豆乳シフォンだそう。
まずはバターで焼いた方をひとくち。表面はカリッとしていて、バターがジュワッと口に広がる。「これだけでリッチな気分」と、口角が上がる。中はきめ細かくてほどよく弾力のある口あたり。口に運ぶとほのかに豆乳のやさしい甘みが広がる。バターで焼いていない方を食べると、豆乳の味や香り、しっとり感をより強く感じられた。
基本はこの日いただいたプレーンで、たまに季節に合わせてバナナやチョコを練り込んで焼くこともあるそうだ。
続いてコーヒーをひとくち。これは、柏市内にあるスペシャルティコーヒー豆専門店『豆壱(まめいち)』による、この店オリジナルのコーヒー豆だ。「うちのケーキをいくつか食べてもらい、ブレンドしていただきました」というから、豆乳シフォンに合わないわけがない。
ケーキの甘さを邪魔しない穏やかな味わいで、飲み進めるほどに香りが立つ。
それでも、食べ終えたあとに残るのは、不思議な安心感だった。日常の延長にあるおやつとコーヒー。その距離感こそが、『kikkake』らしさなのだ。
夜はしっかり食事。みんなの健康を願うやさしいごはん
夜の時間帯は、食事メニューがさらに充実する。スイーツとお茶だけの利用もできる一方で、しっかり食事をとりたい人や、お酒を楽しみたい人にも対応している。
メニューはその時季に手に入る食材を軸に構成。野菜や肉、魚をバランスよく取り入れ、体に負担の少ないものを意識しているという。特定のジャンルに絞らず、その日の素材と向き合いながら、一品ずつ用意している。
「しっかりごはんも食べてほしいし、しっかり飲んでいくのもいいんです」と宮崎さん。カフェとしても、食事やお酒を楽しむの場としても使える余白を残しているのは、昼と同じ考え方の延長にある。
貸切営業にも対応しており、用途に合わせた利用が可能だ。
「ここへ来た人たちがリセットできたり、居心地の良さを感じてほしいです」と話す宮崎さん。その言葉どおり、ごはんを食べたい気持ち、お酒を飲んでくつろぎたい気持ちなど、さまざまな過ごし方を受け止める夜の時間が、店には用意されている。
次はお気に入りの文庫を持って、ふらりと立ち寄ってみたくなった。
取材・文・撮影=パンチ広沢








