【1】純白の隠れ家カフェで温かみを感じる
週後半に開かれる癒やしのサードプレイス『coffee house takizawake』
「人を笑顔にしたい」との思いで瀧澤昂大さんが2023年に開いたカフェは、思い出のある実家の部屋を8年かけてじっくりと、細部までこだわって改装。ガレージは半地下のような客室に、納戸は本棚に、押し入れは子供用の小部屋に……と聞けば納得、そして温かい気持ちになる。コーヒーは複数の焙煎所から取り寄せ、ハンドドリップで抽出。相性抜群のスイーツもぜひお供に。
営業は木・金・土・日のどこかの曜日の9:00~19:00。
【2】インドネシアへプチトリップ
“ジャワ人の食堂”で本場の味に舌鼓『Warung Wong Jowo(ワルン ウォン ジョヴ)』
インドネシア出身の石井アングレニーさんが2023年から営む“ジャワ人のワルン(食堂)”。靴を脱いで上がる一軒家の店は1階が母国の食料・雑貨店、2、3階で食事ができる。メニューや値札に日本語はなく、50種類以上ある料理は調理も味付けも本場のまま。キャッサバの葉や山羊肉、ナマズなど普段あまり味わえない食材とも出合える。気軽に異文化体験!
8:00~22:00(土・日は~24:00)、無休。
☎090-6871-1088
【3】おにぎりの次はキンパの時代だ
彩りとボリューム!断面にときめく海苔巻き『おりまき』
キンパをこよなく愛する店主が2022年から始めた専門店では、定番品+季節限定品で15種類以上の味が並ぶ。食材は米も海苔も国産で、ぎっしり詰まった具材の量と彩りに目を見張る。ホウレンソウではなく江戸川区自慢の野菜である小松菜を使うのもポイントだ。ふわっと香るゴマ油の香ばしさもたまらない。
11:30~19:30(材料がなくなり次第終了)、水休。
☎03-6458-0033
【4】名松のパワーを全身で浴びよう
樹齢600年の“東の横綱”に神仏の姿を見る『影向(ようごう)の松(善養寺)』
開基は大永7年(1527)といわれる古刹の境内に、とてつもない存在感。枝先まで生き生きと四方に広がるその大きさは、高さ約8m、東西に31m、南北に28m。日本一の繁茂面積に“東の横綱”と称される樹齢600年の黒松だ。「影向」とは仏教用語で、神仏がこの世に姿を現わすこと。その名にふさわしい神々しさでそばに寄る者を包み込んでくれる。小岩が誇るパワースポットに間違いなし。
9:00~17:00。
☎ 03-3657-6692
【5】自家製あんこでほっとひと休み
ほっぺたゆるむ夢のようなあんこざんまい『あんたいむ』
会社員時代に趣味だったあんこ作りを思う存分したい! と藤村功さんが2023年の定年退職後に選んだのは、甘味カフェの道。北海道産の高品質小豆「雪むらさき」を100%使った自家製のあんこが自慢で、紫色が美しく、優しい甘さだ。あんみつ、おしるこ、どら焼き、あんバタートーストで堪能を。信州の天然糸寒天、もっちりしたどら焼きの皮まで手作りとは恐れ入る。
12:00~17:30LO、金休。
☎なし
【6】間近で聴ける生歌にしびれたい
これぞ小岩の元祖ミュージックステーション『音曲堂』
昭和6年(1931)創業、今や希少な音楽ショップ。再開発で2024年にサンロードに移転したが、名物の歌謡キャンペーンは健在だ。昭和通りのハワイアンカフェ『ブルーオレンジ』を会場に、多い月は10回以上開催する。明日のスターもベテランも間近で歌声を聴けるチャンス。気になる人のCDを買って気軽に参加してみよう。演歌・歌謡曲のよさを再発見できるはず。
10:00~18:30、月休。
☎03-3659-3131
【7】「静」と「動」。今夜はどっちにする?
フレッシュな生酒とハイレベルな料理にほろ酔い『角打ちナダヤ』
戦前創業の『ナダヤ酒店』に2019年にできた角打ち。倉庫を改装した秘密部屋のような店で飲みたいのはこだわりの生酒だ。全国約50の蔵元から仕入れ、中には希少な銘柄も。「-7℃の冷蔵庫で管理するので鮮度抜群です」と3代目の渡部知佳さん。旬の食材で和食シェフが手掛ける豊富な創作料理も、角打ちレベルを超えている!
営業は木・金の18:00~23:00と土・日の15:00~23:00(酒屋は11:00~19:00、水休)。
☎03-3657-1871
神経を研ぎ澄ませ静かにジンと向き合う『Bar Soutsu』
“飲む香水”と言われるジンに魅せられた小野寺総章さんが営むジン専門店。壁に設えた棚いっぱいに並ぶ国内外のジンは1000本以上!「 ジンはカクテルに多用される拡張性の高さと、草根木皮を使ったその土地の個性が出るのが魅力です」。ロウソクの明かりだけの暗い店内は視覚情報を遮断し何にもとらわれず過ごせるようにとの思いから。静かな心でジンと向き合えそう。
19:00~翌2:00、木休。
☎03-5876-8016
新しい扉たちが五感を刺激する
小岩の印象はと問われたら、私はやっぱり商店街。JR小岩駅改札を出て、地元出身の名横綱・栃錦(ブロンズ像)が差し出す右手方向へ下りれば南口。サンロード、昭和通り、フラワーロードと半放射状に延びた商店街が出迎えるこの景色、ちょっと機関庫を見ているようでワクワクするんだなあ。
その商店街には今でも歌謡キャンペーンを続ける音楽ショップが。数々の有名歌手が訪れる『音曲堂』でこの日、新曲を歌うのは、井の頭公園の歌姫こと、あさみちゆきさん。会場はカジュアルな雰囲気ながら、数メートルの至近距離で迫力ある生歌を聴けるなんて感激。知らなかった歌手、歌と出会える新しい扉なのかもしれない。
街を歩けば、外国人の多さにも驚く。道端で談笑する子供を見れば、異国の顔立ちだったりする。観光ではなく生活で街に溶け込む姿がここにある。当然、飲食店もエスニック料理のオンパレード。中国、韓国、インド、ネパール、タイ、ベトナム……と国際色豊か。でもまさか、住宅地の民家でインドネシア料理が食べられるとは!
「小岩の周りに住むインドネシア人は多いけれど、食堂はうちしかないんです」と話す『Warung Wong Jowo』の店主・石井アングレニーさんも日本人の夫と小岩に暮らす。片言の日本語の店員さんたちと意思伝達に苦戦する状況はいつか行った海外旅行を思い出す。想像と違う料理が出てきたとしても、ひと口食べれば、「Enak(エナッ=おいしい)」!
触れずに感じる名松のただならぬ生命力
腹ごなしに向かった先は、小岩の名刹・善養寺。国の天然記念物である「影向の松」は御年600年以上! 樹勢の衰えを乗り越えた姿はあまりにも大きくたくましく、枝先まで健やかだ。「中国の気功師の方から『この木はとてもパワーがありますね』と言われました」とご住職。触れることはできないがギリギリまで近づいて対峙すると、悠久の生命力を感じずにはいられない。
小岩駅北側を巡れば、『あんたいむ』で炊きあがるあんこの幸せな香りに包まれて、『おりまき』ではキンパの多彩な具材の食感を噛みしめて。たどり着いたのは、週後半にひっそりと開く『coffee house takizawake』。遊び心も見え隠れする洗練された白い空間も、後味のいいコーヒーももちろんいい。だけど一番素敵なのは、「一人で営んでいるのでお待たせしてしまいますが、そのお時間も含めてゆっくりお過ごしくださいね」という店主・瀧澤昂大さんの言葉と笑顔。こちらも優しい気持ちになる。
さて、締めにはやっぱり酒場で一杯。酒屋やバーも多い街らしく、まずは角打ちへ。『角打ちナダヤ』は味わいごとにグラスを替えて供される生酒を楽しみたい。刺し身も肉料理も極上ですっかり満腹に。神秘的な雰囲気すら漂う『Bar Soutsu』では、めくるめくジンの世界に心酔。気づけば飲み食いばかりの散歩だったけど、小岩に五感を大いに刺激された。
取材・文=下里康子 撮影=高野尚人
『散歩の達人』2026年1月号より








