あそこに王蟲、こちらにも王蟲

こうなったらもう、なんでも王蟲に見えてくる。深夜、小田急線登戸駅から向ヶ丘遊園駅方面へ歩いていたら、高架下に赤い光がたくさんある!

小田急線登戸駅の近くの高架下駐輪場。怒れる王蟲のようにたくさんの赤い目が光る。

駐輪場の自転車を固定するラックのひとつひとつに、赤いランプがついていて、駐輪するとランプが消えるのだが、深夜は自転車がほとんどないから、ランプが点きまくって、怒れる王蟲になるのだ。

もう15年前のことだが、JR武蔵五日市駅から金比羅山に登る闇歩きツアーをやったときのこと。

山上から下界を見下ろすと、五日市街道の信号が15基くらい連続して青になっている。しばらくすると、真ん中あたりから赤信号がうわーっと広がりだした。それを見た参加者のひとりが、「王蟲が怒った」とつぶやいた。こういうふうに信号が連鎖的に変わるさまは、夜の山の上でときどき見る。

金比羅山からの夜景は腐海の底のよう

そのようすを動画に収めてみようと思い、ひとりで夜の金比羅山に登ってみた。

ところが、信号が連鎖的に変わらない! プログラムが変わってしまったのだ。とはいえ、五日市街道の街路灯の明るい光が連なりながらうねるさまは光る川のようで、手前の暗い木立との対比が素晴らしく、この金比羅山公衆トイレ前からの夜景色はなかなかのものだ。

金比羅山のまっすぐな黒木の幹が、腐海の底に落ちる砂柱のよう。

たぶん初日の出を拝むために東側の木々が間引かれていて、そのまばらな黒木のスーッとまっすぐなシルエットが、下から生えているのにまるで上から落ちてきているように感じられて、腐海の底にサーッと落ちる砂柱を思い出した。

樹上でなにか小動物が騒いでいる。キツネリスのテトに違いない。

ついでにもうひとつ。

一昨年、静岡県掛川市の小笠池周辺で闇歩きツアーをやったのだが、その下見で訪れた六枚屏風岩が見事だった。崖と崖にギチギチに挟まれた、人ひとりがやっと通れる隙間が、屏風みたいに折れながら続いている。

どんどんその隙間を歩くと結局どこにも抜けられないが、風の谷から酸の湖(うみ)に抜ける、崖が迫った細道にそっくりなのだった。

掛川の六枚屏風岩。酸の湖へ行けそうな隙間。

ではまた。闇の中で逢いましょう。

写真・文=中野 純