駅近の路地裏で見つけた、隠れ家のようなレストラン
柏駅東口から徒歩5分。ビックカメラの裏手から旧水戸街道沿いの細い路地を進むと、赤いレンガの壁が印象的なレストランが現れる。
ここは『ワイン&クラフトビール肉バル ティグリ』(以下『ティグリ』)。2018年にオープンした、ワインと多彩な肉料理が味わえる店だ。新鮮な食材で作るイタリアンメニューも豊富にそろう。
「よく“隠れ家みたい”って言われますけど、実際は駅からすぐなんですよ」とオーナーシェフの中村さんは笑う。
外からは落ち着いた雰囲気に見えるが、扉を開けると、解放感のあるオープンキッチンと、ワインのボトルが並ぶ棚が出迎える。
この店に来るのはワイン好きの30〜50代が中心。週末には松戸や船橋などから訪れる人も少なくないという。
「柏は居酒屋が多い街なんです。チェーンも個人店もたくさんある。でも、ワインを気軽に飲めるお店って意外と少なかったんですよね。だったら自分で作ろう、と思ったのがこの店の始まりです」
柏は、古くからの個人店と新しい店が混在する街。再開発が進む一方で、老舗のとんかつ屋やうなぎ屋も健在だ。
そんな街で、“日常の延長線上にあるワイン時間”を提案しているのが『ティグリ』だ。
原価に近い価格で飲める良質なワインと、肉の旨さを引き出すイタリアンメニュー
『ティグリ』の特徴のひとつは、ワインを“原価に近い価格で飲める”という仕組み。
店では「盛り上がり料」というユニークなシステムを導入していて、2時間480円のチャージを払えば、グラス・ボトルともにお手頃な価格で楽しめるというものだ。
「グラスワインを1杯だけだと700円くらいなんですけど、何杯か飲めば1杯あたり400円台になる。飲めば飲むほどお得になるんですよ」と、中村さん。常連の中には、ワインリスト片手に「次はどれにしようか」と相談しながらボトルを選ぶ人もいるとか。
ワイン好きの人にも響くように、詳しいスタッフがセレクトしている。「“知る人ぞ知る”ようなワインと、定番の王道ワインを半々くらいで置いています」。
そしてもうひとつの主役が、肉料理だ。
「いっぱいワインを飲んでもらって、あとは肉を食べてもらう。それがうちの基本です」
看板メニューは、骨付きで焼き上げる「ローストチキン」。皮はパリッと香ばしく、中はしっとりとして噛むほどに肉の旨味がにじむ。夜のコース(2時間飲み放題付き4980円)では、このチキンがメインを飾る。
「骨付き肉のお肉って、骨のまわりが一番おいしいんですよ。だからソースで飾るよりも、素材の味で勝負したい」
牛・豚・鶏などのグリルやステーキもそろい、100g単位でオーダー可能だ。調味料やソースは控えめに、焼き加減と肉質のバランスを大事にしている。
きっと、ワインの香りに包まれた店内では、焼ける音が音楽のように響くのだろう。飲む楽しさと食べる楽しさがひとつに溶け合っている空間だ。
女性客に人気のランチ。主役は自家製ラザニアと日替わりパスタ
中村さんの話を聞いているだけで肉にかぶりつきたくなったが、メニューを見るとランチもすごい。
ランチメニューはパスタ、ローストチキン、ローストビーフ、ハンバーグ、ラザニアなどで、価格帯は1500〜2000円前後と手頃だ。
すべてのセットにサラダが付き、しかもおかわり自由というから驚いた。
麺から自家製という一番人気のラザニアにもかなり食欲をそそられたが、日替わりの「シェフおすすめパスタ」1200円に決めた!
パスタメニューは月替わりで、季節の食材を生かしたパスタが並ぶ。近年の気候変動を考えると、そのときの旬も楽しみながら食事できることは尊いと思うのだ。
「ランチでも“ちゃんとしたものを食べた”という満足感を持って帰ってほしいんです」そんな中村さんの言葉は、提供された料理を見て偽りないと思った。
オーダーをするとすぐにサラダが提供された。昼休みの時間が限られているから、パスタを待っている間に食べ始められるのはタイムロスにならなくていいかも。
サラダは、リーフレタスやタマネギ、ニンジンのほか、自家製鶏ハムやイタリア風オムレツ、大麦とツナと豆のサラダが盛り付けられている。エキストラバージンオイルとビネガーのドレッシングがあっさりとして合う! 思わずおかわりしようとしたところでメインのパスタがきた。
ゴロンとした鶏ひき肉はフワッとやわらかく、フレッシュなトマトの甘酸っぱさとトロッと甘いナスに、大きめに切ったニンニクがパンチをくれる。すべての素材にまろやかな塩味の一体感でまとまっているところへ、衝撃的なニンニクの香り! これが食べていて楽しい。
完食するとほどよい満足感。ボリュームはしっかりしているが、午後の仕事にも響かない。
白い皿に盛られたサラダとパスタ。グラス越しに差し込む昼の光。ゆったりとした空気の中で楽しむランチタイムはとても優雅だ。
パスタはディナーでも提供しているというから、今度はお酒を片手に、また違った雰囲気で食べてみたい。
取材・文・撮影=パンチ広沢





