ゆとりある店内に3000円台からのアイテムが多数
『Slat』は特に、質のいい古着をリーズナブルな価格で販売している店として知られる。古着は海外で買い付けられたものばかりで、店の前に掲げられた星条旗が物語るように、アメカジをメインとした商品がラインアップ。レギュラー古着とされる1980年代以降のスウェットやシャツ、チノパンなどが、3000円台から揃っている。
『Slat本店』はアイテム数が多いにもかかわらず、ラック間などに余裕があり、清潔感も相まって幅広い年代が入りやすく、古着を選びやすい印象だ。
マネージャーの板倉亮太(いたくらりょうた)さんも「男性が7割ほどですが、ビンテージ好きの大人から高校生、家族連れまで幅広いです。女性向けサイズも多く、カレッジプリントのスウェットやTシャツは特に人気です」と話す。
「これから古着を着てみたい人には、ネルシャツがおすすめです。モノトーンのチェックもいいですが、オレンジ系やブルーなどの色物もかなり人気です。パーカーの上に重ね着などアレンジも効きます」とおすすめしてくれた。
ディテールに時代があらわれるお宝級ビンテージアイテムも
入り口正面奥や、レジカウンターの後ろには、目利きが光るビンテージアイテムが並ぶ。その中でも板倉さんが「つい数日前に入荷したばかりのイチオシです」と見せてくれたのは、「Schott(ショット)」というブランドの、1960〜70年代に作られた革のジャケットだ。「Schott」は1920年代に世界で初めてジップ開閉のライダースジャケットを作ったことや、映画界やロック界のスターが愛用したことなどでも知られる。
「エポーレット(肩の装飾的なストラップ)の部分に星がつく、ワンスターというモデルです。時代ごとにタグが違うものですが、これは珍しいタグです。ベルトのバックルが八角になっている点も、1960年代のディテールデザインなんです」と板倉さん。歴史あるブランドの、一時期だけ製造していたデザインなど、さりげない希少性の証がビンテージ好きの心をとらえる。
2025年は『Slat』にとって20周年で、それを記念して本店で行っているのが、オーナーが10年にわたって集めていたデッドストックの放出だ。デッドストックとは、倉庫などで長く眠っていた未使用品のこと。
バンダナのコレクションもかなりあり、その中でも、「1930年代以前のバンダナです」と見せてくれたものは、100年近く前のものだけあって、2万7280円という値段がついていた。ターキーレッドと呼ばれる人気の色合いに近く、布の両端にセルビッチ(耳)がある両耳仕立てなところも希少だ。
ちょっとした会話をきっかけに知る古着の楽しみ
デッドストックのパンツを見ながら、「シルエットはもちろん、タグやジッパー、フックからも年代がわかったりするんですよ」とビンテージアイテムの注目ポイントについて話してくれる板倉さん。古着の知識に触れると、ファッションの歴史にも興味が湧いてくる。
板倉さん自身もかつては『Slat』に買い物をしに通っていた。大学卒業後は、イタリア高級ブランドのブティックで働いていたが、今は上司となったスタッフさんの接客が好きで『Slat』へ。「ビンテージが目当ての大人の方には、高級ブランド時代の接客スタイルで対応し、高校生や大学生には、お店に来ることを楽しんでもらうのも僕の接客スタイルです」と、幅広い人に、古着やビンテージアイテムの魅力を伝えている。
板倉さんが取材時に来ていたジャケットは、大学時代に食費を節約して買った「H BAR C(エイチバーシー)」というブランドが1960年代に出したボレロジャケット。「ジョニー・デップが好きなんですけど、彼もボレロジャケットを愛用しているんですよ」と当日のスタイリングにもこだわりがあらわれていた。
『Slat本店』に足を踏み入れると手軽な値段のアイテムをきっかけにファッションの楽しさと、貴重なビンテージアイテムが持つ歴史にも触れられる。憧れのスターが着ていた、お宝アイテムにも巡り合えるかも。
取材・文・撮影=野崎さおり





