第1問

ヒント

写真左の坂は文京区と豊島区の区境。

正解は……富士見坂・日無坂(豊島区高田1丁目・文京区目白台1丁目)

いきなり大物(?)のお出まし! 『散歩の達人』や『さんたつ』でも幾度となく登場している、坂としてもY字路としても有名な場所。映画やドラマのロケ地になることも多く、月刊誌『東京人』の2025年1月号「東京Y字路散歩」や書籍『Y字路はなぜ生まれるのか?』(重永 瞬 著/晶文社)で表紙を飾っていたのもここだ。行ったことはないけれどこの景色は知ってます!という方も少なくないはず。

目白台から南に向かって下る道で、写真右が富士見坂、左が日無坂。どちらもとんでもない傾斜ということもあって、坂下の景色がきれいに見える。日無坂のほうは文京区と豊島区の区境で、階段というのもいとをかし。富士見坂の先には新宿の高層ビル群が見える位置関係というのが見事だ。出題写真では「東急歌舞伎町タワー」がうっすら写っていて、夏に撮影したため霞んでいるが、空気が澄んでいる季節ならよりはっきり見えるはずだ。 Y字路の景色は「同じ方向を見ているのに分岐の左右で違う世界につながっていく」という感覚を味わえるのが一番の醍醐味だが、まさにそれを堪能できる場所といってもいいかもしれない。

付近は、同じように南に向かって下る急坂多し。こちらは鬼子母神坂近くののぞき坂。
付近は、同じように南に向かって下る急坂多し。こちらは鬼子母神坂近くののぞき坂。
赤丸部分が撮影地点(国土地理院地図を加工)。
赤丸部分が撮影地点(国土地理院地図を加工)。

第2問

ヒント

写真右の道は、もともと川だったところ。

正解は……代々木公園アートスタジオ前(渋谷区富ケ谷1丁目)

代々木公園駅のすぐ北、三角の敷地に立つ「代々木公園アートスタジオ」のウォールアートが華やかで、1問目ほどではないにしろ、やはりY字路として取り上げられがちな場所だ。

ヒントはなんといってもこのウォールアートで、これを知らなければ答えにたどり着くのはなかなか難しかったかもしれない。写真を眺めて気づきがあるとすれば、写真右の道にある車止めやマンホールの存在。「もしかしてここ、暗渠じゃね?」と思ったらビンゴ!

写真右の道はかつて河骨川(こうほねがわ)が流れていたところ。暗渠化されたことでY字路になったというわけだ。河骨川は現在の初台駅付近の水源から、代々木公園の西端に沿うように流れ、この地点の少し南で宇田川に合流していた。童謡「春の小川」のモデルになった川としても知られている。

引いて見るとこんな感じ。
引いて見るとこんな感じ。
赤丸部分が撮影地点(国土地理院地図を加工)。
赤丸部分が撮影地点(国土地理院地図を加工)。

第3問

まんま地名が見えているところだけボカしています。
まんま地名が見えているところだけボカしています。

ヒント

写真右の道は⚪︎ッ⚪︎ー通り。

正解は……浅草六区(台東区浅草1丁目・2丁目)

浅草1丁目、伝法院通りから浅草六区に踏み入れる地点。左は浅草六区通り、右がホッピー通り。撮影地点は五差路になっている。大きなヒントは六区通りと書かれた灯籠とホッピー通りの軒先のテントで、タイル舗装の道路から察しがついた人もいたかもしれない。また、近辺の三角形の地図模様は見覚えがある人も多いはずだ。

浅草六区のあたりはもともと浅草寺の境内で、火除け地だった場所。明治時代に入って都市公園のひとつに指定され、やがて7つの区画に分けられて、六区には芝居小屋や見世物小屋が移転してきて興行街としてにぎわうようになる。古地図をたどると、この三角地帯は六区が生まれた際に伝法院の南北の道と国際通りの西側にあった道をつなげた結果できたもののようだ。明治23年(1890)には、現在の『ウインズ浅草』のあたりに当時日本一の高さを誇ったタワー・凌雲閣が建ったのだが、それが出題写真でいうと右の通りの奥あたり。この画角なら当時はちょうど見えた位置かもしれない。

赤丸部分が撮影地点(国土地理院地図を加工)。
赤丸部分が撮影地点(国土地理院地図を加工)。

第4問

ヒント

周辺は「さんかく問屋街」という名前がついている。

正解は……東日本橋駅そば(中央区東日本橋2丁目)

地下鉄浅草線の東日本橋駅のそばで、清杉通りから1本東側に入ったところだ。写真右は柳橋通り、左は仲通り。柳橋通りはそのまま写真奥(北東)へ進めば靖国通りと交差した後に神田川を渡る柳橋へ至る。

岩本町~日本橋浜町の一帯は道が直角に交わる街区が多いのだが、そこへ北東から斜めに突き刺すように入ってきて清洲橋通りに合流するのが清杉通り。この清杉通りは、関東大震災の後に復興事業で開通した道。仲通りもそれと並行して走っているので、こういう鋭角の敷地が生まれたというわけ。現在、撮影地の周辺は「さんかく問屋街」と銘打ったまちづくりを進めているようだが、その三角も同様に清杉通りの開通でできあがった形だ。

鋭角の敷地を生かしたビルが正面のしゃれていて絵になる景色だが、場所を特定できる要素は少なく、現地を知る人でなければ難易度が高かったかもしれない。大きなヒントは、写真中央やや右下に掲示されている「やげん堀」の文字。江戸時代にはこのあたりに隅田川からの入堀があり、明治時代に入るまで掘の一部は残っていたようで、その後は1971年まで薬研堀町という町名にもなっていた。

赤丸部分が撮影地点(国土地理院地図を加工)。
赤丸部分が撮影地点(国土地理院地図を加工)。

第5問

ヒント

写真左にはお寺がある。

正解は……円通寺坂(新宿区須賀町2丁目・若葉1丁目)

地下鉄丸ノ内線四谷三丁目駅から徒歩数分、新宿通りから円通寺坂を下った先に現れるのがこのY字路。道路は写真左へとカーブを描いて曲がっていて、その手前から分岐が始まっている。

この場所の特徴はなんといっても高低差。左の道は下っていくのに対し、右の道はじわじわと上っていく。Y字路としては変わり種で、立体感ある景色にはくせになる魅力がある。そして、Y字路に必ず生まれる三角地帯には鋭角すぎて建物がなく、緑が生い茂りポストが立っているというのもまたよきポイント。本稿執筆時点(2025年10月)ではこの郵便ポストがなぜか観光名所としてGoogleマップに登録されていて、その名も「Iconic Red Mail Box」。うん、たしかにアイコニックではある。

出題写真の撮影地点からぐっと下がって、新宿通りから該当場所を望む。
出題写真の撮影地点からぐっと下がって、新宿通りから該当場所を望む。
赤丸部分が撮影地点(国土地理院地図を加工)。
赤丸部分が撮影地点(国土地理院地図を加工)。

ちなみに、撮影地点から円通寺坂(写真左の道)をそのまま下って道なりに進み、東福院坂との交差点を右折すると、須賀神社の階段が見える。アニメ映画『君の名は。』のラストシーンで登場した場所で、このクイズシリーズでも登場した階段だ。未読の方ははぜひ階段編もチャレンジされたし。

凸凹地形で坂だらけの東京の街、もちろん主要な道は車が通れる坂になっているのだが、歩行者しか通れないような細い道には階段も多い。街なかや住宅地にひそむ階段を知り尽くしてこそ、散歩の達人といえるのではなかろうか。今回は、東京23区内の範囲で10カ所の階段をピックアップして出題するクイズ。よく知られた大きな階段から、地元民しか知らなそうな数段のものまでさまざまだ。解答には、住所と最寄駅名を記載している。さて、あなたはいくつわかるだろうか?【ご注意!】各出題画像のすぐ下にヒント、さらにその後矢印の下に解答・解説を記載している。勢い余って答えが見えちゃうことのないよう、ゆっくりとスクロールしながら挑戦されたし。それでは、チャレンジスタート!

第6問

ヒント

写真右の道は桜並木で、さくらまつりの会場になる。

正解は……播磨坂・吹上坂(文京区小石川4・5丁目)

ラストは、広々としたスケール大きめな分岐点。「小石川植物園」のそばの千川通りから、尾根を通る春日通りに向かって上る2つの坂を見上げたところだ。写真右の広い道が播磨坂で、左は吹上坂。

道としての歴史が長いのは吹上坂の方で、このあたりがかつて吹上村と呼ばれていたことが名前の由来とされている。一方の播磨坂は、関東大震災後の区画整理で環状3号線の一部として計画され整備された道路。環状3号線は一部しか開通しなかったのだが、ちょうどこの播磨坂の両端で途切れている。坂の名前は松平播磨守の上屋敷にちなんでつけられたもので、遊歩道が整備された桜並木でもあり、春には「文京さくらまつり」の会場になる。

余談だが、この写真の景色は筆者のお気に入りで、独断と偏見により6問目に入れさせていただいた。坂の間にあるカフェの外観もあいまって、なんだかパリの街角みたい……と思うのは筆者だけかしら。

赤丸部分が撮影地点(国土地理院地図を加工)。
赤丸部分が撮影地点(国土地理院地図を加工)。
illust_2.svg

全6問、これにて終了! おつかれさまでした。

多差路や分岐は、風景としての魅力はもちろんのこと、経緯に注目する楽しさもある。長い歴史を持つ追分なのか、川筋や高低差が関係しているのか、都市計画によって現れたのかを知ることで、その土地の解像度が上がること間違いなし。そして、街の至る所にあって頻繁に遭遇できるというのもうれしい。散歩を楽しむポイントはそこかしこに隠れているのだ。

文・撮影=中村こより

たとえば「原宿」、そう言われて最初に思い浮かべるのは? 竹下通りの人混みや、神宮橋の交差点、表参道のケヤキ並木が浮かんだ人も多いはず。街の名前から連想することは人それぞれだ。でも、最初に思い浮べる風景といえばやはり駅前、駅を出てすぐの街の風景ではなかろうか。つまり、駅前の景色は街の顔。ならば、顔だけを見てどこの駅なのかを当てられるよね? というわけで、腕試しのご提案。その名も「この写真、どこの駅前でしょう?」クイズ!「どこだそりゃ」「降りたことねーよ!」となるとつまらないので、出題するのはすべて東京都にあるJRの駅、なかでも乗降者数ランキングが上位の大きな駅ばかりだ。辺鄙な地域ではないぶん、ロータリーや商業ビルなどぱっと見の雰囲気が似ている駅も多い。とはいえ、必ず各駅の特徴があるから、それを見落とさずに全問正解を目指してくれたまえ。なお、各出題画像のすぐ下にヒント、さらにその後矢印の下に解答・解説を記載している。勢い余って答えが見えちゃうことのないよう、ゆっくりとスクロールしながら挑戦されたし。では、行ってらっしゃい!
東京は“水の都”だった、とはよくいわれる話。埋め立てや暗渠化によってその面影は減ってしまっているものの、水辺ならではの景色はそこかしこにある。そのひとつが「橋」。重要なインフラであることはもちろん、ランドマークでもあり、物語の舞台にもなりうる。そんな「橋から見た景色」の写真が一体どこなのかを当てるクイズでございます。同シリーズの「この写真、どこの駅前でしょう」クイズは、赤点ギリギリ!という挑戦者が多かった模様。今回は駅前に比べて特徴があることに加え、出題範囲は東京23区内のかなりメジャーな場所。難易度は低いが、駅前のように万人が歩く場所ではないという落とし穴もある。「知っているかどうか」ではなく、写り込んでいるすべての要素から考察する過程を楽しむべし。【ご注意!】各出題画像のすぐ下にヒント、さらにその後矢印の下に解答・解説を記載している。勢い余って答えが見えちゃうことのないよう、ゆっくりとスクロールしながら挑戦されたし。では、行ってらっしゃい!
問題。1996年に刊行された雑誌『散歩の達人』の創刊号は、何の特集だったでしょう?正解は「路地裏の誘惑」と「極上お花見散歩術」。はい、話の全貌がわかりましたね。今回のクイズのテーマは路地裏です。もはや説明不要、散歩の醍醐味が詰まった場所。広々とした道やきれいに整備された土地にはない、一歩入り込んだ先にある魅惑の空間。渋くていい店がひしめきあっていたり、曲がりくねった形に複雑な歴史や地理が垣間見えたりする。「路地」「路地裏」の定義は諸説あるが、今回は東京23区内の「表通りではない」「いい感じの道」すべてを出題範囲にさせてもらったため、車も通行する通りや「横丁」と呼ばれる場所も含まれる。散歩の達人を目指す者が最初に履修するであろう(?)テーマとあって難易度は易しめ。ぜひとも全問正解を目指していただきたい。【ご注意!】各出題画像のすぐ下にヒント、さらにその後矢印の下に解答・解説を記載している。勢い余って答えが見えちゃうことのないよう、ゆっくりとスクロールしながら挑戦されたし。では、行ってらっしゃい。
道と道が交わる交差点は、街の重要な顔のひとつ。大きな交差点はその地域の象徴的な場所になることも多く、見知った景色が多いはず。そんな交差点の風景を、あなたは普段どこまできちんと記憶しているか腕試し! 「東京の交差点」クイズです。出題範囲は東京23区(のなかでも都心寄り)、よく知られた道が交わる大きめの交差点ばかりなので、ぜひ全問正解を目指してもらいたい。出題写真の交差点名にはボカしを入れたが道路名は見えるものもあるので、ヒントが足りない場合は拡大してみるのもアリ。また、解答には正式な交差点の名前と交わる道の通称道路名も記載している。街の名前や地名・エリア名だけでなく、「⚪︎⚪︎通りと△△通りの××交差点!」と回答できれば完璧だ。【ご注意!】各出題画像のすぐ下にヒント、さらにその後矢印の下に解答・解説を記載している。勢い余って答えが見えちゃうことのないよう、ゆっくりとスクロールしながら挑戦されたし。いざ、チャレンジ!
鉄道網が張り巡らされた東京の街には、線路を渡すための構造物である鉄道橋があちこちにある。この橋梁に注目して歩いてみると、周辺の地形をひもとく起点になったり、鉄道敷設の歴史が垣間見えたりするのだ。今回は、その鉄道橋がどこにあるものかというクイズ。高架橋や川や谷を越える橋ではなく、道路を渡る架道橋(ガード)に絞ってピックアップした。解答には、エリア名と併せて現地に記載されている橋やガードの名前も記載しているので、「手ぬるいぜ!」という達人にはぜひとも橋の名前までバッチリ当てることを目指してほしい。【ご注意!】各出題画像のすぐ下にヒント、さらにその後矢印の下に解答・解説を記載している。勢い余って答えが見えちゃうことのないよう、ゆっくりとスクロールしながら挑戦されたし。それでは、チャレンジスタート!
海外に比べ日本では設置数が多いといわれている歩道橋。個性あるデザインのものや、複雑な道路や交差点に試行錯誤して設置されたと思しきものなど、注目できるポイントも多い。方々の歩道橋を愛でて歩くマニアもいて、街の構造物のなかでも魅力的なもののひとつだ。こりゃ、クイズにしないわけにはいかない!範囲は東京23区内(のなかでも都心寄り)で、地名などがバッチリ映り込んでいてバレバレな場合はモザイクあり。解答には、歩道橋の名前がある場合はその名前と住所を記載している。また、歩道橋が架かっている道路名が各問題の共通のヒントだ。周囲の景色からも推測できるが、ぜひとも橋そのものの形やデザインで言い当てることを目指してみよう。【ご注意!】各出題画像のすぐ下にヒント、さらにその後矢印の下に解答・解説を記載している。勢い余って答えが見えちゃうことのないよう、ゆっくりとスクロールしながら挑戦されたし。それでは、チャレンジスタート!