第1問

ヒント

赤い電車は、地下鉄丸ノ内線。

正解は……聖橋@神田川(御茶ノ水)

2023年末に新しくなったJR御茶ノ水駅聖橋口を出てすぐ、映画にもよく使われる有名な風景だ。神田川にかかる聖橋から東方面を望むと、オレンジの中央線快速、黄色の中央・総武線各駅停車、そして赤い地下鉄丸ノ内線の3路線が交錯するところが見られる。筆者が撮影に訪れたのは平日の午後だったが、橋の上から川と電車を眺めている人が多く、外国人観光客も嬉々として写真を撮っていた。

なお、神田川のこの部分は、江戸時代に本郷台地をえっせほいせと開削してつくられた人工の河川。すぐ南はぐっと低地になるも関わらず、高台の上を川が流れているという世にも奇妙な風景が見られる場所というわけ。

反対側(西側)は、JR御茶ノ水駅改良工事の足場が広がっている。
反対側(西側)は、JR御茶ノ水駅改良工事の足場が広がっている。

第2問

ヒント

橋には獅子と麒麟がいる。

正解は……日本橋@日本橋川(日本橋)

写真は、橋の中央から西側を見た景色。頭上に首都高が走っていることからかなり場所が絞られたはず。この橋から東海道・甲州街道・奥州街道・日光街道・中山道の五街道が伸びていて、いわば日本のすべての道の起点ともいえる場所だ。

橋梁そのものは江戸時代に架けられて以降何度も消失し架け替えられていて、現在の橋は和漢洋折衷の装飾が美しい石造りの二連アーチ。

日本橋~江戸橋間の日本橋川北岸には、古くから魚河岸(魚市場)があったことでもよく知られている。1923年関東大震災で被災し築地に移転したが、その名残である割烹や寿司屋などの名店も多い。

橋を渡る前の景色。「日本橋」と書かれている高架は日本橋ではなく首都高なのでお間違いなきよう。
橋を渡る前の景色。「日本橋」と書かれている高架は日本橋ではなく首都高なのでお間違いなきよう。

第3問

ヒント

写真中央右寄りに見えているのは、晴海と豊洲をつなぐ豊洲大橋。

正解は……レインボーブリッジ@東京湾(芝浦埠頭・お台場海浜公園)

突然の開放感! ぱっと見ただけで、レインボーブリッジもしくはゲートブリッジに絞り込めるのではなかろうか。地図から想像するよりもずっと陸地が遠くに感じられる。

芝浦とお台場とをつなぐこの橋は二重構造になっていて、上に首都高、下に一般道とゆりかもめが走る。1.7kmほどの遊歩道も整備されていて、歩いて渡ることも可能だ。写真は、南北にある遊歩道の北ルートで渡り、橋の中央あたりから北を見たところ。筆者は何度か歩いて渡ったが、毎回風が強く決まって帽子を吹っ飛ばされそうになる。試してみたい方はご注意を。

芝浦側、遊歩道エントランスのそばから見上げるレインボーブリッジ。
芝浦側、遊歩道エントランスのそばから見上げるレインボーブリッジ。

第4問

ヒント

川の下流は古川と呼ばれる。

正解は……金王橋@渋谷川(渋谷)

渋谷駅の東南側、ちょっとした広場のある金王橋から下流側を見た景色。ビルの合間を縫うように流れる姿と、細い川幅、コンクリート護岸の独特な造りが特徴といえそう。東横線の地下化など、ここ10年ほどで大きく風景が変化したエリアだ。金王橋はそれらの再開発に伴って2018年に架け替えられていて、写真は南側を見たところ。金王橋のひとつ上流側にある稲荷橋が渋谷川の起点で、これより上流は各支流に分かれ、どれも暗渠になっている。渋谷の、“谷底から突然川が現れる街”としての一面がよくわかる景色だ。

橋を下流から見るとこんな感じ。奥に見えるビルが「渋谷スクランブルスクエア」。
橋を下流から見るとこんな感じ。奥に見えるビルが「渋谷スクランブルスクエア」。

第5問

ヒント

両岸の木は桜。

正解は……目黒新橋@目黒川(目黒)

目黒通りが目黒川を渡る橋で、桜を見に目黒川へ向かおうとしてJR目黒駅から向かえば最初に着くであろう地点。写真は南方面(下流側)を望んだもので、ランドマークはなんといっても写真右側にそびえたつお城『目黒エンペラー』。両岸の桜の木も特徴だが、撮影時は開花まで1週間はかかるかといった時期で、まだお花見はできなかった。

ちなみに「新橋」とあらば比較的最近できた橋なのかと思えば全くそんなことはない。江戸時代中期ごろ、行人坂に対して新たに開いた道を新坂、その橋を新橋と名付けたものがそのまま残っているという長い歴史のある名である。

川の脇の遊歩道から橋を見上げるとこんな感じ。
川の脇の遊歩道から橋を見上げるとこんな感じ。

第6問

ヒント

この水面は川ではありません。

正解は……祝田橋@内堀(日比谷・桜田門)

皇居外苑の南、法務省の脇を通る内堀通りが日比谷濠を渡る橋。祝田(いわいだ)というのはこのあたりの旧町名で、橋と交差点の名前として残っている。写真は有楽町方面を望むカットで、中央に「東京會舘」、右に「ミッドタウン日比谷」のビルが見える。この場所自体は知らない人でも、川とはかなり趣の異なる水面や両脇の石垣でこれが濠だとわかれば、だいたいの位置は予想できたのではないだろうか。

写真の通り土橋で、横から見ると石垣が美しい。
写真の通り土橋で、横から見ると石垣が美しい。

第7問

ヒント

あの国民的人気漫画にも登場する橋。

正解は……勝鬨橋@隅田川(勝どき)

隅田川の河口近くにかかり、築地と勝どきをつなぐ橋から北東方面(上流側)を望んでいる写真。奥に月島や佃のタワマンたちが見える。

勝鬨橋は国内最大級の跳開橋として有名で、大型の船が通れるよう中央部分が開く構造になっている。ただ、水運の衰退で開閉の機会は年々減ってゆき、実際に開いたのは1970年が最後だ。「こち亀」こと『こちら葛飾区亀有公園前派出所』にはこの橋を開く回があり、「勝鬨橋を開きたい」と発言するひとの九割は「こち亀」ファン、残り一割が橋梁マニアと思っておけば間違いない。

また、勝鬨橋という名前の由来は橋ができる前にあった「勝鬨の渡し」で、地名の「勝どき」の方が後輩。橋の名前から地名がつくというのも、埋立地ならではの歴史かもしれない。

築地側から橋を望む。塗装工事中で木の板が貼られている。
築地側から橋を望む。塗装工事中で木の板が貼られている。

第8問

ヒント

橋の下には川が流れて……はいない。

正解は……音無橋@石神井川(王子)

木の枝に景色を遮られまくりの写真を見て「なんじゃこりゃ」となった方、申し訳ない。でもこれがリアルなのです。

小平市から練馬や板橋を通って隅田川に注ぐ石神井川は、王子駅付近で音無川と呼ばれているそう。橋の周囲は音無親水公園として整備されていて、その様子が一番の決め手だったはず。写真は、橋から王子駅(北東)方面を望んでいる。この日は水がなかったので、写真を見て「枯れてるじゃないか!」と思うかもしれないが、ここは石神井川の旧流路。実際の石神井川は飛鳥山と王子駅の下を潜ってショートカットしている。

見上げてもやっぱり枝まみれだが、大きな三連のアーチ橋でかっちょいい。
見上げてもやっぱり枝まみれだが、大きな三連のアーチ橋でかっちょいい。

第9問

ヒント

映画『ゴジラ』(1954)で東京湾から上陸したゴジラが最初に壊す橋。

正解は……八ツ山橋@JR東海道線(品川)

東海道とJR東海道線とが交差するために架けられた八ツ山橋。武蔵野台地の東端で、かつては品川の海に突き出す岬が8つあったことが「八ツ山」という地名の由来だ。写真は南方面を望んでいて、奥に小さく見えているのが新八ツ山橋。今回の問題のなかでは唯一水気のない橋で、鉄道に詳しくなければ数ある跨線橋のうちどれなのかを見分けるのが難しかったかもしれない。

跨線橋としては日本最古の歴史を持ち、日本初の鉄道が新橋~横浜間に開業した1872年に架けられた橋だ。たもとには古い親柱も保存されている。

新八ツ山橋の端から八ツ山橋を見る。
新八ツ山橋の端から八ツ山橋を見る。
保存されている古い親柱。
保存されている古い親柱。

第10問

ヒント

橋と同じ名前の停留場がある。

正解は……面影橋@神田川(面影橋)

都電荒川線「面影橋」停留所のすぐそばで、神田川にかかる橋から東方面を望んでいる写真。民話や伝説があれこれ残る場所で、名前の由来も諸説あったり、もとは別の橋のことだったという説もあったりと、イマイチ歴史が判然としない橋でもある。

江戸時代には蛍の名所として親しまれていたそうで、写真には桜の木の枝が大きく写り込んでいるが、花開く季節は最高の景色になる。これといって特徴のない景色ではあるが、なんとなくあのへんの神田川では……とピンと来た人も多いのではなかろうか。

奥に見える緑色の橋が面影橋。
奥に見える緑色の橋が面影橋。
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以上、全10問。おつかれさまでした。

荒川や多摩川の写真が続々出てくると踏んでいた方は残念さん! でも、それぞれに歴史や由来があり、橋自体見惚れるような姿のものも多くて、写真を撮ってまわった筆者はかなり満足できる街歩きになった。

川や運河を渡る橋はもちろんのこと、跨線橋でも陸橋でも、橋を渡るときは足をとめてみることをおすすめしたい。地理への理解が点から線へ、そして面へと広がるおもしろさが詰まっている。

文・撮影=中村こより