ニューヨークの街角を思わせる外観とインテリア
高円寺駅からは徒歩13分ほどの『NOSTALGIA CAFE』は、お店の前を通ると外国のような雰囲気にハッとさせられる。
オーナーの佐々木さんがいちばんにこだわったのは、店舗の外観だ。「開業準備中にニューヨークを訪れたときも、さまざまなお店を巡っては、外観に注目していましたね」と佐々木さん。物件探しでも、まず目に入る店舗の正面が広いことを欠かせない要素に挙げた。
こだわりの外観は、ガラス窓や上部にサインペイントと呼ばれる手書きの文字で店名やメニューを書き入れた。店内のテーブルやカウンターは余裕のある配置。アメリカでかつて使われていたのと同じデザインの家具を集めたり、ニューヨークで購入したポスターを2点だけ飾ったりと、すっきりと余裕を持たせた状態を保っている。
看板メニューは食感にこだわったニューヨークミートボール
お店は、佐々木さんは経営面とフードの調理担当、パートナーでカフェなどで製菓の経験があるあずささんがスイーツとホール担当と、役割分担して運営している。
佐々木さんが担当するフードは、サンドイッチとミートボールがメイン。ミートボールの提供方法は、ニューヨークにあるミートボール専門店を参考にした。ソースは、クラシックトマト、オニオンクリーム、ブラックビーンズチリの3種類から好みのものを選び、パンかショートパスタ、またはライスがつけられる。オニオンクリームはソースが白いと聞いて俄然興味が湧き、ショートパスタを選んで注文した。
業務での調理経験がなかった佐々木さんは、何度も自宅で試作を繰り返した。目指したのは、ハンバーグとは違う食感だ。やがて、挽き肉が詰まった食べ応えのあるニューヨークミートボールが完成した。ゴルフボールほどの大きさで、挽き肉が密度のある食感に仕上がっているので、フォークとナイフで食べたくなる。
生クリームを使ったソースは、オニオンの旨味にオレガノやバジルの香りがアクセントになっている。アルデンテにゆでたペンネとソースの相性もいいが、パンを選んでお皿に残ったソースを余すことなく食べるのもよさそうだ。佐々木さんによれば、ライスを選ぶ人も増えているという。
落ち着きのあるアメリカンな空間を味わってほしい
ミートボールが入っているお皿もぽってりしていてアメリカンな印象。コーヒーをいれるマグカップも、ずっしりとした印象のダイナーマグと呼ばれるものを採用。このダイナーマグは、もう生産されていない貴重なものだ。
コーヒー豆は、沼袋に2025年6月にオープンした『AMBER & JADE ROASTERS(アンバーアンドジェイドロースターズ)』から仕入れる中煎り。すっきりしていて飲み疲れしない味わいは、大ぶりのダイナーマグで提供するスタイルに合っている。
佐々木さんにとってカフェ経営はそれまで携わっていた映画館の仕事から離れて、まったく新しいことにチャレンジしたいと始めたことだ。オープンから間もない頃は「いきなりお客さんがたくさん来ても、うまく対応できないだろう」と広報活動などは控えめだったそう。
徐々に運営が軌道にのるようになった頃にコロナ禍に突入。「世の中がたいへんな中で来店された方には、特に気分よくお店の雰囲気を体験してもらおうと考えていました」と佐々木さん。
スペースに余裕があり、街中から離れた場所にある『NOSTALGIA CAFE』には、緊急事態宣言のさなかも訪れる人は絶えなかった。旅はおろか、思うように外出さえできなかったあのころ、外国の街角を思わせる『NOSTALGIA CAFE』は、訪れるだけで癒やされる空間だったのだろう。
非日常感のある外観と、シンプルで居心地のいい店内に、特徴あるスイーツやフードにこだわりのコーヒー。最近は人気のカフェとして知られるようになり、週末は行列になることも多い。
お店には佐々木さんが元映画関係者だと知って、映画好きや映画関係者もよく訪れている。「店名はソ連出身のタルコフスキー監督作品『ノスタルジア』からとったのか」とか、「ミートボールは『ゴッドファーザー』からですか?」と聞かれることもあるが、実は「まったく関係ない」そうだ。
取材・撮影・文=野崎さおり





