「世界に広げていく起点にしたい」
「過去に手掛けた銭湯ではサウナを増設してうまく行っている例もありますが、『曙湯』ならそれ以上の形を目指せると感じました」と話すのは、yueの創業者の一人・三浦燿(よう)さん。「時間をかけて考えて、いつかリノベーションする際には、銭湯をアップデートしたような形にしたいと思っています」。
内装などは15年ほど前に一度改修されていて、その際にバリアフリーの入り口やフロント形式の受付になっている。一方で、美しい格天井や下駄箱など長年おなじみの姿も健在。なにより堂々とした壮麗な宮作りのたたずまいには、半世紀以上人々の疲れを癒やしてきた矜持を感じられる。「数々の銭湯を見てきましたが、ここまで立派な宮造りはなかなかない」と三浦さんもうなずく。
また、朝風呂から終電後までカバーできるよう営業時間を拡大するなど、個人で営業していた時代には成し得なかった形態にもチャレンジ。鏡広告を復活させたり、休憩スペースや脱衣所を若いアーティストのギャラリーとしても活用できる仕組みにしたりと、構想はまだまだ膨らむ。
「お風呂は日本が誇る文化だし、浅草は日本の文化の発信地。地域を巻き込みながら銭湯文化を残して、世界に広げていく起点にしたいです」
取材・文・撮影=中村こより
『散歩の達人』2025年10月号より





