一人前ずつ、こだわりの炊きたてごはん
ほんのりピンク色の土壁に力強い店名が映える堂々とした店構え。入り口横に「こだわり」と書かれた紫色の垂れ幕には、「いつも、いつでも炊たて」「こだわりのお米」の文字が見える。
『釜元はん米衛』は、定食スタイルで食事を提供。店に入ると、入り口から近い場所に、小さなコンロが10個ずつ並んだガス台が2つ置かれている。ここでごはんが1人分、0.7合ずつ炊かれ、炊きてが提供される。
お米は、京都の老舗米穀店『京都八代目儀兵衛(きょうとはちだいめぎへい)』から仕入れている。特定のブランド米100%ということはなく、その時季にいちばん『釜元はん米衛 中目黒店』の味にあったブレンドの米が届けられている。
「社員は京都でお米の研ぎ方などを学ぶ研修に行っています」と、店長で、ごはんソムリエなる資格を取得した川名隆博(かわなたかひろ)さん。ブレンドが変わると水加減も調整するというこだわりぶり。
小さなお釜の上には重みのある蓋が載せられ、沸騰すると突起部分がコマのようにクルクルと軽快な音をたてながら回る。
焼き加減はお好みで! 自分で仕上げる黒毛和牛熟成肉のハンバーグ
ごはんが炊き上げられている間に、ハンバーグの調理も進む。備長炭が赤く燃える炉の上に、形を整えたハンバーグが置かれて、しばらくしたのちひっくり返される。網目模様が付き、中は赤いまま。これがレアハンバーグと謳う理由だ。
両面に焼き目がついたら、カウンター上のコンロに移される。このあと、それぞれが自分好みに焼いて食べるのが『釜元はん米衛 中目黒店』のスタイルだ。
初めての人には焼き方や道具の使い方をスタッフが案内してくれる。『釜元はん米衛 中目黒店』のハンバーグは黒毛和牛を30日程度寝かせた熟成肉を使用。熟成香と呼ばれる、ナッツのようなコクのある香りが漂う。
ハンバーグは鉄板の上で縦横8分の1、厚みにして1cm程度に割った状態で、両面に焼き色が付いたころから食べられる。口に入れると舌触りから粗挽き肉であるとよくわかり、肉らしい味わいが広がる。ハンバーグの肉は強めに塩胡椒されているのでそのままでも十分にごはんと合う。
ひとり分ずつ粗くおろした大根入りの鬼おろしポン酢、ステーキソースも用意されているし、カウンター上に用意されたネギやニラが入った食べる醤油、牛タンのミンチが入った食べるラー油の卓上調味料と合わせてもおいしい。卓上調味料は2つともごはんにも合う。
コンセプトは「定食以上、割烹未満」。きれいな小皿でも贅沢気分を演出
お釜の上にのった木の蓋を上げるとき、中からあふれるような湯気も気分を高めてくれる。ツヤツヤのごはんも、口の中で粒感が立っていて味わいはさっぱりとした甘み。
お店が掲げるのは「定食以上、割烹未満」というコンセプト。定食の味噌汁は昆布と鰹で出汁をとり、ハンバーグとごはんの味わいにそっと寄り添うような会津の白味噌を選んで使っている。添えられた2つの小鉢の1つは明太子、もう1つはスモークサーモンとポテトサラダで、色合いも華やかだ。
ハンバーグが目の前にあるコンロに置かれたとき、「全部一気に焼くと忙しいので、半分はお皿の上に避けておいてください」と川名さんが教えてくれた。まずはごはんをそのまま食べ、ごはんのお供を試し、ハンバーグを焼いて、各ソースを組み合わせ、としていると、確かに忙しい。しかも炊きたてのお米がおいしいことから、ついついごはんが進んだ。気がついたときには、ごはんはあとひとくちしか残っていないという状況に。
すると「ごはんは、もう一回炊きたてをお出しできますよ」と川名さん。おかわりして合計1.4合を食べ切る女性も決して珍しくないと教えてくれた。
有料で生卵をつけることもできるので、組み合わせはいろいろ。次に訪れるときは、ハンバーグとおいしいごはんをどんな風に楽しもうか、楽しみになってしまうのだ。
取材・文・撮影=野崎さおり





