「今も手探り状態だし、なりゆきまかせ」
遡ること5年ほど前(2020年頃)。オーナーの森田圭介さんは会社員で、店主の美樹さんは主婦だった。「2人の“好き”が詰まったお店でも開きたいね」。そんなつもりは、まったくと言っていいほどなかった。
この建物は、元々各階3LDKの2世帯住宅。2人で住むには広すぎるからと売却査定をした結果「思った以上に破格で」と、笑う。賃貸併用住宅にリノベーションするなど代案はいくつか上がったものの「何をするにも手を入れないといけないのであれば……」と、消去法で開業を決意する。
「自分たちができること、ずっと続けられるものを考えていたときに新聞記事でシェア型本屋の存在を知って、これなら!と」
読書家だった美樹さんは、料理やお菓子作りも得意で、奇しくも近所には喫茶店などのお茶ができる店もなかった。「それなら飲食もできるようにしよう」とカフェの併設もなりゆきで決まる。
現在、定期的に開催されているイベントや音楽ライブは、常連さんの「やってほしい」「これだけのスペースがあればできるよ」の声で始まったという。
「ノウハウがないので、今も手探り状態だし、なりゆきまかせ」と言いつつも、夫婦二人三脚で紆余(うよ)曲折しながら歩み始めたセカンドライフは、なんだかんだでとても楽しそうだ。
取材・文=新居鮎美 撮影=丸毛 透
『散歩の達人』2025年7月号より