お話を伺ったのは……
ten. / YMP 代表 丸山佑樹さん
群馬県太田市出身。起業家として活動する中で、ローカリズムに着目。2017 年より、川崎を拠点にまちづくりを生業とする。
溝の口で研究する豊かな暮らし『ノクチラボ』
施設名は「溝の口」と研究の「ラボ」を掛け合わせた造語から。飲食、物販、教室など、小商いを考えている人たちの暮らしを豊かにするサービスと設備が整っているほか、溝の口の人気カフェ「TETO-TEO」の支店も併設されている。

市民ファーストのコミュニティー『WORLD CAFÉ』
「企業とビジネス」「趣味とイベント」「学びと教育」の3つを軸に市民が気軽に集まったり、つながったり、意見を交換したりできる。共通の関心や趣味を持った人に出会えるほか、学生も子供連れでも参加できるのがいい。
まちを盛り上げるプロジェクト「まちの企画室」
2022年に発足した、行政と市民が一緒になってまちを盛り上げるプロジェクト。一般公募で集まった、地域の活性化につながる企画を元に、毎年2~3イベントを実施。2025年3月までにジャンルの異なる10のイベントが開催された。
溝の口はポテンシャルを秘めた街
溝の口界隈で見つけた、いい雰囲気のお店や興味深いイベントの数々。あったらいいなを作ったり、人と人をつないだり、シン・溝の口へと牽引するのはまちづくりをライフワークとしている「ten. / YMP」代表の丸山佑樹さん。
「点が線となり、“街”を成す」というビジョンの下、カフェ『TETO-TEO』やベーカリーとパティスリーのお店『Len』、カフェ、シェアキッチン&スペース、菓子工房が一体となった「ノクチラボ」、同じ興味を持つ人たちに出会い集えるコミュニティー「WORLD CAFE」、市民が企画したイベントを行政と共に実現する「まちの企画室」など、経営者として、そして地域プロデューサーとしてあらゆるモノ・コトを企画し実践している。そのすべての取り組みにおいてブレることなく共通しているのが、溝の口が持つ個性と価値を見出し高めていくことだ。
丸山さんのこれまでの実績はもちろん、取材中の会話からもとてつもない溝の口愛があふれているので「地元ですか?」と問うと出身は群馬県。大学進学を機に上京した先も溝の口ではなく横浜だという。その後に立ち上げたスタートアップ企業の拠点、生活圏内も都内で、縁もゆかりもない溝の口を「盛り上げたい」とまちづくりをスタートさせたのは8年前のこと。
「イベントの企画や運営など、DJだった学生時代の活動を仕事にするために仲間と起業したんです。のちに会社が株式上場し、はっと気づいたことがあって。自分が本当にやりたいことは、会社を大きくすることではなく“地域活性化”だと。いちから一人で始める場所を探しているとき、ほぼ初めてきた溝の口に『このまちなら!』と感じたんです」
「住みやすい」から「住みたい」へ
都会すぎず田舎すぎず、交通のアクセスがよくて買い物するにも便利、畑や自然が程よくあって、家賃相場は都心より低い。「日常に不便は感じないものの、もっと何かあればと市民はフラストレーションを持っていそう」と興味をかき立てられた丸山さんは、溝の口の魅力を可視化してきた。
地元の食材で作るおいしいものを食べたり、買えたりするお店、老若男女が楽しめるイベント、個人経営者や生産者、クリエイターなど、新たな一歩を踏み出したい人を後押しするコミュニティーなど「住みたい、住み続けたい」と思える理想のまちづくりは今も真っ只中だ。
取材・文=新居鮎美 撮影=加藤熊三